きっぷ片手に旅をする (original) (raw)

2024年夏臨から運行を開始した特急「アルプス」が好況である。秋の臨時列車でも運行が予定され,引き続き11月1日までの3連休の週末の金曜日に運行予定だ。

私はこの3連休で2ヶ月ぶりに特急「アルプス」に乗車して,上高地のトレッキングに行ってきた。

特急「アルプス」新宿→松本

特急「アルプス」

今回も新宿駅から特急「アルプス」に乗車する。今回も普通車を利用。グリーン車の通路側の予約も取れていたのだが,「アルプス」のE257系には通路側に電源が無いため,普通車の窓側利用とした。長時間乗車するので,電源確保は優先度が高い。

特急「アルプス」のきっぷ

乗車した感想は前回と同じである。座席の前ポケットには相変わらず伊豆のアプリの宣伝パンフレットが入っていた。

ashizin.hatenablog.com

前回と違うなと思った点は,登山者の増加である。列車は相変わらずほぼ満席だが,座席の網棚には大きくカラフルなザックが前回よりも増えた。車内はまだオタクのほうが多いが,本来のターゲットである登山者が取り込まれてきているのは良い傾向だ。

特急「アルプス」の車内

前回は八王子を発車して減灯あたりですぐに寝てしまったのだが,今回は寝付けなかった。しばらく寝ずに過ごしていたのだが,驚いたのはその減灯して車内が暗くなっている状態で車掌が検札をしていたことだ。ひとりひとりの乗車券と特急券いずれもチェックをしていた上に,Suica で乗車して信濃大町方面や上高地方面に向かう人は Suica 区間外で精算となるため,八王子までに検札が終わらないようだ。

減灯して車内が暗い中でも検札を続ける車掌

アルピコ交通上高地線 臨時快速 松本→新島々

松本駅には定刻の5:03に到着。ここからは上高地線の電車に乗り換えて終点の新島々まで向かい,さらにバスに乗り換えて**上高地**へ向かう。

松本駅では7分乗り換えと慌ただしいが,いったん改札を出て上高地線のきっぷを買う。

松本から上高地ゆきの乗車券(記念購入用)

松本駅では券売機で上高地までの電車・バス通しのきっぷを発売している。電車とバスがセットになった普通乗車券はいまでは珍しくなった一品だ(しかもJRで発売されている!)。なお,バス乗車時に回収されてしまうため,小児券でも記念用に購入している。

きっぷの買い方としては「東京都区内から松本まで」のきっぷではなく,「東京都区内から松本経由新島々まで」の連絡きっぷを買って「アルプス」に乗ることもできる*1が,結局新島々でバスのきっぷを買うのに長蛇の列に並ぶことになる。

松本駅上高地線の臨時快速に乗り換え

さて,上高地線の臨時快速列車で新島々へ。この臨時快速は特急「アルプス」からの接続が目的のため「アルプス」運転日にしか運転されない。今回はアルピコ交通鉄道むすめがラッピングされた「なぎさTRAIN」が充当。車内は「アルプス」から乗り継いだ人のほか,松本で前泊したであろう人もそれなりに乗っていて,座席が埋まり若干立ち客が出る程度の乗車率だった。

アルピコ交通バス 臨時バス 上高地ゆき

新島々でバスに乗り換え

新島々でさらに臨時バスに乗り換える。このバスも,特急「アルプス」→上高地線臨時快速からの接続のために運行されているバスで,特急「アルプス」運行日にしか運転されない。

長蛇の列ができているが,上高地ゆきのバスは山岳路線のため全員着席となるし,増車対応もとられているのでさほど心配しなくてもよい。新島々から上高地へは1時間ほど。上高地の南側にあたる**大正池**で下車した。

