Ninjin Music Blog (original) (raw)
夜(ウイグル詩)
原詩:タヒル・ハムット・イズギル
曲: historyninjin
夕方
あちらこちらから慌ただしく戻り
建物にしっかり閉じ込められた
私たち
家から出ると流離い人
家に入ると手負いの獣
横たわり傷口を舐めている
詩:タヒル・ハムット・イズギル
1993年6月 ウルムチ
日本語編訳:ムカイダイス,河合眞
(詩集「聖なる儀式」より)
編詩作曲:2024/11/3 historyninjin
夜にまつわる歌でこちらは「夜の歌」というタヒル氏の詩に作曲したものです。どうぞお聞きください。
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2022/01/10/235404
原詩に「孤独な夜の瞳」という言葉が散りばめられたウイグル詩へのメロディー「君の瞳に雪は降る」です。どうぞ。
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2021/05/29/032822
アリーシール・ナワーイーの詩、「夜の霧」に作曲した作品です。
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2021/05/31/002010
ゴージャ・ムハメットの詩「命の舞」に作曲したものです。「夜は私に真っ黒なマントを纏わせ」という言葉が綴られています。夜自体がこの詩の主人のような印象を与えてくれます。作者は既に他界しておられます。
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2021/07/11/063036
◆最後に・・・夜ではなく昼の「陽光」の世界を謳った詩を紹介します。絶望的な悲しみの中に芽生えたたった一つの希望を示すかのような詩「午睡」です。救い主を求める預言的内容のようにも聞こえます。
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2022/01/27/064750
ウイグル詩への音楽「同罪」
詩 タヒル・ハムット・イズギル
作曲 historyninjin 2022/7/3 3連の途中まで作曲
2024/8/9 3連を改訂し、最後まで作曲完成
音楽は後日アップします。
「同罪」
1
胡桃の木の下で 牝の鵲(かささぎ)が
毛繕いをする
銅が錆びてゆくのを感じながら
私は芝の上を歩き 流浪のあだを
見つけようとしている
2
私たちは若く健やかである
約束を守り 寄せては返す波のように
樹木の苦痛の胎内に回帰する
紛れもない死の故郷に 帰ることを望んでいる
3
樹皮はすっかり剥がれ落ち
胡桃の木は冬眠を迎えている
私は本来の場所に戻る
鵲(かささぎ)を脅かすつもりはない
光で作られた帽子を手にとる
流浪というのは己の邪悪を
あらわにすることである
4
私は本来の場所に戻る
罪を犯した子供たちは辺鄙なところに石を投げ
容赦なく攻撃を加えている
私は一枚の萌え出る青葉を握りつぶす
複雑で変幻自在な液体を作る
一本の黒い線が軽やかな冗談に変わる
私は己の湧き出る幻想と
雌のカササギの翼を洗う
仇討というのは
一瞬の忍耐である
5
私たちは若い
己が感じているよりもずっとずっと若い
1994年10月 北京
最初の投稿は2022年8月7日(途中まで)
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2022/08/07/221810
2024/8/8 作曲 historyninjin
音楽は後日アップします
2024/6/2 ムカイダイスさんがアップしたウイグル語の詩の訳詩
「無題」(裸の炎)
静かな想いで霞みがちな影に
独りぼっちで座っている
昼の最後の光が空の顔から消えると
濃さを増す黒い影と共に
苦しみの穴に帰る
淋しい心から燃え上がる裸の炎を
私の生きざまに変えていく
冴えない姿が心から出て宴を始める
私は手にはいらないものを探し続ける
(そして)探してないものを手にいれる
historyninjinによるタイトル「裸の炎」
ウイグル詩「炎の中の女」へのメロディー
ウイグル新鋭詩人選詩集
ムカイダイス+河合眞編詩,左右社より
ウイグル詩「炎の中にいる女」
原詩:グリニサ・イミン・ギュルハン
1976年ホータン出身,1990年詩人デビュー
ウイグルを代表する女流詩人,中学教師
「炎の中にいる女」
