青井タイル店 (original) (raw)

時折TwitterのTLに流れてくる八奈見杏菜さんが動きもお声もあまりに可愛く、あまり深入りすると恋をしてしまうかもしれない。そんな恐れから、テレビアニメ負けヒロインが多すぎる!の視聴を避けてきた。が、いざ友人と会話していて「切り抜き動画見たけど八奈見杏菜さんってマジでかわいーよな!」と口にしてみると、あまりにも自分のスタンスがダサすぎる。そういうわけで、まずはアニメ本編を見てみることにした。

端的に、傑作だ。私は恋を知り、青春を知った。作画よし、演技よし、脚本よし。全てが完璧なアニメ。呆然とするうちに、12話まで見切ってしまった。その間、八奈見杏菜さんが可愛すぎるだろという気持ちは一切ぶれなかった。もちろん、八奈見杏菜さん以外にも可愛らしいキャラクターはたくさん出てくる。が、八奈見杏菜さんは圧倒的に可愛い。本当に可愛い。

12話を見た後、私はそのままAmazonに向かい、既刊を全て買った。

負けヒロインが多すぎる! (ガガガ文庫)

八奈見杏菜さん可愛すぎるだろ。

アニメの出来が圧倒的に良い。が、原作もきっちり出来がいい。コロコロとコミカルに動く表情や声優さんの演技があんまりにも良いので、逆に原作を読んだら肩透かしを食うのでは?と心配していた。が、杞憂だった。原作もバッチリ面白いし、キャラクターはイキイキと動き回る。

たとえば八奈見杏菜さんを例にとってもこんな感じ。

負けヒロイン原作の八奈見さん、たとえば「いっぱい食べる君が好き」的な可愛さを描くにしても、「まけんグミ(あのジャンケンの手がついてるグミね)をジャンケンの方から食べお菓子のコンセプトを台無しにしている」みたいなズボラ描写も織り交ぜられていて、あまり記号的でない滋味深い可愛さがある

— アオタイ (@aoitile) 2024年10月7日

いっぱい食べる描写をするにしたって、ディテールがある。そのディテールがキャラクターの可愛さを存分に伝えてくれる。八奈見杏菜さん…………好きだ…………………。

可愛さはわかった。では話はどうなのか。これもまた出来がいい。正直なところ、一巻が出た際、この作品について私はあまりいい印象を抱いていなかった。「負けヒロイン」という強いミームで、キャラクターを安易に処理していそうなイメージを勝手ながら抱いていたのだ。

実際の内容は印象の真逆と言っても差し支えないだろう。ヒロインレースで負けても、人生が続く。ヒロインレースに還元できない青春がある。スパッと割り切れないけど、一対一であったりコミュニティであったりのそこだけにしかない関係を、丁寧に丁寧に積み重ね続けていこうじゃないか。そんな青春への慈しみに溢れた作品なのだ。あと八奈見杏菜さんが本当に可愛い。

主人公の温水君も可愛い。彼は応援したくなる。温水君は八奈見杏菜さんのこと好きなのかな…………。

以下、最新刊まで読んだ所感

自分に寄せた所感

妄想の中でファンタジー世界を構築したり、なろう原作コミカライズでファンタジーを楽しんだりしているものの、実際のところ伝説とカフェラテを除けば、ファンタジー小説を最近とんと読んでいない。特に非ライトノベルレーベルの国内ファンタジーだと本当にしばらく読んでいない。中学の図書室で借りた空色勾玉とかだろうか。

読んだ本のメモ:疲れ果てたこころは温かなカフェしか見えない トラヴィス・バルドリー『伝説とカフェラテ 傭兵、珈琲店を開く』 - 青井タイル店

というわけで最近よく本屋で見かけてたレーエンデ国物語を読んでみることにした。

はじめに断っておくと、私はフィクション内の繊細な心理描写を楽しむ能力が、たぶんあまりない。

レーエンデ国物語

まずAmazonの商品ページに載っているあらすじ

異なる世界、聖イジョルニ帝国フェデル城。
家に縛られてきた貴族の娘・ユリアは、英雄の父と旅に出る。
呪われた地・レーエンデで出会ったのは、琥珀の瞳を持つ寡黙な射手・トリスタンだった。

空を舞う泡虫、乳白色に天へ伸びる古代樹、湖に建つ孤島城。
その数々に魅了されたユリアは、
はじめての友達、はじめての仕事、はじめての恋を経て、
やがてレーエンデ全土の争乱に巻き込まれていく。

