東京都世田谷区寺院散策 九品仏浄真寺の奥深い世界(2) (original) (raw)
世田谷区の九品仏浄真寺(くほんぶつじょうしんじ)の続きです。東急大井町線の九品仏駅から直ぐの場所にありますが、総門、閻魔堂、開山堂などを見て、仁王門に入りいよいよ本堂です。本堂の北側を通り正面に向います。
本堂の側面。
本堂の正面に行くと、九品仏浄真寺の誇るイチョウの木です。東京都の天然記念物に指定されています。ギンナンの実がたくさん落ちています。
傍に大正・昭和期の歌人、植松壽樹という方の歌碑です。
本堂前の「地蔵菩薩半跏像」です。右手に錫杖、左手に如意宝珠を持っています。
そして、仏足石もあります。
いよいよ本堂です。
本堂の扁額は「龍護殿」ですが、本堂の名称になっています。手前に大きな常香炉です。
龍護殿は、元禄11年(1698)上棟の大堂宇で、いつも開放されています。靴を脱いで上がりますが、写真撮影も許可されているようです。
御本尊の釈迦如来坐像で像高約3mです。
堂内には御本尊を中央に、数々の仏像と御尊像が祀られています。
御本尊の左側ですが、中でも珍しい仏像は、阿弥陀仏信仰を象徴する「五劫思惟像」です。世田谷区の有形文化財。
長い瞑想の果てに髪がこのように伸びたのでしょうか、異様なボリュームの螺髪が印象的です。
なぜこのような髪になったのかは、阿弥陀仏が法蔵菩薩だったころ、五劫という長い年月全ての衆生を救いとろうと、思惟し続けたためと云われています。
浄土宗の宗祖法然上人像。
高祖善導大師像。
賓頭盧(びんずる)尊像。
そして、御本尊の右側には、開山した木造珂碩上人立像、阿弥陀像。
本堂の裏に回ります。仏画が多数飾られています。
お寺のゆるキャラ「きゅっぽん」もいます。
そして、本堂から参道の方を見ると「枯山水」の見事な庭園です。
一通り本堂を拝観し、反対側にある九品仏の安置している堂宇、三仏堂へ行きます。本堂から三仏堂へ向かう所に1対の大きなシロサギのオブジェがあります。
さぎ草との関係は、浄真寺が創建する以前にあった奥沢城の時代、城主の娘常盤姫の悲話に基づきます。
詳細は、浄真寺公式サイト「さぎ草物語」を御覧下さい。
三仏堂は、三つの堂宇が並んでいます。本堂の向かい側に上品堂があります。
上品堂を中央に、右に中品堂、左に下品堂の3仏堂があります。各仏堂に阿弥陀仏像3体ずつ安置されております。九品仏です。
これらの九品仏が、それぞれ異なった9通りの「印相」を示しています。これは『観無量寿経』に説く九品往生の思想に基づくものです。極楽往生の仕方には、信仰の篤い者から極悪人まで9通りの段階があるとされています。
九品は、浄土教で極楽往生の際の九つの階位を表しています。人の往生には上品・中品・下品があり、さらにそれぞれの下位に上生・中生・下生の合計9ランクの往生があるという考え方です。九品仏はそれを表した9体の阿弥陀仏のことです。
上品堂(じょうぼんどう)です。
上品堂の所に2014~2034年の浄真寺「九品仏大修繕事業」の説明板です。平成、令和20年にわたる大勧進です。
上品堂の阿弥陀仏像(上品下生、上品上生、上品中生)。
中品堂の阿弥陀仏。
下品堂の阿弥陀仏。下品下生仏像が修繕中。
九品仏全ての印相が違います。昭和38年(1963)に、九体の阿弥陀佛像と釈迦牟尼佛像の計10体が東京都重要文化財に指定されています。
上品堂と中品堂の間に、阿育(あしょか)王塔があります。アショカ王は、紀元前3世紀のインドの王で、仏教を国教とし、インド各地に今も残る釈尊の遺跡に多くの石柱を建立しました。
もう一つぜひ見ておきたい石碑があります。「河口慧海師碑」です。
河口慧海という人物は、仏教学者、探検家であり、サンスクリット(梵語)の原典とチベット語訳の仏典入手を決意して、日本人として初めてヒマラヤを越え、当時鎖国のチベットへの入国を果たした人物です。
仏典の原典を求めて、ヒンドゥークシ山脈を越えてインドに至った玄奘(三蔵法師)と、共通する大変な人物なのです。慧海の13回忌に際して門弟・親戚等が建立しました。
最後に御朱印です。本堂内に授与所がありました。若い僧侶に書いて頂きました。
五劫思惟の御朱印。
おわりに
九品仏浄真寺は、参道から総門、閻魔堂、仁王門、鐘楼堂、開山堂、本堂などいわゆる七堂伽藍の完備した僧房として、都内では数少ない古刹だと思います。
参道から総門までも長いのですが、総門を潜ると、境内の広さを実感します。そして、仁王門まで閻魔堂、開山堂、観音堂など見所満載です。仁王門を通り抜けると視界が開けて、世界が変わります。境内は多くの木々、花々に囲まれ、四季を意識して上手く配置しています。
本堂の龍護殿に入ると正面に像高3m近くの巨大な丈六仏に圧倒されます。本当に直ぐ傍まで行って、御本尊の釈迦如来坐像に参拝することが出来ます。
御本尊の横に、珍しい五劫思惟阿弥陀仏が異彩を放っています。長き思惟の果てに髪が伸びてしまったのか、顔が童顔のままであることが、妙にバランスが取れていて面白い。
このように直ぐ傍で拝観出来る寺院はあまり無いので有難かったです。
九品仏を見て感じることです。死後の世界の極楽へ行くにも、それまでの努力や心がけによって、「上品上生」から「下品下生」までの9段階の往生の仕方があることで、自分の生き方を考えることになりました。
そして、前回見逃していたのが、三重石塔の「阿育王塔」と「河口慧海師碑」でした。貴重なものが見ることが出来て良かったです。
この九品仏浄真寺は、境内3万6千坪あるため未だ見ていない石仏、庚申塔などがあると思われます。さぎ草の季節などにまた訪れて、四季折々の景色をゆっくり散策したいと思います。有難うございました。
以上