necojazz’s diary (original) (raw)
2024.11.16 中日ホール
浅井健一 OVER HEAD POP TOUR
浅井健一 (vo,gt) 宇野剛史 (ba) 小林瞳 (dr)
高校1年生の春、まだベンジーと呼ばれる前の浅井健一君と中日ビルで待ち合わせをして、広小路通りを西へ歩き、名曲堂で私のベースを購入した。
「絶対にプロになる」という確固たる信念と、「小学生かよ」と裏手でツッコミを入れたくなる無邪気さを併せ持ったファンタジーな少年だった。
古くなり建て替えられた中日ビルは今年の4月に全面リニューアル開業し、15歳の時は60歳は爺さんだと思っていたが、59歳になった12月生まれの山羊座はステージに立ち「俺たちは古くないし、まだまだ全然イケるぜ」と言っているようなステージで、勇気をくれた。
『OVER HEAD POP』というタイトル通り、ゴリゴリではなくポップ寄りなアルバムだったので、ライブもそうかな?と思っていたら、のっけから爆音。
だよね。
「この曲やるから」ともらったカセットテープを自宅に持ち帰ってステレオのデッキに入れて再生ボダンを押すと、ステレオが爆発した。
そう思えるほどの爆音だった。
ニューアルバムも最高にイカしてて、60歳手前でも、精力的で、発想力豊かで、カッコ良さを持続しているのは自分のモチベーションに繋がっている。
今が全盛期だと思えるほど、キッレキレの演奏に高音域もどえらい出てて、最新のホールだけに音響も素晴らしかった。
翌朝、毎週拝聴ているTBSラジオ本仮屋ユイカさんの『ONE-J』で、ゲストの武田真治さんが紹介された郷ひろみさんの名言。
周囲からは「変わらない」と言われることもあるのですが、実は「変わり続けている」からこそ、そう感じていただいているのだと思う。
変わらないと思われている人こそ進化し続けている。
まったくその通りである。
オートバイのドロップハンドルって、初めて見たわ。
私の少し後ろの席からお父さんと来ている小学生くらいの男の子の声がして、初めての『ROCK SHOW』をワクワクしながら待っている様子が伝わってくる。
今年サブスクが解禁されて、それまでブランキーを聴いたことのなかった人達も会場にいるのだろうな。
早々に SOLD OUT になった客席に向かって「ただいま」とベンジー。
ニューアルバムはもちろん、ブランキーやユダの曲なども多く披露し、ちょっと意外な選曲もあったりして、これまでに生み出してきた1曲1曲をすべて大切にしているのが伺えた。
その中でも個人的に一番盛り上がったのは『危険すぎる』。
翌日、渋谷 GUILTY へ、林檎さん大好きの愛知県瀬戸市出身の加藤伎乃さんのワンマンライブへ行くので。
ドラムは林檎さんとの共演もあるみどりんだし。
ベンジー、伎乃さんめちゃんこカッコイイので、応援したって。
「今日何曜日?」のやり取りからはじまった『SATURDAY NIGHT』。
「身体中で感じてみたい どれくらい凄いか知りたいんだ 生きてるってことを」
生きている意味なんて考えるだけ野暮だし、語順も神。
渋谷公園通りクラシックス前、Grandma's GEORGES にて。
欲を言えば『Purple Jelly』も聴きたかった。
年齢を重ねて、振り返る後ろがあるからこそ歌える『けっして』。
若造が歌っても薄っぺらになるだけ。
ベンジーのおかげで人性が豊になった。
感謝しかない。
渋谷 GUILTY 前、TULLY'S COFFEE にて。
『PUDDING』もでら聴きたかった。
つい最近始めたパトリシア号でのヒルクライムはこれからの季節はこれを着て走り、生きている凄さを身体中で感じたい。
バイクではなく折りたたみ自転車だけど。