あらすじとしてフィーチャーされているのはユリアだけれど、話の大まかな縦の線としては、ユリアの父がレーエンデと地元を結ぶ交易路を通すことにある。本書は大まかに、ユリア個人の葛藤や成長を描くパートと、ユリアの父と寡黙な射手(本編ではツッコミ役のような立ち回りを一任されているため、めちゃくちゃ喋る。むしろ作中で一番饒舌に喋る。)トリスタンが交易路を作るために頑張るパートで構成されていると言えるだろう。

レーエンデ国物語は全五巻シリーズとなり、本書はその第一作にあたる。そういうこともあってか、レーエンデが概ねどういう地域で、ファンタジー要素としてはどんなものがあるのか、と説明するこにリソースが割かれている。

主人公の話が大きく動いたり、レーエンデの設定が話に関わってくるのが最終盤に寄せられている。面白いかどうかを判断するにあたっては、続編を読む必要があるな、というのが正直なところ。天冥の標で喩えるなら、メニー・メニー・シープからパンデミックと革命要素を抜いて、フェロシアンたちがいきなり出てくるような趣がある。

ファンタジーの設定としても、現時点ではそこまでノレるものはない。私はかっこいいものが素直に好きで、かっこいいものをドンと出されれば手を叩いではしゃぐ。そういう嬉しさは本書にはなかった。

ここまで書いたことだけを読むと、ものすごく否定しているように思えるかもしれないけれど、とはいえ続きを読んだら凄く面白いのだろうという信頼感は不思議と湧いた。たぶん続きを読むと凄く面白いと思うので、続きを読もうと思います。

『奴隷会計』を読んだ流れで、そもそも僕って会計のことあんま知らないな〜と思い、気軽に読めそうな一冊を手にとる。

aoitile.hatenablog.com

『会計の世界史』だ。

会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 (日本経済新聞出版)

この本は会計の発達と目的の変化を、時代背景も交えてかなりライトな語り口で説明してくれる。あまり世界史の知識がなくても読めるだろうし、もちろん会計の知識が全くなくてもすんなり読めるだろう。

実際私はこの本を読むまで(奴隷会計で語られていた奴隷農園の会計とマネジメント技術の発展史を除けば)「複式簿記というのはものすごいブレイクスルーらしい」くらいの知識がなかったものの、今は会計が誰のために、何のために行われているのか、それがどのように時代の要請に合わせて変化してきたのか、なんとなくわかったような気分になれている。

一方、前提となる世界史の語りぶりは多少通俗的すぎるところがある。

ルネサンスに関する語り口がわかりやすいだろう。この本では「中世」を神を絶対視する「暗黒の時代」とし、そこから人間を解放しようという運動がルネサンスである、という語り口が見受けられる。こうした、「まるっきり間違っているわけではないけれど、そう断言しちゃって大丈夫なの?」と手に汗握ってしまう単純化がちょくちょく出てくる。

あと「リスク」の語源を「勇敢な船乗り」を意味する「riscare」としているけれど、私が調べた限りriscareに「勇敢な船乗り」という意味はもちろん「船乗り」という意味もない。純粋なデマが載っている。

「ところどころ怪しいし歴史の有名人だとか出来事だとかを会計に結びつける手つきが無理矢理だけど、読んでてわかりやすいし概要を掴むにはいいんじゃないかな」と思ってたけれど、この感想を書いててだんだん許しがたく思えてきた。やっぱりこの本は全然お勧めできません。これ読んで会計と歴史の流れをわかった気になってはいけない。

今度『帳簿の世界史』を読むことにする。

ガリシア」と聞いて、スペインを連想できる人がどれだけいるだろうか?

多くの日本人にとって、「最もスペイン的なもの」といえば青い空、白い雲、フラメンコ、Blasphemous(――敬虔にして残酷な神の意志、それは「奇蹟」と呼ばれた。)ではないだろうか。これらのものを求めて、少なくない日本人がスペイン南部アンダルシアを旅行していることだろう。

また、スペイン的なものとして、ガウディを連想する人もいるだろう。haruka nakamuraが継続的にNHK特番の劇伴をしていることでも知られるサグラダ・ファミリアは、カタルーニャにある。

食いしん坊ならバスクへの憧れもあるに違いない。数えきれない人々が「バスク風」がどのような様式であるかわからないまま「バスク風」を標榜するつまみを注文してきたに違いない。私もそうだ。

ここにきて、ガリシアである。ガリシアというと、途端にイメージがぼやけてくる。もちろん「ガリシア」と聞いてどこ?となる人でも、スペインバルで「タコとジャガイモのガリシア風」を目にした覚えのある人や、「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」というフレーズにピンと来る人は多いだろう(NHKのBS4Kではサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路の特番が度々再放送されている)。私がまさにその手の人間で、ガリシアといえばタコと巡礼路というイメージしかなかった。

