「心の哲学」を学びたい【おすすめ本・入門書はこれ】心脳問題・心身問題の読書記録 (original) (raw)

記事の内容

この記事では、「心の哲学」を学ぶための本を紹介します。

全て私が実際に読んだ本です。

この記事を開いているみなさんにとって、心の哲学とは何か、という説明は不要でしょう。

・物質世界において、心や意識というものをどう位置付けるか。

・心や意識のすべてを、物質科学だけで説明できるのか。

今後は、一冊一冊について、そのエッセンスをまとめていきたいと思います。引き続き、この記事を更新していきます。

それでは、目次をどうぞ。

おすすめ本を他にもまとめています

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おすすめ本紹介

心に関する学問はとても幅広い。

・脳神経科学

・心理学(心理学も幅広い)

・認知科学 人工知能

・進化心理学 進化生物学

・精神分析

多くのジャンルがありすぎて、これらの間の関係性を記述するだけでも一苦労だろう。

そこで、今回は、主に哲学に属する議論に焦点を当てたい。

ズバリ、心の哲学と呼ばれるジャンルである。

一言でいうなら、

物質の世界である脳と、そうではない世界にある心の関係を整合的に説明しよう、

という試みのこと。

それでは、本を紹介しよう。

読書記録

脳がわかれば心がわかるか 山本貴光、吉川浩満

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1冊目として紹介したいのはこの本。

心の哲学への案内として最適。

心と脳の関係において、私たちが陥りがちな誤解を整理してくれる。その上で、心の哲学の軸を分かりやすく教えてくれる。本書には、参考文献が多数紹介されている。よって、学習面でもとても親切。

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心の哲学入門 金杉武司

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心の哲学の教科書的な入門書。

どんな考え方があるのか、中立的に紹介してくれる。

文章や論理構成も、とても読みやすい一冊。

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ぼくらが原子の集まりなら、なぜ痛みや悲しみを感じるのだろう

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心脳問題を解決しようという野心作。

問題設定だけで終わるのではなく、きちんと解決方法まで示されている。

全体的に分かりやすく書かれている。哲学書のなかでは、読みやすい方。

「本来的表象」という概念で、意識の謎を解く。

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哲学入門 戸田山和久

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恐怖の哲学入門 戸田山和久

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分析哲学講義 青山拓央

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本書は、基本的には言語哲学、分析哲学に関する本。

しかし、一部で心の哲学に関する記述がある。

特に、心の哲学の大御所であるサールへの返答の節は必読。

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クオリアと人工意識 茂木健一郎

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ジャンル分けが難しい本。

神経科学、人工知能の話題が多い。

しかし、クオリアに対する茂木の主張はやや哲学よりだと思う。主張の根拠そのものは、科学的というよりも哲学に近い。

ぜひ読んでほしい一冊。

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「心の哲学」批判序説 佐藤義之

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心と他者 野矢茂樹

ウィトゲンシュタインの規則のパラドクス、アスペクト論。そこで浮かび上がる、他者という規範。これらが心の哲学にどう接続されるのか。

心という難問 野矢茂樹

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自由意志の向こう側 決定論をめぐる哲学史 木島泰三

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人間は遺伝子に操られているのか?
宇宙開闢の時点で、その後の出来事は一通りに決まっていたか?
運命はあるのか?
人間と機械は何が違うのか?
こうした疑問はすべて人間の自由意志の問題であり、
デモクリトスからスピノザ、デネットまで、
決定論の哲学史に刻まれている。
ダーウィンや神経科学など自然科学的観点も検討しつつ、
決定論のこれまでとこれからを考える。

未来は決まっており、自分の意志など存在しない 心理学的決定論

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あなたが本書を手にすることは、138億年前から決まっていた。――心理学、生理学、脳科学、量子論、人工知能、仏教、哲学、アート、文学、サブカルを横断し、世界の秘密に挑む。気鋭の心理学者による“トンデモ本”。

ユニークな一冊。自由意志論の哲学とともに、ぜひ読んでみてほしい。

魂と体、脳 計算機とドゥルーズで考える心身問題 西川アサキ

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ライプニッツのモナドロジー、ベルグソン『物質と記憶』、ドゥルーズ『シネマ』『襞』……「私の発生」をめぐる思考をシミュレーションする! 本当に存在するものは何だろうか? 私の「今・ここでの体験」だろうか? それとも、他人からみた「物質としての脳」だろうか? もちろん、両方だろう。ところが、そう言った瞬間、「私の」体験と「他人からみた」脳を結ぶメカニズムが知りたくなる──ライプニッツのモナドロジー、ドゥルーズの思考を、コンピュータ・シミュレーションで展開。心身問題への新たなアプローチがはじまる!