私は炎の中に落ちたことを君に告げていない
私の中では満々と酒が眠る
私は入れない荒野
夜は私の想いの中で血を流す
逢いたいと想う 想う さらに想う
闇が濃い夜の色
ああ 君の懐で死にたい
永遠の悲しみと記されれば良い
並木道を私は行く
君の心が目的の地
私を連れて行け 君の懐で命を落とそう
私は君の 君は私の 愛しい人よ
悲しみが道で軽やかに舞う
ある定めが私の中で血を流す
私は君に 君は私に流れる
君は私の命で永遠に繁る
「炎の中にいる女」
(作曲者が歌っている歌詞)
私は炎の中に落ちたことを君に告げていない
私の中では満々と酒が眠る
私は炎の中に落ちたことを君に告げていない
私の中では満々と酒が眠る
私は入れない荒野
入ることのできない荒野
夜は私の想いの中で血を流す
逢いたいと逢いたいと想う
逢いたいと想うさらに
闇が濃い夜の色
闇が濃い夜の色
ああ君のその懐で死にたい
その懐で
永遠の悲しみと記されればそれでいい
並木道を私は行く
並木道を行く
君の心が目的の地
君の心が
私を連れて行け
君の懐で命を落とそう
私は君の君は私の
私は君の君は私の愛しい人よ
愛しい人よ
愛しい人
悲しみが道で軽やかに舞う
軽やかに舞う
ある定めが私の中で血を流す
私は君に君は私に
私は君に君は私に流れる
君は私の命で
私の命で永遠に
繁る
私は炎の中に落ちたことを君に告げていない
私の中では満々と酒が眠る
夜は私の想いの中で血を流す
作曲 2024/6/16 historyninjin
詩の本質的焦点は、
「私は炎の中に落ちたことを君に告げていない
私の中では満々と酒が眠る
夜は私の想いの中で血を流す」
の中に描かれているように思われます。
私は女性、恋の炎の中にいる本人。切々とした恋心を歌い上げていると同時に、その恋心を闇の中に取り込んで自ら現れないように血で縛り上げているように感じられます。
葉隠れの忍ぶ恋と同じ。そこに恋の本質を結晶化させる精神性を感じます。
「私は炎の中に落ちたことを君に告げていない」・・・私はあなたに対する恋の炎の中に落ちてしまいました。でも、まだそのことをあなたに告げてはいません。これからもずっと告白することはないかもしれません。でも、あなたへのこの恋の想いは真実の想いです。その想いを抱いて私は荒野を辿りながら永遠にあなたを繁らせるために生きて行きます・・・。そう語りかけているように思われます。
グリニサ・イミン・ギュルハンさんは3段目の左端の女性。ウイグルジェノサイドの中で、もう地上におられないかも知れません。💧
ギュルハンさんの詩
「ホータンの石」
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2022/01/25/050439
永遠の悲しみを主題としたウイグル詩
「悲しみの永遠の石」
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2021/08/14/120253
Tahil Hamut Izkil (タヒル・ハムット・イズギル) 氏のウイグル詩「夏は一つの陰謀」へのメロディーです。(リバイバル)
原詩:タヒル・ハムット・イズギル 1994/7
日本語編訳:むかいだいす 2021/8/21投稿
作曲:historyninjin 2021/8/30
録音 2021/9/12
私は汗まみれで
アン・セックストンを
読んでいる
浮遊する埃が
空気を追う
都会の無数の鳥に変わり
ホームへ飛んでいる
風は唾を飛ばしながら
あちこちに黴菌を
撒き散らし
君は真に生きたことがない
白い嘴の鴉ではない
赤い芝生でもない
私は第六感を信じない
それは昨日の
地下鉄で出遭った老婆が
口走ったかのように
人を欺く
二人に唯一共通するものは
恐怖
聴き慣れた鋼鉄のような
その声は
飲み物のように
骨の髄まで浸みこみ
浸みこんで凝固する
山が動くのを見る
テーマを創作することの
重要さも感じてる
海が燕の巣の上を
飛翔するのを見ている
君は私を現実に戻す
恐ろしい力
車にぶつかった人形
それは芸術と
糞の誠実さ
誠実さ
夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く
父が家から追い出された
時に帰る場所は
泥の
泥の
泥の寝床
昨日の雨を知らないのか
可哀そうな雨音が未だに
枝の間に響いている
己をすべての昆虫類に繋ぐべき
疑いが消えた時
それだけが
ただそれだけが私に
自身を破壊する力を
私に与えている
カシュガルのジャーミーの前で
