【日本酒の香り】吟醸香と造り方 (original) (raw)

日本酒の中でも特別な「吟醸造り」って知っていますか?
米を贅沢に磨き、低温でじっくり発酵させることで、リンゴやバナナ、洋梨のようなフルーティーな香りを引き出す造り方なんです。
この香りは華やかで上品、スッキリした味わいとともに口の中で広がります。
手間ひまかけて造られる吟醸酒…その魅力、ぜひ味わってみてください!

◆日本酒の香り

日本酒の香りは、さまざまな成分が組み合わさって作られています。
大きく分けると「酵母が作り出す成分」と「原料や発酵による成分」があります。主な香り成分をいくつか紹介します。

エステル類: フルーティーな香りを生み出す成分です。リンゴやバナナのような香りがすることがあります。
「酢酸イソアミル」というエステルは、バナナのような甘い香りを感じさせます。「カプロン酸エチル」はリンゴのような華やかな香りがします。
アルコール類: 日本酒の中には、エタノール以外にもいろいろな高級アルコール成分が含まれています。
これら高級アルコールは酒全体の香りを深め、温かみや重さを加えることがあります。
有機: 酸味や甘味に関係する成分で、香りにも影響を与えます。
例えば、「乳酸」は乳製品のような香りを、「クエン酸」はさわやかな酸味の香りを生み出します。
アミノ酸やペプチド: これらは旨味を感じさせる成分ですが、香りにも複雑な影響を与えます。醤油や味噌に似た香りが出ることがあります。

これらの成分が日本酒の製造過程で微妙に変わることで独特の香りが生まれます。
例えば、吟醸酒はフルーティーな香り、古酒(熟成された日本酒)はナッツやカラメルのような香ばしい香りがします。
参考:「清酒のにおいとその由来について」独立行政法人酒類総合研究所 2011.7

https://www.nrib.go.jp/data/pdf/seikoumisan.pdf

その1:https://www.kitasangyo.com/pdf/e-academy/tips-for-bfd/BFD_26.pdf

その2:https://kitasangyo.com/e-Academy/b_tips/back_number/BFD_27.pdf

吟醸香(ぎんじょうか)は、日本酒の中でも「吟醸」や「大吟醸」と名の付く酒に特徴的な香り

この香りは、主に酵母(こうぼ)という微生物が発酵の過程で作り出す成分によって生まれます。
エステル類を多く生産する酵母のため、華やかな香りが特徴の吟醸酒を作るのに適しています。
また、低温でゆっくり発酵させることと、吟醸酒に適した酵母を使うことで、この特有のフルーティーな香りが引き出されます。

吟醸香の主な成分は「エステル類」と呼ばれる化合物です。
フルーツのような甘くて華やかな香りを持っており、酵母の種類によっても香りは変わりますが、特に次の2つのエステルが吟醸香を代表します。

酢酸イソアミル(さくさんいそあみる)
これが多く含まれると、バナナのような甘い香りを感じます。協会9号酵母が代表的酵母になります。
カプロン酸エチル(かぷろんさんえちる)
こちらは、リンゴや洋梨のような爽やかでフルーティーな香りを生み出します。長野県の開発した「アルプス酵母」からはじまり、協会1801号酵母などが代表になります。

◆香りを引き出す吟醸造りの特徴

吟醸造りとは、日本酒を仕込む際に特に手間と時間をかけて行う製法の一つで、上品で華やかな香りと繊細な味わいが特徴の日本酒を生み出します。
吟醸酒」や「大吟醸酒」、「純米吟醸酒」、「純米大吟醸」は、この吟醸造りによって造られます。