上高地を歩く

朝靄の大正池

木漏れ日の森

賑わう河童橋

河童橋から焼岳を望む

明神池と奥穂高岳

大正池に到着したのは朝7時ごろ。大正池河童橋→明神池→河童橋と歩くコースとした。上高地名物の朝もやがかかる大正池,すがすがしい森の中,美しい北アルプスの山容など,何を見ても素晴らしい景色だった。15kmくらい歩いたので身体はバキバキだが心はリフレッシュできた。

鉄道ブログを見るならこちらをクリック▼

4日間の北海道ドライブを終え,横浜に帰る時がやってきた。行きは津軽海峡以外は自走したが,帰りは長距離の夜行フェリーでのんびり帰る行程だ。

当初は苫小牧→大洗の「商船三井さんふらわあ」を予約していたが,不幸にも台風が太平洋側を通る予想になっていたため,急遽小樽→新潟の「新日本海フェリーを予約しておいた。

小樽港とフェリーターミナル

乗船時刻の2時間ほど前にフェリーに乗船する小樽港へ到着。今回乗船する新日本海フェリーらべんだあ」がすでに停泊している。結局,台風は太平洋側から北東北を直撃し,本州と北海道を結ぶフェリーの「さんふらわあ」だけでなく「津軽海峡フェリー」まで欠航となる気象状況だったが,「新日本海フェリー」は若干遅れるものの運航予定のようだ。

新日本海フェリーのe乗船券お客様控え

新日本海フェリー」も QR コードタイプのe乗船券になっていて,スマホ等で表示できればチェックインなどせずにそのまま乗船でき,個室の鍵代わりにもなっている。フェリーターミナルのカウンターが空いていたので発券できるか聞いてみたところ,e乗船券お客様控を発券いただけた。あとから知ったことだが,船内にも QR コードを紙発券するプリンタがあり,一定の紙需要もあるようだ。津軽海峡フェリーと同様に券面にマイカーのナンバーが券面に記載してあり,こちらも長距離ドライブ旅の記念としてはうってつけだ。

(左)ステートルームAツイン(アウトサイド)の室内
(右)個室内お手洗いの様子

今回の利用する部屋はステートルームAツイン(アウトサイド)。ステートルームAは「らべんだあ」の個室の中ではもっとも多くスタンダードな設備である。洋室のツインベッドに机,トイレ,シャワー,冷蔵庫などが備え付けられていて,ビジネスホテルと同じくらい整っている。

小樽港を出港

カモメに見送られながら,17時に小樽港を出港。これから新潟まで約18時間の船旅へ。

絶景・神威岬。陸から見るか,海から見るか。

小樽港を出て2時間ほど,日没間際に**神威岬**沖を通過した。今回のドライブでは神威岬にも訪問していたので,同じ岬を陸からも海からも見て感傷に浸ってしまった。右舷側では,新日本海フェリーの僚船「はまなす」とすれ違う。

はまなす」とすれ違い

18時間という字面だけでは気が遠くなるようにも思えるが,船内には売店やレストラン,お風呂などがあり,夜には洋上イベントとして大道芸人のパフォーマンスもやっていたから,さほど暇だと思うことはなかった。そもそも長旅で疲れ気味だったので,ベッドに沈んでいた時間も長かった。

船内の様子

出港直後に売店で売っている焼き立てメロンパンとチュロス

22時に北海道の奥尻島沖を過ぎたあたりで就寝。台風は北東北を横断し日本海側に抜けて,深夜の秋田県沖でちょうど「らべんだあ」と鉢合わせたはずだが,朝までぐっすりと寝れたので波で船が大きく揺れることは無かったのだろう。台風の日に船に乗っているとは思えないほど,快適な船旅だった。

新潟港に到着

翌朝10時,新潟港に到着。ここから横浜まで,弥彦山などに寄り道しつつ陸路を約400km走って帰宅した。

秘境駅とは,人里離れた場所(秘境)に設置されている駅のことをいう。秘境駅訪問記サイト「秘境駅へ行こう!」の牛山隆信氏が広めた言葉である。その秘境駅ランキングで第1位となっているのがJR北海道室蘭本線にある「**小幌駅**」である。