さて、ガリシア州はスペイン北西部(ポルトガルの真北)にある。有名なバスク州カタルーニャ州とともに、歴史的自治州と位置付けられており、強い自治権と独自の言語(ガリシア語)・文化(ケルトに由来するものらしい)をもつ。
年間を通して穏やかな気候で、最も寒い月で8度を下回らない、年間の気温変化は10度以下。また、大西洋に面していることもあり、1年を通じて雨が降る。年間降水量は1000~1500mmと、日本に並ぶほどではないが、そこそこに雨が降る。よって、植生含め、景観は「スペイン的」なものではないだろう。
ガリシア出身の最も有名な人物といえば、フランシス・フランコ。最も有名な企業はインディテックス(ZARA)。最も有名な遺体は聖ヤコブだ。

この聖ヤコブの遺体は、ガリシアを語る上で外すことはできない。ガリシア州の州都、サンティアゴ・デ・コンポステーラバチカンエルサレムと並ぶキリスト教大巡礼地の一つとされている。その理由は、この地に聖ヤコブの遺体があるとされているからだ。「カトリックといえば聖なる遺体への崇敬」というイメージはやや偏っているかもしれないが、そのイメージを強化する要因の一つは、このサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼だろう。掘り下げれば掘り下げるほど、面白そうな土地である。

私がガリシアに関心を持ったきっかけは、ガリシア出身の作家、ラモン・デル・バリェ=インクランの短編集を読んだことだった。この短編集がこれまたすごぶる面白い。ほぼ全ての短編を通し、暗く、神秘的で、衰退の兆しと閉塞感と不条理に満ちている。読むと全身がゴスになると言える。

暗い庭: 聖人と亡霊、魔物と盗賊の物語

大層面白く読んだ後、ふと「この作品の舞台となっているガリシアのこと、何も知らんな」と思ったまま、約一年が過ぎて今に至る。

転機はELDEN RINGのDLCに決着がつき、Blasphemous2(どうであれ、確かなことは唯ひとつ…贖罪に終わりはない。)を触り出したことだった。「スペイン、最高のゴスの地……」という気持ちに浸る中、ふと思い出したのである。「俺はまだ、『暗い庭』の舞台、ガリシアのことを何も知らない」と。

というわけで、何も知らない土地のことをパパッと知るなら明石書店のお世話になるのが一番手っ取り早い。特に衒わず、今回もまたお世話になることにした。

スペインのガリシアを知るための50章 (エリアスタディーズ88) (エリア・スタディーズ 88)

紹介文はこんな感じ

キリスト教の3大聖地の1つ、サンティアゴ・デ・コンポステーラで有名なスペイン北西部のガリシア地方。大西洋に面し、降雨の多さから緑に恵まれ、文化的にはケルトの影響も残る。「情熱の国」のイメージとは全く違った知られざるスペインの魅力を紹介する。

目次はこんな感じ

はじめに

I 総論

第1章 ガリシアという異郷――スペイン内戦により中断された自治
第2章 ガリシアはどんなところ?――緑の大地・青い海・灰色の家
第3章 スペインのなかのガリシア――見えるものと見えないもの
第4章 ガリシア人気質――ケルト以来の郷愁の民
【コラム1】ガリシア島紀行――野鳥の楽園シエス

II 歴史

第5章 ケルト時代のガリシア――ガラエキ族の定住地
【コラム2】ガリシアケルト遺跡をめぐって
第6章 ローマ時代のガリシア――ケルトからガラエキアへ
【コラム3】ルーゴの城壁
第7章 中世のガリシア――コンポステーラ時代とイルマンダーデ
第8章 近世のガリシア――中世からアンティーゴ・レシメへ
第9章 19世紀のガリシア――ガリシア主義のはじまり
第10章 20世紀のガリシア――ガリシアナショナリズムへの発展
第11章 スペイン内戦とガリシア――石のように冷たく重苦しい長い夜
【コラム4】フェロール時代のフランシスコ・フランコ

III 宗教と巡礼

第12章 サンティアゴ巡礼史――輝ける星、聖ヤコブに導かれて
【コラム5】私のカミーノ
第13章 ガリシアのロマネスク美術――誉むべきかな、神の勝利と栄光
第14章 サンティアゴ大聖堂への道――その中世西洋思想の背景
第15章 善光寺道とサンティアゴ巡礼道――歴史のなかで生き続ける東西の道
第16章 ガリシアの伝説と信仰――土着の神々とキリスト教
【コラム6】クルセイロ――石の大十字架
第17章 ガリシアの祭り――日常の憂さを晴らして、死者も生者もともに踊りあかす