橋本一子&西山瞳 2台DUO ピアノコンサート 『Intouchables』
会場 カワイ名古屋2F コンサートサロン『ブーレ』
日時 2025年1月25日 (土)
開場 16:30 開演 17:00
料金 予約 4000円 当日 4500円
学生1000円 (予約・当日共)
申し込み TEL:052-962-3939 (カワイ名古屋)
申し込み・問い合わせ MAIL:necojazz719@gmail.com
(メールの場合は人数・ご連絡先をお願いいたします)
昨年の『Dot』に今年の『Echo』と、続けてリリースした新たなトリオでのアルバムがアーティスト界隈からも絶賛の声が聞かれ、芸術性の高みはまた新たなステージに到達された感がある西山瞳さん。
その西山さんがデビュー前の学生時代から憧れの存在だった橋本一子さん。
購入できるCDは全部揃えられていて、ライブも2005年に大阪から高速バスでの日帰りピットイン以来、足しげく通われている。
現在もリスペクトをされているのは、誰しもが認めるレジェンドでありながらも自身を中堅だと言い、第一線で走り続けられているから。
今年の3月23日 Our Delight での演奏から、西山さんのオリジナル『Dot』。
このふたりの2台ピアノは関東以外の地域では初めてとなり、おふたりの出身地である関西方面はもちろん、遠方からもぜひ足をお運びいただけましたらと思います。
西山さんは2019年に小田朋美さんとの2台ピアノをお願いしていて、心底から陶酔した濃密なひとときでした。
その小田さんと一子さんとは様々な共通点があり、YMOとDC/PRGというその時代の最先端のグループでのご活躍に、数々の名だたるアーティストとの共演やCMに映画音楽も手掛けられ、素晴らしいボーカリストでもあります。
前回と同様に期待しかありません。
そして、コンサートを支える2台のピアノは、河合楽器のプレステージモデルのグランドピアノシリーズ『Shigeru Kawai』の中で、シリーズ最高峰のSK-7とコンクールやコンサート専用のフルコンサートモデルSK-EX。
この2台をサロンで聴けるという贅沢な空間において、豊潤な響きを全身で味わってください。
最強のふたりと最高の2台だから『Intouchables』としました。
2024.11.6『パンの店 カッタン』『雨沢峠』
月に一度の体組成計測定。
ジム通い開始から16ヵ月目。
初日から体重-1.0kg、筋肉量+2.8kg、体脂肪率-5.6%。
59歳になる1ヵ月前に受けた定期健康診断の問診で「スポーツ心臓だけど何か運動やってる?」と聞かれた。
心拍数が47回/分ということだった。
40代にメタボ対策として始めた自転車だが、行く先々でスイーツや旨いものを食べてしまい、摂取カロリーが消費カロリーを上回るという逆効果でまったくメタボ対策にはならなかったが、心肺機能の向上は感じていて、医師の言葉に以前から挑戦しようと思っていたヒルクライムも行けるんじゃない?と思ったが、ヒルクライムは軽さが正義。
心肺機能は向上してもおっさんの貧脚ではもう少し体重を落とさないときついかなと思い、体重が5kg 落ちたら挑戦しようと、その日の帰り道にジムの申し込みをして通い始めた。
5kg なら1年もあれば十分だろうと思ったが、筋トレ1時間、有酸素運動 30 分、往復の移動時間や着替えの時間などを含めると2時間半、週3回のペースで通い続け、食事にも気をつかったが、なかなか思うような数値にならない。
60 歳になると脂肪を落とすのも筋肉を付けるのも大変だとは承知していが、ここまでとは、、、と嘆いてしても仕方ないし、脂肪は3.8kg落ちている計算だし、うだうだしているうちにあっという間に70歳になってしまうので、60歳にして初ヒルクライムに挑戦すべく雨沢峠へ向かった。