小幌駅の存在自体は一応認知していたが,駅めぐりは趣味ではないし,停車する列車本数も少ないので訪問する機会はこれまで無かった。通過する特急列車から一瞬見える小幌駅をチェックしていたくらいだ。

今年の夏休みは東京から北海道・宗谷岬までクルマでドライブすることになったが,その途中で小幌駅があるエリアをクルマで通過することと,同乗する嫁からのリクエストもあり,小幌駅へ訪問することにした。

列車番号 長万部 小幌 豊浦 東室蘭 備考
472D 08:54 08:36 08:18 07:27 室蘭始発
478D 15:23 15:06 14:48 13:56
481D 15:30 15:46 16:05 16:54
480D 17:55 17:38 17:20 16:17
487D 19:39 19:55 20:13 21:03
484D 20:38 20:21 20:04 19:03 苫小牧始発

小幌駅停車列車時刻表(2024年8月現在)

上記が小幌駅に停車するすべての列車の時刻表(室蘭線東室蘭長万部間,抜粋)である。上り列車(長万部方面)は4本,下り列車(東室蘭方面)は2本しか停車しないが,駅の訪問がしやすい日中帯の列車になると,さらに限られてくる。

今回は,初回の訪問ということもあり,小幌駅滞在時間が約40分でお手軽訪問できる 478D と 481D を利用しての訪問とした。

室蘭本線 478D 豊浦から小幌駅

小幌駅から3つ東室蘭方にある豊浦駅前にクルマを停めて,豊浦駅から長万部行き普通列車に乗車する。豊浦駅は無人駅だが,乗車券類の簡易委託がある。駅舎に入る食事処できっぷが買うことができるようだったが,14時すぎに訪問した時点で営業終了していた。きっぷ好きとしては少々残念だが,この駅は券売機などもないので,車内精算することにして駅に滑り込んできた1両の普通列車に乗り込む。

豊浦駅から普通列車478Dに乗車

このあたりの室蘭本線は,内浦湾沿い海に近いところを走る。海岸もわずかにあるが,多くが丘陵地で,山がそのまま海に落ち込む険しい地形となっている。室蘭本線はその山を長いトンネルで貫通している。

礼文駅発車後,1両の単行列車は長いトンネルをひた走る。トンネルの騒音でかき消されそうになりながら,小幌駅到着の自動放送が入る。列車はトンネル内で減速し,トンネルの外が見えたと同時に,その小さい駅にたどり着いた。

トンネルの出口にその駅はある

小幌駅を散策

小幌駅は周囲を山に囲まれた谷間の,トンネルとトンネルの間のごくわずかな明かり区間にある駅だ。列車を降りると,乗っていた列車はすぐに次のトンネルへ滑り込んで行った。周りを見渡さなくとも視界にあるわずかな土地だけが小幌駅のすべてであり,山肌が迫ることによる圧迫感もある。

小幌駅での客扱いを終えて次のトンネルに入る普通列車478D

小幌駅の周囲を散策してみる。駅自体は1両ほどしか止まれない長さの簡易なホームが上り線・下り線にそれぞれ設置されている程度で,駅周辺の建物は保線小屋,物置,バイオトイレがあるのみだ。他に建物の土台部分だけがあるなど過去の営みを感じられるものもあるが,生い茂る雑草に隠れて全体像はよくわからない。

小幌駅のパノラマ写真

小幌駅周辺の建物のすべて(中央・保線小屋/左・トイレと物置)

駅から海岸方向に歩いていくと「岩屋観音」があるが,今回は訪問時間が40分であることや夏場で雑草が生い茂る中で装備が不足していることもあるので行かず。駅のホームでドライブ途中に長万部で買った「かにめし」を食べて過ごす。