IV 文化と生活

第18章 ガリシアの芸術――石と木と。大いなる自然に命を刻む
第19章 ガリシアの伝統工芸――神秘の化石「アサバチェ」とガリシアのレース編み
【コラム7】サルガデロス―ガリシアの陶磁器
第20章 中世ガリシア文化における音楽の遺産――聖ヤコブ典礼音楽について
【コラム8】サンティアゴ・デ・コンポステーラの音楽講習会に参加して
第21章 ガリシア音楽の特異性と普遍性――伝統を知り未来を見つめる音楽
【コラム9】ガリシアに響くアスビーオ
第22章 ガリシアの建築――苔むした石
【コラム10】オレオ―ガリシアの高床式倉庫
第23章 ガリシアの家族と女性――格好良いガリシア女性
【コラム11】時代の変化のなかでも失われないもの
第24章 ガリシアの家庭料理――食材の味を活かすシンプルな料理
【コラム12】ポルボ・ア・フェイラ―ガリシアのタコ料理
第25章 ガリシアのワイン――白ワインの宝庫、赤もあなどれない
【コラム13】エストレージャ・ガリシアガリシアのビール
第26章 ガリシアのチーズ――知られざるチーズの宝庫
第27章 ガリシアのマスコミ――新聞・放送・出版
【コラム14】テレビシオン・デ・ガリシアの番組から――日本のアニメからガリシア製ドラマまで
第28章 ガリシアのスポーツ――サッカーからピラグイスモまで
第29章 ガリシアの大学――6世紀にわたり唯一の大学USC
第30章 ガリシアと日本の人物文化交流――最初のスペイン人はガリシア出身

V 言語と文学

第31章 ガリシア語の成立――ラテン語から進展したガリシア
第32章 ガリシアの言語政策――標準ガリシア語の制定
【コラム15】ガリシア語の映画と演劇
第33章 ガリシア語の現況――新しいガリシア語の創造
【コラム16】ガリシア語を学んで
第34章 中世ガリシア文学――13世紀に華開いたガリシア語の抒情詩
第35章 ガリシアの文芸復興――レシュルディメント
第36章 レシュルディメント三大明星――ガリシア文芸復興の主役たち
第37章 アルフォンソ・R・カステラオ――ガリシアの教育者
第38章 スペイン語で書くガリシア出身の作家たち――世界で活躍する知識人
第39章 現代ガリシアの作家と詩人――伝統と改新に生きる人々
第40章 ガリシア文学の日とガリシアペンクラブ――ガリシア文学を発信する

VI 政治と経済

第41章 スペイン憲法公布後のガリシアガリシア自治州憲章――ガリシアの夜明けと自治権獲得
第42章 EU加盟後の現代のガリシア――新しいガリシア主義の時代へ
第43章 ガリシア自治州政府――自治州政府とはどのような存在か?
第44章 人口問題――スペイン・欧州に対する周縁的な統合に苦しむガリシア州
第45章 サンティアゴ・デ・コンポステーラ市――21世紀に生きるヨーロッパ千年紀の聖都
第46章 ガリシアの産業――EU平均を上回る経済成長率
【コラム17】環境問題―ガリシア州の自然保護制度は有効なのか
第47章 ガリシアの農牧業――国際化による浮沈の狭間
【コラム18】リアスの海辺から
第48章 日本進出のガリシア企業――世界にはばたく優良3社
【コラム19】ガリシア進出の日系企業
第49章 移民送り出しから移民受け入れへ――今やガリシアは外国人の希望の地
【コラム20】ポリーニョの石
第50章 世界のなかのガリシア人――強烈な郷土意識

おわりに
ガリシア歴史年表
参考文献・資料
ガリシアを知るためのブックガイド

ともに出版社サイトから引用

スペインのガリシアを知るための50章 - 株式会社 明石書店

言うまでもなく、土地のイメージを掴む上で知りたいことは大体知れた。大満足。強いて不満を挙げるとすると、近代化の過程にあったというカルリスタ戦争の紹介がほぼなかったことだろうか。ガリシアを舞台とするラモン・デル・バリェ=インクランの『暗い庭』ではひっきりなしに言及され、「長子相続制(マヨラスゴ)の残っていた麗しき時代」との分水嶺になるこのスペインの内戦についてはもう少し具体を知りたかったところだけれども、スペイン全土での戦いであるから、本書で取り上げるようなものではないかもしれない。これは別の本を読む必要があるだろう。

目次を見てわかる通り、ガリシアの歴史や政治・経済だけでなく、ガリシアの食や現行のカルチャーまで取り上げている。多少ガリシアに関心があるなら、読んで間違いはない。(明石書店のこのシリーズ全体に言えることだが)