「西の二ノ瀬」「東の雨沢」と言われる愛知県ではメジャーなヒルクライムコースで、6kmという短めの距離は初ヒルクライムにはちょうど良い。
結果は、走行距離 5.8km、平均勾配 5.0%、獲得標高 310m、所要時間38分56秒。
ロードバイク乗りにとってはタイムトライアルコースで、20分を切ればそこそこの健脚になるらしいが、初心者マークでかつオーバー60としてはそれに惑わされずマイペースでコースを楽しむのが肝要である。
それに過度の運動による活性酸素は老化を促進してしまうので。
上品野口のバス停からスタート。
1年前にロードバイクで大コケをして、オリンピック選手もやったことのない超難度の大技ウルトラG、顔面からの着地を見事に決めた際に首を痛め、それ以来ロードの前傾姿勢が厳しくなったので折りたたみ自転車のDAHONで行きやす。
最初は緩やかな勾配だが無理せず急がず全身に酸素を行き渡らせるイメージをして深い呼吸を心掛ける。
少しずつ勾配が上がり途中9%の看板があったので、最大勾配は10%ちょっとくらいか。
これまで香嵐渓などアップダウンのあるコースは走っているが、愛知から岐阜に入ったところで100mほど軽い下りがあるだけで、あとはずっとひたすら登り続けるのみ。
漕ぎはじめは6kmも登り続けられるのか?と思ったが、一番軽いギアを残して呼吸もほとんど乱れることなくゴール。
心地良い疲れと達成感に浸った。
登りきったあとはご褒美タイム。
雨沢峠の頂から先は視界が広がり景色も楽しみながらのファンライド。
10km漕いで行きたかった『パンの店 カッタン』に到着。
近所の方や自転車乗りにバイカーはもちろん、休日には遠方からも多くの人が訪れる人気店である。
店内のイートインスペースの他にバルコニー席もあってグッドなロケーション。
ハード系、ソフト系、惣菜系、どれも品揃えは充実していて、その中から、いちじくフロマージュ、しらすとねぎのタルティーヌ、和み (ほうじ茶とあんバター)とホットコーヒー牛乳 (5:5) をいただいた。
我ながら良いチョイスだと思ったが、どれを選んだとしてもそう思えただろう。
3つとも美味しかったが、中でも和みは甘いだけでなく塩味も利いていてその塩梅が絶妙だった。
本を読みなが1時間半ほどゆっくりしたところ、その間にかなり売れていた様子で、入ったときにはなかったパンもいろいろ並んでおり、噂にたがわぬ人気ぶりが伺えた。
またリピします。
帰り道はカッタンから上品野口のバス停まで16.80km。
行きに脚を使っていたので雨沢の頂までのアップダウンは少し堪えたが、そこからは事故をしないよう安全走行でゆっくりと下った。
登るだけでなく下りも含めてヒルクライムである。
無事に上品野口のバス停に到着。
雨沢峠の感想としては、距離的にも勾配的にも無理なく行けて、道路状況も良かったが、スピードの出し過ぎだろ!という車両が多かったのには要注意である。
総じて、ヒルクライムの練習には丁度いい感じだったので、月いちくらいで登りたいコースである。
カッタンへ行く途中、自然薯料理店に鰻屋にそば・うどんの店など、気になる飲食店がいくつもあったのにもそそられた。
結論、楽しみながら挑戦もできるヒルクライムは最高の遊びである。
まずは東海地方のコースをいろいろ登って、行く行くは日本全国のコースに挑戦したいという気持ちが湧いてきた。
そう考えると持ち運びに便利な折りたたみ自転車は有りである。
自転車が重い分、乗り手が軽くなればいい。
折りたたみ専門でヒルクライムをやっている人もそうそういないだろうし。
全国にはどれだけのコースがあって、日本百名山みたいに主要な名コースを回るのに何年かかるのだろうか?