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現代思想2020年6月号 特集=汎心論――21世紀の心の哲学

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天然知能 郡司ぺギオ幸夫

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心の存在様式。

外側から絶えず何かが侵入してくる。

機械とは違う、生物としての知能のあり方。

さまざまな気づきが得られる独創的な一冊。

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かつてそのゲームの世界に住んでいたという記憶はどこから来るのか 郡司ぺギオ幸夫

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「人間の意識はすべて計算可能である」――そんなわけない。
遭遇したことのない、予想できない、未知なるものにつねに開かれた、際限なき世界に生きるということはどういうことか。ダンス、メタバース、クイズ番組、ホラー映画……身近なクリエイティビティの生まれる場所に宿る知にアプローチする、「天然知能」の新展開。

想定もしていなかったような「外部」がやってくる受動性。

その受動性の構造を示す。

その構造こそ、「肯定的アンチノミーと否定的アンチノミー」の共立である。

まだまだ哲学的な議論が多いが、部分的には数理と接続されている。とても刺激的。

対象と表象。

量子論的認知科学を導く天然知能。

・関連論文

www.sciencedirect.com

トラウマ構造(traumatic structure)は、この論文で提案されている概念で、自然知能(natural-born intelligence, NBI)における認知や知覚のプロセスを説明するために用いられています。

1. 二項対立の共存:
トラウマ構造は、外部の対象(object)と脳内のイメージ(image)という二項対立の間に生じます。この二項対立は、同時に正の二項対立(positive antinomy)と負の二項対立(negative antinomy)を含んでいます。

2. 正の二項対立(positive antinomy):
対象とイメージが直接的に対応している状態を指します。例えば、目の前にある猫(対象)を「猫」として認識する(イメージ)ような場合です。

3. 負の二項対立(negative antinomy):
対象とイメージが直接対応していない状態を指します。例えば、目の前の猫が「典型的な猫ではない」と感じるような場合です。この場合、対象は「猫以外の何か」としてイメージされ、同時に「典型的な猫」のイメージは目の前の対象以外のものと結びつきます。

4. 空間的分化:
正の二項対立と負の二項対立が同時に存在するため、これらは空間的に分化されます。論文では、これを二項関係の中で対角関係(diagonal relation)とその周囲の背景(background)として表現しています。

5. コンテキスト依存性:
各知覚や認知は、この対角関係の中で区別され、これがコンテキストとして機能します。

6. 創造性の源:
トラウマ構造は、既知の枠組みの外部から何かを呼び起こす装置として機能し、これが創造性の源となると考えられています。

7. 量子論理との関連:
このトラウマ構造が、最終的に直交モジュラー格子(orthomodular lattice)として表現できることが示されており、これが量子論理(quantum logic)と同等であるとされています。

このトラウマ構造の概念は、日常的な認知プロセスの中に量子論理的な構造が内在していることを示唆し、マクロな現象における量子理論の適用可能性に新しい視点を提供しています。

・「正の二項対立」と「負の二項対立」が共立する理由

・トラウマ構造が外部を読み込むことができる理由

1. 「正の二項対立」と「負の二項対立」が共立する理由:

「正の二項対立」と「負の二項対立」が共立する理由は、人間の認知プロセスの複雑性と曖昧性にあります。具体的には:

a) 同時性:
人間の認知は一つの対象に対して複数の解釈や認識を同時に持つことができます。例えば、目の前の動物を「猫である」と認識すると同時に「典型的な猫ではない」と感じることができます。

b) 文脈依存性:
認知は常に特定の文脈の中で行われます。ある文脈では対象とイメージが直接対応し(正の二項対立)、別の文脈では対応しない(負の二項対立)ことがあります。

c) 認知の多層性:
認知プロセスには意識的なレベルと無意識的なレベルがあり、これらが異なる解釈を生み出すことがあります。

d) 不確実性の存在:
現実世界の対象は常に完全に定義されているわけではなく、曖昧さや不確実性を含んでいます。この不確実性が正と負の二項対立を同時に生み出す要因となります。

2. トラウマ構造が外部を読み込むことができる理由:

トラウマ構造が外部を読み込むことができる理由は、以下のように説明できます:

a) 開放性:
トラウマ構造は、既知の枠組み(正の二項対立)と未知の可能性(負の二項対立)を同時に含んでいるため、新しい情報や解釈に対して開かれています。

b) 非局所性:
トラウマ構造は、直接的な対応(局所的な関係)だけでなく、間接的な関係(非局所的な関係)も含んでいます。これにより、直接的には関連していない情報も取り込むことができます。

c) 動的な再構成:
正と負の二項対立の共存により、認知構造が常に動的に再構成される可能性があります。これにより、新しい情報や視点を柔軟に取り入れることができます。

d) 背景の存在:
トラウマ構造には、直接的な対応関係(対角関係)だけでなく、それを取り巻く背景も含まれています。この背景が、既知の枠組みの外部からの情報を受け入れる余地を提供しています。

e) 量子的な重ね合わせ状態:
トラウマ構造が量子論理と類似した構造を持つことから、複数の可能性が重ね合わさった状態を表現できます。これにより、従来の二値論理では捉えきれない曖昧な情報や矛盾した情報も取り込むことができます。

これらの特性により、トラウマ構造は既知の枠組みを超えた外部の情報を読み込み、処理することができると考えられています。

心はすべて数学である 津田一郎

https://amzn.to/3QgHP9j

無限、カオス、ゲーデルの不完全性定理。「不可能問題」に取り組む古今の数学者らの純粋な姿が、著者に確信的インスピレーションを与えた。「数学は心だ」。共通難問を追究する人類の数学的営みが脳を発達させ、記憶、思考・推論、感覚・知覚といった心の働きを生む。諸研究を用いて語られる「心」と「脳」の関係は、固いアタマに風穴を開けてくれる。世界最先端の数学者による思索の書。

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<私>をめぐる対決 独在性を哲学する 永井均 森岡正博

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日本の哲学者と言ったら、永井均だろう。

<私>の独在性。こんなにも言葉で説明しにくい概念があるのだろうか。

彼のメッセージのユニークさと理解されなさ。彼の哲学に触れることは、哲学の面白さを体験できるいい例になると思う。

本書はそのいい入門である。

対話のため、誤解が現れる。その修正により、より確からしい理解に近づけるはず。

理解するアプローチそのものが勉強になる一冊。

永井均の哲学書はいろいろある。もっと読みたい。

転校生とブラックジャック

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名著。哲学好きなら、一度は読んでほしい。

本以外で、気になる研究やプロジェクト

What are we talking about? Clarifying the fuzzy concept of representation in neuroscience and beyond | The Transmitter: Neuroscience News and Perspectives

チャーマーズによる大規模言語モデルの哲学的考察。読んでおきたい。

arxiv.org

タイトル: 大規模言語モデルは意識を持ちうるか?
著者: David J. Chalmers
発表年: 2022年

1. 研究の背景と目的

- 大規模言語モデル(LLM)の急速な発展に伴い、AIの意識の可能性が注目されている。
- 本研究は、現在および将来のLLMが意識を持つ可能性を哲学的・科学的に検討することを目的としている。
- 意識の定義や証拠、LLMの意識の可能性に関する賛成・反対の議論を分析し、今後の研究課題を提示する。

2. 主な論点と分析

- 意識の定義:主観的体験であり、「何かを感じている状態」と定義。
- LLMの意識を支持する論拠:
- 自己報告(ただし不安定)
- 一般的知能の兆候
- 対話能力の高さ
- LLMの意識に反対する論拠:
- 生物学的基盤の欠如
- 感覚・身体性の欠如
- 世界モデル・自己モデルの不十分さ
- 再帰的処理の欠如
- グローバルワークスペースの欠如
- 統一された主体性の欠如

3. 結論と示唆

- 現在のLLMが意識を持つ可能性は低い(10%未満)が、完全に否定はできない。
- 将来のLLM+(拡張された大規模言語モデル)が10年以内に意識を持つ可能性は無視できない(25%以上)。
- LLMの意識に関する研究は、AIの発展において重要な課題となる。

4. 今後の課題

- 意識のベンチマークの開発
- 意識の科学的・哲学的理論の発展
- LLMの解釈可能性の向上
- 意識を持つAIの倫理的問題の検討
- 豊かな知覚-言語-行動モデルの開発
- 堅牢な世界モデルと自己モデルを持つLLM+の開発
- 真の記憶と再帰性を持つLLM+の開発
- グローバルワークスペースを持つLLM+の開発
- 統一された主体モデルとしてのLLM+の開発
- 学習されていない意識の特徴を記述できるLLM+の開発
- マウスレベルの能力を持つLLM+の開発

類似ジャンルの紹介記事はこちら

今回紹介できなかったジャンルに、仏教哲学がある。仏教も、人の心について深い考察に溢れている。

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本記事の内容も、定期的にアップデートしていく予定である。

あらゆるテーマのガイドラインはこちら。

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