本書を読んで一番驚いたこと:ケロロ軍曹はコナン、ドラえもんクレヨンしんちゃんと並ぶ形で、ガリシア語に吹き替えされて、ガリシアの子供番組内で放送されているらしい。

余談

読んでいる最中、衝動的にタコを調理してしまった。

標準的なペペロンチーノに、キャベツ(冷蔵庫のあまり)、しめじ(冷蔵庫のあまり)、タコを足したものである。

「よりスペインであろうか?」とレモン汁を入れたが、これは失敗だった。余計なものは足さない方がいい。

タコの入ったパスタ

俺は流されやすい

Blasphemousも面白いからよろしくね!!

store.steampowered.com

諸国、諸地方、諸民族の初音ミクが描かれている。こういうことは一月経てば「あ〜〜〜あったね〜〜〜」レベルに記憶がぼんやりしてしまうため、振り返り用に、書き残しておく。

発端はこれ。

brazilian miku pic.twitter.com/FiiLKqY1nb

— Doodly (@thecat_mitsu) 2024年8月17日

これがあんまりにも良かったために、世界中の人々が、半ば自虐を交えたりもしつつ、各々のミクを描いている。日本語インターネットでは専ら「各国」のミクと言及されているものの、実際描かれている粒度を見ると、その括りは誤りのように思う。

たとえばロシア圏だと、露骨に民族ごとの描き分けだ。

バシコルトのミク

башҡорт мику!! bashkort miku!! https://t.co/Ljmh2LABn3 pic.twitter.com/fAD25kXDuN

— окака рест фекерләү рәүеше (@komalak10) 2024年8月25日

タタールのミク

tatar miku :D https://t.co/OOhU02AkgI pic.twitter.com/ORM4nA5St3

— rina🤍 (@peqchu_) 2024年8月25日

ヤクートのミク

Yakutian Miku https://t.co/O3APOy8m55 pic.twitter.com/M7HPEI77Ys

— котичка (@kotikomori) 2024年8月25日

ここで描かれているミクはどれも連邦内で「共和国」として名義上国民国家をやっている粒度であるから、まだ「各国」のミクと解釈する余地はかもしれない。

とはいえ、スペインではサッと見るだけでも

が確認できる。「ご当地ミク」と言えなくもないけれど、こうなってくると「各民族ごとのミクが描かれている」と解釈する方が穏当だろう。

ちなみにカタルーニャのミクは当初検索に引っかからず、意外だなあと思っていたが、原因は簡単だった。カタルーニャのミクは英語でもスペイン語でもなくカタルーニャ語で投稿されていたからだ。

興味深かったのはイタリアで、これは南北で描き分けられている。(もちろんイタリアというまとまりで描かれていることもあるし、サルディーニャなど焦点を絞って描かれている場合もある。)

North Italian Miku!! 🇮🇹 (from Lombardy) https://t.co/IoPdR2HLuf pic.twitter.com/vgWWidhAYh

— Sarenhale 🍄 (@Sarenhale) 2024年8月25日

イタリアは他にもコルシカのミクやサルディーニャのミクもいた。

あとテキサスのミクも回ってきていた。

ウチらのミク、俺らのミク、といった感じで、自分たちの文化・暮らしをレペゼンするミクが描かれている、ということなのだろう。

GoogleのTell your worldのCMに何かしら感化された覚えのある人々には、なかなか胸を打つムーブメントではないだろうか。私については、そうだ。

一番回ってきた(ように思う)民族

カザフのミク

🇰🇿 https://t.co/oj17g3Ttnt pic.twitter.com/zO90jtu1O3

— NighTieLie 𖥔 ݁໒꒰ྀི´ ˘ ` ꒱ᡣ𐭩 (@Akii_desu) 2024年8月25日

人口比で考えれば不思議なのだけれど、カザフのミクはやたら豊富なバリエーションがオススメTLに回ってきていた。なぜだろうか。

俺が一番笑ったミク

アンダルシアのミク

Spanish Andalusian Miku (Maruja) #HatsuneMiku #spanishMiku https://t.co/TX0YuWBWt4 pic.twitter.com/U7w69gb194

— Lau 💫 (@xlausenpai) 2024年8月25日

良すぎる。

アンダルシアのミクのように、伝統衣装ではなく現地の暮らしやファッションにフォーカスしたミクが沢山描かれているのも、なんだか楽しい。

south korean miku https://t.co/peeG8B5gjB pic.twitter.com/K58L05Zx5P

— 🍉🌰maria eom 🌰 (@pineappledandy_) 2024年8月26日

portuguese miku (miku mitra) pic.twitter.com/i7g7AP6igq

— kuma naru 🐻 (@kumanaruu) 2024年8月25日

🇯🇲🇯🇲🇯🇲🇯🇲🇯🇲JAMAICA YA🇯🇲🇯🇲🇯🇲🇯🇲🇯🇲
Jamaican Miku as requested my lieges pic.twitter.com/ib9LOSoB8g