そのための目標として、80歳になってもヒルクライムの記事を書き続けて行きたいと思う。
草野翔吾 監督 『アイミタガイ』
「気いついてないだけでいろんな思いが巡って自分のところに届いているんや」
黒木華さん演じる梓の祖母 (風吹ジュンさん) が「相身互い」について話すなかでの一言。
「情けは人の為ならず」ほど大袈裟ではない。
ほんの小さなことでいいので、誰かのために行動して、見返りは求めない。
散りばめられたアイミタガイのエピソードが繋がりラストシーンに向かって気持ちよすぎる伏線回収。
不確定要素が多い不安定な世の中だからこそ、人との繋がりに温かみを感じる。
公開前にミッドランドシネマ開館16周年記念試写会に足を運んでいて、伏線を知ってから観ると理解が深まって、気づかなかった新しい発見もあり、少なくとも2回は観るべき作品である。
冒頭のシーンで梓と恋人の澄人 (中村蒼さん) がランチをしていた ELOISE's Cafe 。
華さんが座っていた席で同じものを食べようと向かったが、店内は混雑していておっさんがひとりで入るのが憚られたので、また今度空いそうなときに伺いたいと思う。
終始間が悪かった澄人と同じように私も間が悪い。
黒木華さんが歌う『夜明けのマイウェイ』を聴きながらエンドロールを見ていると近藤華という名前が出てきたので気になってチェックしてみると中学生の梓を演じていた。
中條ていさんの原作小説には梓の中学生時代は書かれておらず、梓と親友の叶海 (藤間爽子さん) の中学生時代を描くことによって5つの短編小説がきれいに繋がっていて、小説とは違うストーリーになっているが、小説のアイミタガイの世界観はそのまま映画に繋がっている。
大切な人の死は悲しみに直面するが、その人が生きてきた足跡をしっかりと見てあげることでその死を受けとめることができ、娘の意志は父へと繋がっていく。
亡くなった叶海の父 優作(田口トモロヲさん) は図書館に勤めていて「仕事柄いろんな小説を読んでいますが、いい人しか出てこない小説ってなんだか嘘っぽいと思ってたけど今は信じたい気分なんです」みたいな台詞があった。
まさにこの映画のことを言っているよう。
娘に宝石店を継がせた福永 (升毅さん) も普通はあそこでお店を開けないだろう。
本当にいい人ばかりである。
2024.10.20 シアターカフェ
『猫と私と、もう1人のネコ』 『ばあちゃんと猫ぼっくる』
登壇者 祝大輔監督 憲俊さん (役者・保護犬・保護猫所「太郎くん家」)
素晴らしい映画だったので、2回目の鑑賞。
前回の舞台挨拶で猫町俱楽部主宰の山本多津也さんが仰った通り、2回目の方が更に良かった。
「ちょと油断して来たら無茶苦茶良い映画でした」と大絶賛の憲俊さん。
保護犬・保護猫所を創られたばかりだそうで、事情通が言うのだから間違いない。
「この映画を知らなかったし、何で知られておらんのだろうとマジ思いましたね」と仰っていた通りで、宣伝にお金を掛けられない中でどうやったら知ってもらえるのか?自主映画の監督は誰しも頭を悩ますところである。
「どうやってこの映画を知ったのですか?」との憲俊さんからの質問に「新聞を見て来ました」と答えられた方が居られたが、良い記事だし、土曜日の夕刊を読んで日曜日に来られた行動力も素敵である。
自主映画にとって新聞の掲載は有難いことで、ネットニュースになれば最高である。
現在大ヒット中の『侍タイムスリッパー』や以前に大ブームを起こした『カメラを止めるな!』のように、口コミで広がる場合もあるが、それはエンターテインメント性の高い娯楽作品だから火が付きやすいこともあっただろうし、あとは映画を紹介しているユーチューバーが取り上げてくれたらと思うが、再生回数が正義のユーチューバーにとって、無名の作品ではそれが稼げないので興味はないだろう。
その中で、先日センチュリーシネマで鑑賞した『最後の乗客』は自主映画で派手さはなくてもじわじわと来ている。
作品の良さはもちろんだが『侍タイムスリッパー』でスポットライトが当たった冨家ノリマサさんが主演されているという話題性も無関係ではななく、この2つの作品が同時期に公開されるのは必然だったように思える。
