江戸期の薬屋の菊花紋 国内外の神仏の力を借りて秘伝の妙薬を販売【宇陀市 薬の館(続き)】 (original) (raw)
はじめに
宇陀市 鍾馗(しょうき)さんの #薬の館 の続き。江戸期の薬屋看板に菊花紋が使われていた理由とは。当時の薬商人は宮家のほか国内外の神仏の力を借り、秘伝の妙薬を売っていました。現在の広告宣伝に繋がる話 #外郎売り #薬師如来
目次
本文
薬売りの菊花紋
奈良県宇陀市『薬の館』(宇陀市歴史文化館)は、江戸後期、宇陀の薬種商・細川家の建物跡で、街道筋の屋根には、当時のまま、銅板唐破風付き・木組み・瓦屋根の立派な看板が掲げられています。
宇陀市『薬の館』
さすがに街道筋の目立つ屋根に掲げるには憚ったようですが、店先では 十六弁の菊紋 の看板を掲げていたそうです。
地獄の沙汰も何とやら・・・江戸期の御所は質素なものだったと聞きますが、商人相手のブランドビジネスで稼いでいたんですね。
薬の館案内より)この紋は御所の紋であるが、親王家などに頼んで、ひそかに金を出し、表向きは宮家の御用達であると見せて、薬を売るための手法の一つである
薬の館玄関。鍾馗(しょうき)と菊の御紋の薬の看板
このあたりの状況は記事中リンク、江戸期の妙薬 外郎(ういろう)売り の口上に似たようなセリフがあります。
・・・八方が八棟、おもてが三棟玉堂造り、破風には菊に桐のとうの御紋をご赦免あって系図正しき薬 でござる
外郎(ういろう)売り は、相州小田原の、剃髪して円斎と名乗る薬売りが、辻立ちで道行く人々に口上を述べて、妙薬『頂透香(とうちんこう)』あらため『外郎(ういろう)』を売るという設定。
由緒正しきを仰々しく述べ立てた自己紹介の後、試しに一粒・・・速効性は神の如く、口(舌)が回る回る。ついには薬の元締・薬師如来まで登場して妙薬を勧めるという、眉に塗る唾も枯れ果てるほどの口上。
(リズム感のよい、流れるような早口調子は、アナウンサー志望の人の滑舌トレーニングに使われるそうです)
一部文字起こし)・・・まずこの薬、かように一粒、舌の上にのせまして、腹内に納めますると、イヤどうも言えぬは、胃、心、肺、肝がすこやかに成って、薫風喉(のんど)より来たり。口中微涼を生ずるが如し。魚鳥、きのこ、麺類のくい合わせ、そのほか 万病速効あること神の如し。
さて、この薬、第一の奇妙には、舌のまわることが銭独楽がはだしで逃げる。ひょっと舌がまわりだすと矢も楯もたまらぬじゃ。そーりゃそりゃそりゃそりゃ、まわってきたわ、まわってくるは・・・(早口言葉の連続)・・・東方世界の 薬の元締、薬師如来 も照覧あれと、ホホうやまって、うゐろうは、いらっしゃりませぬか。
宇陀市『薬の館』
私の子どもの頃も赤ワイン(赤玉ポートワイン)は薬のようなもので、一家に一本常備してました。懐かしい便秘薬サラリンのCMソング。
薬の館(宇陀市)薬の看板
いい薬です。創業者の太田信義が、ストレスで胃をやられて胃薬を販売するに至るエピソードは面白いです。太田信義でググってみてください。
♬ロートロートロート、ロートロートロート、ロートせいぃやくぅ~
ツムラ(津村順天堂)創業者の奈良の実家に伝わる、中将姫が処方した(伝)婦人薬の処方を商品化したのが中将湯。
ネコいらず とは『猫がいらないくらいよく効くネズミとり(殺鼠剤)』のこと。子供の頃は誤飲事故のニュースがよく流れてました。
学者風の大学目薬は、目薬の参天製薬のことですね。勉学で目が疲れやすい大学生のために?今でも商品は販売されています。