— 🍉🩷Bruno🩷🍉 (@MxMargarine) 2024年8月25日

上記のように素敵な現代ミクたちもいる一方で、切実なミクたちもいる。

パレスチナのミクは様々な国の人々が描いており、どれも好意的な拡散のされ方をしているように思う。おそらくはみなさんのおすすめTLにも回ってきたのではないだろうか。

Wish I had more time, but I did Palestinian Miku <3 #HatsuneMiku https://t.co/yRBDKzh5y8 pic.twitter.com/zQlAS6uOUT

— Sie @ zine season!!!! (@sieminglyy) 2024年8月26日

一方イスラエルのミクには批判的な引用RTがつけられていた。

こちらは当局に追い回されるベラルーシのミク(白赤白の旗は歴史的経緯から、反ルカシェンコのシンボルとなっており、抗議集会などでしばしば使われる)

Here she is... Belarusian Miku ⚪🔴⚪
Had to put her in a situation to fully show the vibe LMAO
I may be wrong but I think she wants change https://t.co/5ZWYpc82Jt pic.twitter.com/0ImCMCw5Xg

— ★ (@superchrist_yo) 2024年8月25日

ベネズエラのミクたち。ベネズエラの状況については、説明するまでもないだろう。

Venezuelan Miku pic.twitter.com/gMr9sDZ23C

— Literally Miguel 🇻🇪💥🔫 (@LiterallyMiguel) 2024年8月25日

miku venezolana #VenezuelaLibre pic.twitter.com/95bS5OGgq3

— - ̗̀ gabe ̖́- 🇻🇪 (@saaroSaaros) 2024年8月26日

最後に、日本のミクを紹介する。

日本生まれ日本育ち外国人のミクちゃん。 pic.twitter.com/ElsFdqJ8lt

— はらぺこ芋虫 (@igottadoalot) 2024年8月26日

コンサルタントの皆さん、マネージャーの皆さん。今日もスプレッドシートで曖昧なガントチャートを管理していますか?

2023年に読んで一番面白かった本は『綿の帝国』だった。

(「綿」の歴史を通して奴隷制植民地主義、強制労働…と、グローバル経済の成立過程を描いたとてつもない労作。「暴力と強制は資本主義の例外ではなく核心」というのがコアメッセージになりそうな勢いで、人々が暴力と強制によって『綿の帝国』と呼ぶべきグローバル経済に回収されていく様が、600Pくらい続く。)

綿の帝国――グローバル資本主義はいかに生まれたか

ここのあたりのテーマに関心が出たので、奴隷会計を手に取ってみた。

奴隷会計――支配とマネジメント

HPでの紹介はこんな感じ。

「現代マネジメント技術は、カリブ海アメリカ南部のプランテーションではなく、イングランドや工業化したアメリカ北部の工場で発達したと通常は語られる…ローゼンタールによればそれは誤りだ。アメリカ南部とカリブ海の奴隷所有者は、北部よりずっと以前に、先進的なマネジメントと会計技術を用いていた。その技術は今でも現代ビジネスで用いられている」
(marketplace.org)

「マネジメント、データ、現代的会計手法の暗黒史に関心をもつ万人が読むべき書」
W・ケイレブ・マクダニエル(ライス大学)

「自由市場経済についての常識的なナラティブを、一挙に打ち砕く」
マーティン・マイアズ(『タイムズ・ハイアー・エデュケーション』)

「資本主義は自由市場を本質とするだけではない。それは奴隷の背のうえに築かれたものでもあるのだ」
(『フォーブズ』誌)

奴隷制と会計技術の、わかちがたい関係を、豊富な帳簿史料で実証した画期的研究をついに邦訳。

「私たちはモノをつくる労働者がなかなか見えない世界経済に生きている。距離と定量的な経営がこの流れを助長し、資本主義と自由という前提はこれを隠すのに一役買っている。「自由」貿易にしても「自由」市場にしても、人間の自由とのあいだに必然的な関係はない。それどころか、プランテーション奴隷制の歴史は、その逆が真実でありうることを示している」
「快適な会計室に身を置く者にとって、人間の数を単に紙の上の数字と見なし、男、女、子供をただの労働力と考えるのは、恐ろしくなるほど簡単なのである」
――本文より

www.msz.co.jp

これまた物凄く面白い。読んでよかった。

書かれたきっかけも面白い。著者は、マッキンゼー経営コンサルタントであったという。

膨大なスプレッドシートを通して生産性を上げる仕事をしながら、いつから人間をスプレッドシートのセルとして扱うようになったか、という疑問が、研究に着手するきっかけだったらしい。