そう思えるほど、冨家さんの演技はどちらの作品とも本当に素晴らしかった。
どちらのパンフレットからも自主映画を撮る大変さが伺えた。
特に『侍タイムスリッパー』のパンフレットは大ヒットのあとに作られているので、そこに至るまでの経緯を詳細に書かれた安田純一監督の6ページに及ぶ文章には引き込まれた。
作中でも『カメラを止めるな!』を意識されていることは十分に伝わってきたが、『カメラを止めるな!』があったからこそ『侍タイムスリッパー』が存在し、またそれは続いていく。
「自分の人生は自分のやりたいことをやってほしい」という新聞の中での祝監督の言葉にも繋がり、それぞれの監督は薄氷を踏む思いをしながらも、やりたいことができる喜びを感じているのだ。
人生に於いて、やりたいことがあってやりたいことができる以上のことはない。
憲俊さんがご出演されているということでチラシを持って来られた『BISHU 世界で一番美しい服』。
地元愛知県の一宮市が舞台であること、ミッドナイトスワンで素晴らしかった服部樹咲さんの主演ということで鑑賞する予定だが、吉田栄作さんも気になる。
『猫と私と、もう1人のネコ』で主演されている吉名莉瑠さんについて「ヤベー」を連発されて「服部樹咲さんもヤベーと思ったけど、同じくらいヤベー天才」と、こちらも大絶賛の憲俊さん。
祝監督曰く「朝ドラの主演とかやると思いますよ」。
マジでそのくらいヤベーです。
シアターカフェでの上映はこの日が最終日だったが、prime video などで視聴できるので是非。
同じくヤングケアラーを描いた『イルカはフラダンスを踊るらしい』と同じように短期間の限定でもいいので、刈谷日劇で上映してくれないかな。
少しでも多くの方に知っていただければと思い『侍タイムスリッパー』『最後の乗客』『BISHU 世界で一番美しい服』をタグ付けさせていただいた。
2024.10.19 シネマスコーレ
『とりつくしま』
登壇者 東かほり監督 安宅陽子さん
東監督が手にされている東直子著『とりつくしま』は監督のお母さんが書かれた原作小説で、10話と番外編の中から4つの話をピックアップして映画化された。
亡くなった者が、とりつくしまを探している気配をだしているとき、とりつくしま係によって、この世にあるなにかのモノにとりつくことができる。
そのモノは魂が存在している生きているモノではなく、無機質なモノでなくてはならない。
その気配とは何か?
それは執着とは違う。
『トリケラトプス』では残された夫を幸せにしてくれると思える女性だったら受け入れただろうし、『あおいの』ではお母さんだけではなく新しい命や友達などとも会いたかった気持ちがあっただろうし、『レンズ』では孫の手から離れても次に手にしてくれた人とのご縁を感じ、『ロージン』では空中に飛び散って短い時間しか居られない。
気配はそれぞれだろうが、共通しているのは生きている者への愛情。
とりつくしま係の小泉今日子さんがそれぞれの思いを丁寧に掬い取る。
そして、とりつくしまがある者は生きている者からの愛情も消えていない。
小説では1話目だった『ロージン』をラストに持ってきた順序が大納得できるラストシーンでは映画ならではの手法で映像だけで魅せてくれる。
舞台挨拶でお母さんの小説を映画化された経緯について話された東監督。
母親のことが大嫌いだった時代が長く小説も読むことができなかったそうだが、年齢と経験を重ねて分かち合いたい気持ちが生まれてきたとのこと。
そのエピソードをお聞きしたとき少し前に鑑賞した『ぼくが生きている、ふたつの世界』のことが頭に浮かんだ。
耳がきこえない両親とそのもとに生まれたきこえる子との親子の話で、特別な家庭環境だからではなく母親に対して疎ましく思う子供の気持ちはどの家庭にも当てはまり、『ロージン』でも「ガンバレ」と応援してくれる母親を疎ましく感じて言えなかった本心を亡くなってから何度も言葉にし、小説家である母親は傍から見れば自慢できる存在であるように思えるがそんなに単純ではない。
