ドレスコーズ「1」特集 志磨遼平×尾崎世界観(クリープハイプ)対談 - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)

ドレスコーズのアルバム「1」の発売を記念した本特集では、志磨遼平とクリープハイプのフロントマン・尾崎世界観との対談をお届けする。バンドから自分以外のメンバー全員が脱退するという特殊な経験を持つ志磨と尾崎。ほぼ初対面に近かった両者は、言葉を交わすうちに互いにシンパシーを感じたようだ。

取材・文 / 伊藤実菜子 撮影 / 佐藤類
ヘアメイク(尾崎世界観) / 杉本和弘(maroonbrand)

元恋人から教えてもらった

──お2人がきちんと話すのはこれが初めてとのことですが、相手のことをちゃんと認識したのはいつ頃ですか?

左から志磨遼平、尾崎世界観。

尾崎 だいぶ前ですね。(毛皮の)マリーズのときから知ってます。あの「戦争」のやつ(2006年9月発売の「戦争をしよう」)。

志磨 えっ、ウソー! じゃあ、いっちばん最初から知ってくれてたのか! 僕はね、たぶんクリープハイプの自主制作のCDを聴いてるんですよ。

尾崎 へえー。なんでそのCDを聴いてたんですか?

志磨 そのとき付き合ってた人が持ってて、「すごくいいんだ」って聴かせてくれて。1曲目がちょっと静かでゆったりした……たんたん、たらら、たったたったたったたった、みたいなリズムで始まるCDってないですか? すっごいその曲が好きで。

尾崎 あ、アコギとか入ってる曲ですかね? バラード? 長かったですか?

志磨 バラードっぽい。でもそんな長!ってほどじゃないから、たぶん4、5分くらい。その曲が今また聴きたいんだけど、探しても見つからないの。

尾崎 それ気になるな。「ねがいり」って曲かな? それは初めて流通したんですけど、1週間で60枚くらいしか売れなかったCDに入ってて。(「ねがいり」を流す)懐かしいな、これ10年前だ。声が全然違う。

志磨 あれ、違うかな……? もうちょっとマイナー調だったかな……。やっぱりわからない。

尾崎 ははは(笑)。僕も昔付き合ってた恋人が、マリーズの自主制作のCD-Rを持ってて。

志磨 え! 一緒じゃん!(笑)

尾崎 3曲くらい入ってたやつで。そのときのマリーズよりもすごい歌モノっぽくて、RC(サクセション)みたいだなと思ったんですよね。それをよく聴いてましたね。

志磨 ええー! すごい! 100枚も刷ってないヤツだ!

尾崎 そのあとに出た「ビューティフル」はそのときに聴いた曲のような感じだなと思ってました。

志磨 おお、鋭い。まさしく、です。

いい曲を書くとナメられる

志磨 インディーズのときって、歌モノっぽいのをやっててもお客さん増えないなって思いませんでした?

尾崎 や、もう何をやっても増えなくて。どうしようもなかったですね、当時は。暗黒時代でした。

志磨 とりあえず目立つことをしないとって思ってたし、なまじっかいい曲を書くとライブハウスでナメられるし。

尾崎 ああー(笑)。なるほど。

志磨遼平

志磨 クアトロぐらいのキャパから逆転現象が起こるんですけど、クアトロ以下のキャパでやってるときは、いい曲を書いてはいけないっていう空気があって。歌モノっぽいのはアルバムに入れても1曲か2曲くらいにして、あとはとりあえずうるさいのを入れてた。「ビューティフル」はその逆転したあとに出したんですよ。

尾崎 その気持ちはわかります。僕もライブハウスっていう小さいところにすごく縛られていて、それがすべてでしかなかったから。今考えたらものすごい情けないというか(笑)、そんなところにいたんだなって思うんですけど。なんか、ライブハウスの中にこう……あるじゃないですか。

志磨 ね。ヒエラルキーっていうか、スクールカーストみたいな。

尾崎 うんうん。そういうのにずっと押し込められて活動してきたから。

志磨 ライブ中に一番高いところから飛び降りた奴がその日のヒーローで、アンプの上から誰かが飛んだら次は天井にぶら下がったり、「じゃあ俺は!」とか言ってライブハウスの外に走って出ていくヤツとかがいたり(笑)。19、20歳くらいのときは単純にそういうバンドに憧れて、そういうシーンに入りたかったから、同じようなことをしてた。だからそういう世界で「……次はゆったりした曲を聴いてください」とかなんとか言うと、もうブーイング。「たるいぞ!」って(笑)。

尾崎 うんうん(笑)。そのときに、「でも俺本当はいい曲作れるんだけどな」っていう気持ちはありました?

志磨 ありましたありました。まあ今振り返ると、そんないい曲でもないけど。そのときには自信があった。

ドレスコーズ

ドレスコーズ2012年1月1日に志磨遼平(Vo)、丸山康太(G)、菅大智(Dr)の3名で初ライブを実施し、同年2月に山中治雄(B)が加入する。6月には大阪、名古屋、横須賀で「Before The Beginning」と題したツアーを突如開催。7月に1stシングル「Trash」をリリースし、タイトル曲は映画「苦役列車」主題歌に採用され話題を集めた。12月に1stフルアルバム「the dresscodes」、2013年11月にフジテレビ系アニメ「トリコ」のエンディングテーマ「トートロジー」を含む2ndフルアルバム「バンド・デシネ」を発売。2014年9月にキングレコード内レーベル・EVIL LINE RECORDSへの移籍第1弾作品として5曲入りCD「Hippies E.P.」をリリースし、同時に丸山、菅、山中の脱退を発表した。ドレスコーズは志磨の単独体制となり、同年12月にフルアルバム「1」をリリースする。

クリープハイプ

クリープハイプ尾崎世界観(Vo, G)、長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)からなる4人組バンド。2001年に結成し、2009年に現メンバーで活動を開始する。2012年4月にアルバム「死ぬまで一生愛されてると思ってたよ」をメジャーレーベルからリリースし、同年10月に発表した1stシングル「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」がオリコンCDシングル週間ランキングで初週7位にランクイン。2013年5月の3rdシングル「憂、燦々(ゆう、さんさん)」は資生堂「アネッサ」のCMソングに採用された。2014年12月に3rdアルバム「一つになれないなら、せめて二つだけでいよう」をリリースした。