駅名標

室蘭本線は北海道と本州を結ぶ大動脈である。複線非電化の当線には特急列車や貨物列車が多数走っている。小幌駅滞在中のわずか40分の間に特急列車が上下各1本,貨物列車が下り1本通過した。列車自体はそれなりに通過するので意外と飽きないが,前後をトンネルに挟まれているうえホームはかなり狭く,特急はかなりのスピードで通過するので危ない。列車見物は慎重にしたいところだ。

小幌駅を通過する特急「北斗」

ほかの人が映り込んでいる写真もあるように,この小幌駅もにはこの日 478D で下車した人が私たちを含めて十数人いて,ひとつ前の礼文駅よりも多くの人が下車していた。狭い空間にそれなりに人がいるので,秘境感は薄いが心細さもない

時刻通りに 481D がやってきた

時刻通り,帰りの東室蘭行き普通列車 481D が滑り込んできた。この日,行きの 478D で小幌を降りた私たちを含む十数人は揃って 481D に乗り込んだ。

証明書

481D で豊浦へ戻り,豊浦駅からクルマで5分ほどにある温泉施設「天然豊浦温泉しおさい」へ。小幌駅駅名標と自撮りをして,こちらの施設の受付で写真を見せると,秘境到達証明書をもらうことができる。

秘境到達証明書

証明書の No. は3000番台。道の駅などでも証明書をもらうことができるので単純な連番では無さそうだが,それなりに多くの人が証明書を受け取っているようだ。

ashizin.hatenablog.com

鉄道ブログを見るならこちらをクリック▼

今年の夏休みはクルマで東京から日本最北端の北海道・宗谷岬まで。とにかく北に向かって走るというのはマイカーで一度はやってみたいことであったし,先日乗った「花たびそうや」でレンタカーを借りて稚内観光をしていたとき,マイカーで宗谷岬を目指したいという想い(?)がふつふつと湧いてきたのもあった。まだ余裕がある身のうちにやっておこうと,今年の夏にさっそく実行した。

ashizin.hatenablog.com

北海道へは飛行機か鉄道で行ったことはあるものの,マイカーでは初めて。東京・日本橋道路元標をスタート地点としてひたすら北上。東北自動車道をひた走り,まずは青森まで。その後,津軽海峡を渡り,道内で観光しつつも4日間かけてついに宗谷岬へたどり着いた。

イカーで日本橋から宗谷岬へ(走行距離は約1800km)

津軽海峡フェリー 大間→函館 大函丸

津軽海峡にはクルマが走れる橋もトンネルもないので,フェリーを使わなければならない。今回はなるべく自分がハンドルを握る区間を長くしたかったので,**大間〜函館間の津軽海峡フェリー**を利用した。本州〜北海道間のフェリーの中ではもっとも運航距離が短い路線だ。国道279号の海上区間にも指定されている。

青森を朝に出発して恐山などを観光しつつ,下北半島の最北部に位置する大間に到着したのは夕方間際。最繁忙期にのみ運航している11便に乗船するべく,フェリーターミナルの自動券売機でチェックインをして,予約しておいた乗船券を発券する。乗船券は JR の常備軟券の特急券くらいのサイズ。車両航送運賃と合算されていて,私のクルマのナンバーが記載されているのが好ましい(画像ではボカシをかけてあります)。

津軽海峡フェリー 大間→函館 乗船券

乗船時は自分でクルマを運転して車両甲板に乗り込むが,その際にきっぷを係員に提示すると係員は QR コードをスキャンして改札処理を行っていた。きっぷ自体は半券をもぎ取ることもできる様式だが,無傷で手元に残った。QR コードで処理するきっぷの普及は,紙きっぷオタにとっても悪くない話かもしれない。

大間~函館航路に就航する大函丸

乗船するのは「大函丸」。船名はちょっと古めかしいが,2013年就航の比較的新しい船舶である。

船内の設備は大半が雑魚寝のスタンダードで,そのほか鉄道の普通席にあたるカジュアルシートと,グリーン席にあたるファーストシート*1があるが,ドライブで座りっぱなしなので,雑魚寝できるスタンダードを利用した。