その立場にならないとわからないことがある。
CODA (Children of Deaf Adults) を演じる吉沢亮さんが忍足亜希子さん演じる母親との駅でのやり取りで、これまでの母の思いに気付いて号泣し、フラッシュバックしていく。
年齢を重ね、経験を重ねたからこそ気付くことはある。
今年のマイベスト級の作品なのでまだ上映している劇場があればこちらもオススメ。
洋服の青山のシーンで三浦友和さんのパネルが出ていたのには、耳がきこえないボクサーを描いた『ケイコ 目を澄ませて』が思い浮かんだ。
小泉今日子さんとの現実と役柄での距離感について話された安宅さん。
現実での自分と大スターの距離感と役柄での一般人と天井人との距離感がそのままで、すべてを見透かされているようで委ねるままに演技できたとのこと。
NHKBS で放送中の『団地のふたり』も最終話が近づき、ドラマでもいい味を出されているが、映画で拝見できるのはやはりうれしい。
今日第8話観ます。
2024.10.13 NAM HALL
Vela 〜para o céu 空へ
橋本一子(piano.voice.ambience)
甲田益也子(voice.reading.ether)
3連休の真ん中の京都は人も車も尋常ではない多さで、高速道路の出口からずっとノロノロ運転してようやく会場近くに辿り着いたところ、駐車場はどこも満車。
やっと「空」の駐車場を見つけたが、私の前にいた車が入って「満」に変わってしまった。
駐車場を探している車はどれだけいるのだろうかと考えると絶望的になったが、「諦めたらそこで試合終了ですよ」と、自分に言い聞かせながら運転していると奇跡的に1台だけ空いている駐車場があった。
開演2分前に入場、滑り込みセーフ。
地下にあるコンクリートの打ちっばなしのホールは、さっきまでの昼間の日差しも観光客の喧騒も完全にシャットアウトした別世界。
Vera とは、船の帆をイメージした星座、ほ座のことで、ゆらゆらと音の波に揺れながら時空を旅しているような感覚。
ピアノのタッチもボイスの囁きも芯がありながらも繊細で、吸い込まれるような静けさが反響している仄暗いの空間は無重力を感じる。
洞窟の中にいるようなバックトラックでは、幻想的なメロディが冷ややかにエコーして心地良さにゆったりと浸った。
甲田さんが誰かを探しているようで、私とも目が合いドキリとしたが、私の前列の男性を手招きし、即興ダンスが始まった。
ピアノと二人の動きが解け合うように融和し、息を呑む美しさ。
叙情的でサウンドスケープ豊かな演奏に即興による緊張感も重なり魅力的なパフォーマンスであった。
開演直前に席に着いたのでまったく気付かなかったが、私の前の席で映像クリエーターの手塚眞氏が鑑賞されていた。
『ばるぼら』は、手塚監督と稲垣吾郎さん、二階堂ふみさんのリモート挨拶があった回を鑑賞したが、手塚治虫作品の中でも異色なストーリーに退廃的な映像美とジャジーな音楽が融和したまさに総合芸術と言える作品だった。
その音楽を担当されたのが橋本一子さんで、他にも『白痴』の音楽も担当されるなど、手塚作品には欠かせない存在である。
手塚眞アート映画集『Visualism』の音楽も橋本さんが多く担当されていていて、先ほど甲田さんとの即興ダンスを披露された男性はその中の最新作『RESURRECTION』にご出演されているダンサーの inesik さんとのこと。
やはり只者ではなかった。
http://www.neontetra.co.jp/news/?p=13882
大阪まで観に行こうかな。
会場には前日に神戸公演の主催をされた関西のやさしい重鎮、ムジカ アルコ・イリスこと、安田雅彦さんも来られていた。
実は私も橋本一子さんと西山瞳さんの2台ピアノコンサートを来年1月25日(土)、カワイ名古屋2階のコンサートサロン『ブーレ』にて主催させていただくことになり、とりあえずその日の夕方からは予定を空けておいてくださるとうれしい限りです。
詳細は後日ご案内致します。