その疑問の答えが、奴隷制度(とりわけ綿花農園)において発達した帳簿とマネジメント手法と語られている。

本書では、奴隷制度が資本主義の確立に大きな役割を果たし、奴隷の管理が現代の科学的管理法の先駆的なものであったことに焦点を当てている。また、奴隷制の合理的側面が現代の経営にもつながる部分がある、としている。

本書では、奴隷制度が単に野蛮で非人道的な制度として語られるだけでなく、資本主義と現代の「科学的管理法(コンサルの歴史を語る際必ず出てくる、いわゆるテイラー・システム。)」の先駆けとして役割を果たした、という視点を提供する。

奴隷を単なる労働力としてではなく、資産として帳簿に記載し、効率的に管理する手法がいかに発展していったかが詳細に描かれている。「ニグロ勘定」により、奴隷の在庫が管理され、その価値が複式簿記減価償却法で計測され、帳簿に記載されていたという事実は、奴隷制度が単なる抑圧の手段ではなく、極めて高度に組織化された生産システムの一部であったことを示している。本書の表紙は、まさにこの帳簿だ。自由を奪われた人間が計算可能な単位として組み込まれるグロテスクさを、端的に物語る表紙だと思う。

自由人労働者を雇う工場の帳簿が標準化されておらず、生産性の管理が行き届いていなかった点と対照的に、プランテーション経営者の用いる帳簿は業界全体で標準化されていた。労働者(奴隷)の自由が制限され、労働力が固定化されていたからこそ、プランテーション経営者は生産性向上に専念し、データに基づいた科学的な管理を推し進めることができたのだという。

この議論については、自由人を労働に投入するためにいかに法と暴力を駆使したか、という点について語っていた『綿の帝国』がいい補完になるだろう。

もちろん、単に奴隷制度の合理性を称賛するわけではない。むしろ、奴隷制がもたらした残虐な管理手法とその背後にある冷酷な経営論理を描くことで、資本主義と科学的管理の発展が必ずしも人道的であったわけではないことを強調している。奴隷解放後も、元奴隷たちは依然として厳しい労働条件下に置かれ、経営者は旧奴隷を債務によって縛り続けたという。解放奴隷の苦境についても、『綿の帝国』に詳しい。

本書は、資本主義と経営史について新たな視点を提供するだけでなく、奴隷制とその歴史的影響について再考を促す貴重な一冊とも言えると思う。

特に、会計という視点から奴隷制を捉えることで、資本主義の発展にどのように寄与したかを明確にし、その冷徹な合理性を明らかにするポイントは新鮮だ。どのような立場の人であれ、持ち帰るものの多い本ではないでしょうか。

逆にこの本読んだ人は、『綿の帝国』を読んでおいて間違いはないと思う。

余談:現代のプロジェクトマネジメントでも重要なツール、「ガントチャート」を作ったヘンリー・ガントは、南北戦争最中のメリーランド州プランテーション農園経営者の家庭に生まれた、という話も興味深い。「最低限のタスク」を切り分け、その超過達成を賞与に反映していくマネジメント手法は、奴隷解放後の農園で検討された給与制度から着想をえているのでは?と著者は指摘している。

関連書籍

これも良かった

ハイチ革命の世界史 奴隷たちがきりひらいた近代 (岩波新書 新赤版 1984)

砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)