吟醸造りは、特に次の3つの点で普通の日本酒造りと異なります。
米の精米歩合
吟醸造りでは、使用する酒米(さかまい)を通常よりも高い精米歩合で磨きます。
精米歩合とは、米をどれだけ削るかを示す指標で、例えば精米歩合60%であれば、米の外側40%を削り取ったことを意味します。
吟醸酒では、精米歩合60%以下が基準となっており、特に大吟醸酒では50%以下にまで磨かれることが多いです。
米の外側にはたんぱく質や脂質が多く含まれており、これらが多いと雑味が出やすいため、吟醸造りではこれを削り取ります。
米の中心部だけを使うことで、スッキリとした味わいが得られます。
低温発酵
吟醸造りの最大の特徴の一つが、低温でゆっくりと発酵させることです。
一般的な日本酒造りよりもかなり低い温度(約10度前後)で長期間(1か月くらい)発酵させることで、香り高い成分である吟醸香を多く生成します。
これにより吟醸酒特有のフルーティーで華やかな香り(吟醸香)を引き出す要因です。
また低温発酵には技術もさることながら、注意深い管理が必要です。発酵温度が低いと、酵母の活動がゆっくりになるため、発酵を細かくコントロールし、温度管理や発酵進行のチェックを頻繁に行う必要があります。
これが吟醸造りの難しさであり、手間のかかる部分でもあります。
吟醸酵母の使用
吟醸造りでは、特に吟醸酒用に開発された酵母が使われることが多いです。
これらの酵母は、低温発酵でも活発に働き、エステル類を多く生成する性質を持っています。
例えば、「協会9号酵母」や「協会1801号酵母」といった吟醸酒に適した酵母が、華やかでフルーティーな香りを引き出すために使用されます。

吟醸造りは手間がかかるため、通常の日本酒造りと比べると生産コストが高くなります。
精米歩合を高めるためには、精米に長い時間を要しますし、使用する米の量が多くなり、効率的には不利になります。
発酵温度の管理にも低温での発酵は時間がかかるため、その分貯蔵や管理のコストも増えますし、高度な技術と知識が求められます。

吟醸造りは、米を高度に精米し、低温でゆっくりと発酵させ、吟醸香を引き出すために特別な酵母を使うなど、多くの手間と時間をかけて行われます。
このようなことにより、非常に繊細で上品な味わいが楽しめ、リンゴやバナナ、洋梨のようなフルーティーで華やかな香りと、スッキリとした味わいを持つ日本酒が生み出されます。

吟醸酒の魅力を引き立てる飲み方

吟醸酒はさまざまな食事やシーンに合わせて楽しむことができる特別なお酒です。

吟醸酒のフルーティーで華やかな吟醸香を最大限楽しむためには、いくつかのポイントを押さえると、より美味しく味わえます。
ここでは、吟醸酒を美味しく飲むための方法をご紹介します。

1. 適切な温度で飲む
吟醸酒は、冷やして飲むのが最もおすすめです。特に10〜15度くらいがベスト。
冷やすことで、フルーティーな香りが引き立ち、スッキリした味わいが楽しめます。冷蔵庫でしっかり冷やしてから飲むのがいいでしょう。
ただし、冷えすぎると香りが感じにくくなることもあるので、飲む前に少しグラスに注ぎ、常温に近づけるのもひとつの方法です。
2. ワイングラスを使う
吟醸酒の香りを楽しむために、ワイングラスなどの口がすぼまったグラスで飲むのもおすすめです。
こういったグラスは、香りがこもりやすくなるため、フルーティーで華やかな吟醸香をより感じやすくなります。

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3. 香りの邪魔をしない食べ物と一緒に
吟醸酒の繊細な香りと味わいを引き立てるためには、香りの強いニンニクなどの食べ物や味の濃い料理を避け、シンプルな味付けの料理と合わせるといいでしょう。
例えば、白身魚の刺身やカルパッチョ、軽めのチーズ、シンプルなサラダなど、素材の味を楽しめるあっさりした料理にぴったりです。
4. 開栓後は早めに飲む
吟醸酒は香りが繊細で、開栓後は香りがすぐに飛んでしまうことがあります。そのため、開けたらできるだけ早めに飲むのが理想です。
特に数日経つと、吟醸香が弱まってしまうことがあるので、新鮮な状態で楽しむようにしましょう。
5. 飲むシーンにこだわる
吟醸酒は、その香りと味わいをゆっくり楽しむお酒です。
特別な日に飲んだり、音楽をかけたり心地よいシチュエーションで飲むことで、より一層美味しく感じられます。

◆まとめ

吟醸酒を美味しく飲むためには、冷やして、適切なグラスで、シンプルな料理と合わせながら、香りと味わいをゆっくり楽しむことがポイントです。
吟醸香がふんわり広がる瞬間をぜひ堪能してください!