大函丸のスタンダード席

この日は折しも日向灘で大きめの地震があり,震源に近い沿岸には津波注意報なども発令されていた。津軽海峡には全く影響は無かったものの,船内で地震津波のニュースを見ながら乗船することになり,少し沈んだ気持ちになりながら北海道へ向かった。

大函丸から北海道を見る。中央右の陸地は函館山

*1:それぞれ鉄道のそれとそっくりなシートが使われていた

特急「スペーシアX」で日光旅行へ行った帰りは,JR直通の特急「スペーシア日光」で東京へ。

ashizin.hatenablog.com

特急「日光」「**スペーシア日光**」は東武鉄道JR東日本の2社をまたがって運行される特急列車で,JR新宿~東武日光駅間で運転されている。JR 車の253系(特急「日光」)と東武鉄道100系スペーシア(特急「スペーシア日光」)のいずれかで運転されているが,居住性のうえでは圧倒的にスペーシアのほうに軍配があがる。

特急「スペーシア日光」 新宿にて

スペーシアで運転される特急「スペーシア日光」にはグリーン個室がある。今回はこのグリーン個室を利用してみた。

6号車がグリーン個室となる/通路のイメージ

もともとスペーシアには定員4名のコンパートメントルームの設定があり,特急「けごん」「きぬ」(浅草~東武日光鬼怒川温泉)のコンパートメントルームとして利用されてきた。同じ車両を使うJR線直通にあたってJR側の料金制度と不整合がないように,JR直通の特急「スペーシア日光」では(同じ設備ながら)定員4名のグリーン個室として運用されている。

特急「スペーシア日光」のグリーン個室(コンパートメントルーム)内部

グリーン個室内から出入口のほうを見る

スペーシアは1990年から製造が始まった車両で,バブリーな雰囲気を色濃く残す。個室内にはカーペットが敷かれ,重役の応接室のような重厚感がある座席と,大理石のテーブルを備える。出入口上部にはイマドキ見られないデザインの間接照明が光る。通路寄り座席の手すり部分下部にはマガジンラックとゴミ箱も備えるが,雑誌の提供は無くほとんど使われていないようで,引き出すにもちょっと力が必要だった。

特急「スペーシア日光」では「スペーシアX」のような売店やカフェは営業していない。飲み物やおやつは事前に購入して持ち込んだ。

今回は定員4名の個室を2人で利用するため贅沢だったが,靴を脱いでリラックスしたり,座席で横になって少し寝たりと個室ならではのゆったりとした乗車となった。特に真夏の日光を観光したあとで体力を消耗していたので,他人を気にせずリラックスできる個室利用は正解だった。

特急「スペーシア日光特急券・グリーン券(個)

列車で個室というのは基本的に料金が高い。特に「スペーシア日光」の場合はJR線と東武線をまたがって利用することが多いが,その場合は2社ぶんの料金がかかり,個室料金だけで6300円もかかる(別途特急料金)。今回の場合は2人で9,440円(1人あたり4,720円)となるが,前回乗車した「スペーシアX」コックピットラウンジの2倍近くの料金が発生している。

筆者は神奈川県民なので新宿発着というのは魅力的だが,個室を利用するのであれば浅草発着の「スペーシアX」でコンパートメントを使うほうが満足度もコスパも高いと思う。「スペーシア日光」のグリーン個室も悪い設備では決してないのだが……。

鉄道ブログを見るならこちらをクリック▼

ashizin.hatenablog.com

昨年から運行開始した東武特急「**スペーシアX」に乗車して日光へ行ってきた。今回利用するのはコックピットラウンジ**である。

東武特急「スペーシアX」

6両編成の特急「スペーシアX」のうち,東武日光方の1両がコックピットラウンジとなっている。コックピットラウンジ席は1人がけ,2人がけ,4人がけでソファとテーブルが用意された指定席だ。

席はソファーのボックスごとの発売となっていて相席となることは無い。なお,カフェに近い席は普通席利用者のカフェ利用があると若干騒がしくなるので,運転席寄りの席がおすすめだ。