親戚の用事で7月に京都に行ったので、記録を残す。

1日目

新幹線

港北ニュータウンに住んでいるので、新横浜から新幹線に乗る。

新幹線が大好き。東海道新幹線の車窓からの眺めは、いつまでも飽きることがない。特に、浜名湖東海道新幹線のサビと言える。

東海道新幹線の眺めの美しさがあまりにも国土への愛を刺激することから、私は東海道新幹線を頭の中で「スーパー右翼トレイン」と名付けている。

聳え立つビル 美しき海

雄大な富士 青い田畑

逞しき我らが太平洋ベルト

豊かな土地 愛すべき国土

全てをつなぐ 新幹線

おお 電化 電化 電化

遠淡海を飛び越えて

おお 電化 電化 電化

我ら東海道新幹線小学校

東海道新幹線 校歌

私が日本(共産圏)の指導者なら、ポスターに新幹線が頻出したことだろう。

車内では神奈川東部の人間の勤めとして、崎陽軒のシューマイ弁当を食べる。

崎陽軒のシュウマイ弁当

郷里の誇り、崎陽軒。紅生姜で白米を食べるのが格別

宇治観光

京都駅到着後、宇治へ。

駅のホームには十二単姿の響けユーフォニアムの登場人物たちのイラスト群が掲げられていた。

十二単姿の響けユーフォニアムのキャラクター

萌えを発見。剣崎梨々花さんが微笑ましい

駅舎にはたくさんの燕の巣があった。関東の人間としてはコシアカツバメのとっくり状の巣に大興奮。地元鎌倉の学校にやってくる自然おじさん(そう呼ぶ他ない自然の伝道師たちがいるのだ)に「かつて鎌倉はコシアカツバメの北限地だが、巣の数が減少してしまった」と吹き込まれて以来、私は彼らの巣を見ると興奮することにしている。

打ちっぱなしのコンクリートの天井に、コシアカツバメの巣が6つ

地元鎌倉ではツバメよりも珍しいとされていた、コシアカツバメ。
とっくり状の巣がポイント

宇治川

すごく宇治

昼食。

入ろうとしていたお店がランチを終了していたので、適当なうどん屋へ。

uji-kyoudon.com

京都らしいうどんでも食べるかと思ったものの、どうしてもカレーを食べたくなり、カレーうどんに。美味しかった

カレーうどん

誘惑に負けた

平等院鳳凰堂へ。

平等院鳳凰堂

観光客がいたるところで10円玉とともに写真を撮っていた

とにかく蒸し暑い。鳳翔殿(宝物殿)で涼む。

大河ドラマ『光る君へ。』をやっているし、いい機会だからと源氏物語ミュージアムへ。ちょうど展示が宇治十帖にスポットを当てたものになってました。匂宮を軽薄で乱暴なやつだと思っていたけど、面影ばかりを追っている薫と比べると、浮舟当人を見ている点では匂宮はいい男なのか?当時どう受容されていたのかは気になる。

前祭

京都市街地に戻る。

祇園の前祭(正確には前々々々祭くらい)の様子を見る。京都には親族がいることから割合頻繁に訪れるのだけれど、祇園祭に絡んだものを見るのは初めて。

祇園の鉾

めっちゃはしゃいだ

ちまき

DX祇園ちまき

夜はお祭りの雰囲気を楽しみたく、ガヤガヤしているところに行こうということになり、賑わってそうなイタリアンのお店に入った。

ピザ

ピザ

鱧のフリット

画面奥:鱧。観光客として素直なので、
夏の京都では鱧を見かけたら食べることにしている。
画面手前:ハラペーニョのフライ

daniels.jp

2日目

平安神宮

親族がよく散歩に通っているという平安神宮に向かう。

平安神宮

平安神宮。デカい

はじめは「よくある(?)明治に整えられたでけー神社か〜〜」と思ったものの、舐めてかかるのは良くない。お庭がとんでもなく素晴らしい。古典作品に登場する草花が、短歌などとともに紹介される趣向も、観光客としてはありがたい。

あまりにも国土と文化への愛を刺激されたので、私は頭の中でこのお庭を「スーパー右翼ガーデン」と名付けた。今回の旅行で一番興奮したのは、このお庭かもしれない。

湿地のような池

good池。大人になるにつれ、淡水の眺めのありがたみが増してきたように思う

緑道

センター南界隈の緑道を彷彿とさせる

池の上に渡り廊下?

大量の風鈴が付けられており、とても涼やか

昼食はグリル小宝へ。気になっていたお店なので、入れて嬉しい。

私はハイシライスを頼む。ボリューム満点だけれど、甘みとコクのあるソースで食がよく進む。水のお代わりにあたっては、店主さんがものすごい高度から、ものすごい手捌きで水を注いでくれる。お立ち寄りの際は水を二杯以上飲んでいただきたい。

ハヤシライス

ハイシライス(メニューの表記がこう)。グリーンライスが眩しい

www.grillkodakara.com

ディナー

その後親戚の諸々の用を済ませ、夕飯へ。

京都に訪れた際は必ず立ち寄るようにしている、和久傳。

模範的観光客なので、鱧が嬉しかった。とても嬉しかった……。

お品書き

お品書き

鮎と万願寺とうがらしが揚げられている

鮎と万願寺とうがらし

鱧の切り身

鱧の切り身

焼かれる鱧

焼かれる鱧

鱧

供された鱧

ちまきのように、笹が包まれている

祇園祭ちまき風水菓子

笹を剥くと、中には葛切り

中身は葛餅。かわいいね

重なり合う太陽のモニュメント

おそらくELDEN RING SHADOW OF THE ERDTREE