計り売りの大麻があったのを
忘れられない
私の語るに値しない子供時代
今日の私は手を
汽車の窓から延びた
あの手を
思い出した
その手を記憶に
留めるために
多くの犠牲を払った
そのために
私は腐敗する権利を
放棄した
周りの真空は私に
死の喜びをもたらす
喉元をゆっくりと通って
胃の奥まで辿り着く
私は弱き者のスリッパへの
憎しみを学んだ
十四歳の時だった
十四歳の時だった
歯痛のために打たれたプロカイン
注射の効き目が
未だ続いてる
失望に満ちた午後私は
帰ることができる
君の許に
帰ることができる
帰ることができる
大バザールのここかしこに
見られる濁った水溜りを除いて
私は何処からも私は何ものをも望めない
泥の匂いを嗅いでいる
私は眞に生きた証しがない
灯が消えた冷たい暗闇
こそこそとかくれてする自慰
大酒呑みになった一つの
一つの民族
私を攻撃してくる
アスカルは私を見つめ
この野郎は
結構いけていると
叫ぶしかし
私は形式を
持っていない
私は読んでいる
汗まみれで読んでいる
幽霊が艶やかで
透明な肌色を
浮かび上がらせ
私の目に光を
投げかける巨大な
反射鏡になる
投げかける巨大な
反射鏡になる
夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く
夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く
父が家から追い出された
時に帰る場所は
泥の
泥の
泥の寝床
泥の
泥の
泥の寝床
夏は一つの陰謀
しなやかな思い出の中を
よろめきながら歩いてゆく
よろめきながら歩く
最初の投稿です。↓
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2021/09/12/204956
「聖なる儀式」
1993年、ウルムチ
以下のリンクに詳細な記事があります。
東トルキスタンの栄光を祈ります。
2024/3/23 historyninjin
https://ninjinmusic.hatenablog.com/entry/2021/05/30/092717
https://www.facebook.com/share/p/mo76hkQ2heQ3Pfch/
ムカイダイスさんより詩を送っていただきました。2024/3/14
باغچە
رەھىم ياسىن قاينامى
ئۇندا يىغلاڭغۇ گۈل بىلەن
ئۇنىڭ يىغىسىدىن تاراۋاتقان خۇشپۇراق
قانىتى يوق كېپىنەك بىلەن
ئۇنىڭ قانىتىدىن تۆكۈلىۋاتقان ئىشتىياق...
قاراڭغۇ بىر بۇلۇت بىلەن
ئۇنىڭ چاچلىرىدىن چىقىۋاتقان قارىغۇ شامال
شامالنى يېتەكلەپ كېتىۋاتقان بىر قول بىلەن
ئەشۇ قول تېنىگە تۇتاشقان ساھىپجامال......
گۈل سايىدەك ئاق ھالدا ئورنىدىن تۇرىدۇ
شاراپ كۆپۈكلىنىپ سۈزۈك رېشاتكىلاردىن ئاتلايدۇ
مېۋىلەر تەخسىلەردىن قاچقانچە سۇ بويىدا توختايدۇ
زىقلار كاۋاپتىن ئۇچۇپ چىققانچە يۈرەكنى نىشانلايدۇ
قۇشلار ئۈركۈيدۇ
قۇرت-قوڭغۇزلار ئويغىنىپ ئۆمىلەشكە باشلايدۇ...
بىر باغچە ياسىدۇق
كۈز تۇمانلىرى قاپلىغان بىر دالىدا
قىشنىڭ خىيالى
تېنىمىزدىكى گۈلخانلارغىچە تۇتاشقان جايدا...
「花園」
レヒム・ヤスン・キャイナミ
そこには泣き虫の花と
その泣き声から広がる香り
羽のない蝶と
その羽から滴る欲望・・・
暗黒の一片の雲と
その髪から吹く盲目の風
風を導く一本の手と
その手と体が繋がる麗人・・・
花は影のように白いまま立ち上がる
果実酒は泡立ち透き通った柵を越える
果実は皿から逃げたまま水辺に止まる
串はケバブから飛び出て心臓を目指す
小鳥たちは驚く
昆虫は目を覚まして這いずり始める・・・
花園を一つ造った
秋の霧が漂う野原に
冬の想い
私たちの体の焚き火に繋がる場所に・・・
作曲 2024/3/14 historyninjin