スペーシアX」車内のコックピットラウンジ

また,インテリアは鹿沼組子の意匠である六角形の窓や,日光東照宮の柱に施される「グリ紋」をあしらった照明などが目を引き,日光旅行への期待が高まる。

コックピットラウンジ席は運転席そのものや運転席とラウンジ席との仕切りがガラス張りとなっていて,かなり開放感もある。ゆったりとしたソファも相まって,リラックスできる空間が演出されている。

ガラス張りで開放的な運転席

コックピットラウンジ席の利用者は同じ車両にあるカフェがいつでも利用できる*1。列車が発車後,係員からカフェメニューと CAFE Ticket を渡されるので,カフェのセッティングが完了したあと*2 CAFE Ticket を持参してカフェカウンターへ。

今回はビールサーバーから注がれるクラフトビールやマスのスモークなどをいただいた。カフェで提供されるビールやおつまみも東武線沿線にまつわるフードが多く準備され(有料),日光旅行に対するボルテージも上昇する。

ビールを飲みつつ会話に弾んでいると,いつのまにか栃木県まで入っていて,東武日光駅まではあっという間だった。浅草から日光まで移動はしたが,日光に着いた際に移動したときのくたびれた感じとかが全く無かった。コックピットラウンジは“時を超えるラウンジ”というコンセプトでデザインされているそうで,まさにそのコンセプト通りの乗車体験であった。

乗車雑感

特急「スペーシアX」のコックピットラウンジで過ごした時間は,飛行機に乗る前のラウンジ席での過ごし方に似ている。オトナのためのちょっとラグジュアリーでリラックスした空間で,多くの人にとって退屈な移動時間が楽しい時間に変わる。

毎日何本も運行される特急でこのような列車に乗った経験はあまり無く,東武はすごい列車を開発したなと感心した。

人気列車のうえに座席数が少ないためきっぷを取ることは難しいが,1人あたりわずか500円の追加でこの空間を利用できると考えればかなり安いと考える。また機会があれば利用してみたい座席だ。

スペーシアX909号のきっぷ

スペーシアX909号 特急券・特別座席券

今回は臨時運転の「スペーシアX」909号に乗車した。号数の値がかなり大きいが,浅草駅の出発時刻9:09からの発想のようだ*3。ボックスごとの発売のため,2人席の2人利用だがきっぷは1枚となっている。

鉄道ブログを見るならこちらをクリック▼

新宿→白馬間で臨時夜行特急「アルプス」が運行開始した。2024年夏の週末の一部(新宿発7月12日,8月9日,9月13日・20日)で運行される。

列車名 新宿 松本 信濃大町 白馬 備考
特急アルプス 23:58 5:10 5:53 6:22 *1

特急「アルプス」時刻表

今回は7月12日発の特急「アルプス」に乗車してきたのでレポート。

特急「アルプス」新宿→白馬

せっかく特急「アルプス」に乗って白馬まで行くので,北アルプスに登山することにして,そのアクセスとして利用することにする。日帰り+αの登山装備を詰め込んだザックに登山靴の「いかにも登山者」スタイルで,湘南新宿ラインに乗って新宿駅へ。

新宿駅に到着間際,車掌からのアナウンスで「臨時特急アルプス号にお乗り換えのお客様は7番線から23時58分発です」の肉声放送があり,少し気分は高ぶる。

賑やかな新宿駅7番線

特急「アルプス」

「アルプス」が出発する新宿駅7番線は鉄道オタクが詰めかけていて,かなりのお祭り騒ぎ。”正統派”座席夜行列車の運転は首都圏のJR線では2020年に運行終了した大垣行きの快速「ムーンライトながら」以来,中央線方面では2018年に運行終了した快速「ムーンライト信州」以来であり,オタクにとっては待ちわびた「座席夜行列車の復活」であった。

特急「アルプス」は特急「踊り子」で使われるE257系9両編成で運転。この車両は別のカラーでかつて中央線特急「あずさ」で運転されていたのであまり新鮮な感じはしない。

特急「アルプス」車内の様子*2

列車に乗ってみると,車内はほぼオタクで登山者は1車両に1人~2人くらいかというくらい少数派。初モノの列車なので,オタクばかりになるのは仕方ない。

伊豆特急らしい水色モケットの座席に着座すると,目に入るのは「伊豆navi」のパンフレット。これから日本海側のヤマに向かうのに,太平洋側の海の観光アプリの宣伝をされても全く興味が無い。素人目にも「踊り子」の車両をそのまま持ってきたことがバレバレである。

窓側座席にはコンセントを備え,モバイル機器の充電は安心だ。とはいえ昼行特急と同じ車両なので,リクライニングはわずか。熟睡するためにはネックピローを持参してくるなど一工夫必要だ。

減灯した特急「アルプス」の車内

きらびやかな新宿駅を定刻で発車し,中央線を走る。運行頻度の多い中央線快速電車の合間を走るので,立川あたりまではかなりのノロノロ運転。八王子を出ると松本まで客扱いは無く*3ここで減灯となるが,点灯する照明が 1/3 程度になっただけで真っ暗ではない。持参したアイマスクと耳栓,ネックピローを装備して就寝した。


起きるとすでに日は高く,間もなく松本駅。松本では7分停車するが,この日はこれから登山の予定だから座席で丸まって二度寝する。

白馬駅に到着

次に起きた頃には大糸線を走行中で間もなく白馬。朝靄かかる車窓を眺めつつ,ネックピローなどを片付け,軽く食事をしたりお手洗いを済ませる。夜行列車は寝るときはつらいが,朝起きたときに他の人に必要以上に配慮しなくて済むので好きだ。数分の遅れをもって白馬駅に6時半に到着。5時間半程度は睡眠時間が確保できた。

北アルプス唐松岳

唐松岳

白馬駅を降り立ったあとはタクシーとスキー場のリフトを乗り継いで,白馬八方尾根スキー場から唐松岳へ入山。頂上では絶景の北アルプスの山々を眺められ,とても素晴らしい登山となった。

yamap.com

乗車後記

特急「アルプス」特急券

特急「アルプス」は前述したとおり中央線では久しぶりの夜行列車であった。9両編成の列車はほぼ満席で,順調な滑り出しだ。「アルプス」と接続する形で,接続する交通機関も増発や増結の対応がとられ,周遊性が高められる施策がとられていた。

今夏の運行が盛況なら,冬以降の繁忙期の運転も期待できる。JR他社に跨がらない区間であればJR西日本の「WEST EXPRESS 銀河」など夜行列車の運行実績は多く,JR東日本においても「夜行列車の復権」となる布石となるかもしれない。

快速「ムーンライト信州」車内(2016年夏)

一方で,(建前上は)メイン客となるであろう登山などレジャー客はまだわずかだ。レジャー客向けではアルピコ交通などが新宿から上高地や栂池に直行する夜行バスを運行していて,超繁忙期でなければ運賃料金や座席設備,登山口へのアクセスの面で不利な特急「アルプス」を好んで使うレジャー客は少ないだろう。急行列車として料金をおさえたり,夜行利用でも快適な設備にするなど,レジャー客が「利用したい」と思う列車でなければオタクに飽きられた時点でこの列車の運行は終了だ。

快速「ムーンライト信州」は最末期でなければ登山客利用がそれなりにあり,網棚にザックが連なる風景が見られた。いま,2024年問題により鉄道は追い風になっている。特急「アルプス」も鉄道オタクだけでなく,レジャー客など様々なスタイルの乗客に利用できる列車に進化していってほしい。

鉄道ブログを見るならこちらをクリック▼

過去記事へのリンク▼

ashizin.hatenablog.com

ashizin.hatenablog.com

ashizin.hatenablog.com