広島電鉄5100形電車とは - わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

広島電鉄5100形電車Green mover max
5102(2008年5月撮影)
基本情報
運用者 広島電鉄
製造所 近畿車輛三菱重工業東洋電機製造
製造年 2004年 - 2008年
製造数 10編成
運用開始 2005年3月30日
主要諸元
編成 5車体3台車連接固定編成
軸配置 Bo′+2′+Bo′
軌間 1,435 mm
電気方式 直流600V
最高運転速度 60 km/h[1]
設計最高速度 80 km/h
起動加速度 3.5 km/h/s[1]
減速度(常用) 4.8 km/h/s[1]
減速度(非常) 6.0 km/h/s[1]
編成定員 149(着席56)人[1]
編成重量 33.9 t[1]
全長 30,000 mm
全幅 2,450 mm
全高 3,645 mm
床面高さ 360 mm (車内フロアー[1])330 mm (入口部[1]
台車 積層ゴム式コイルばね台車MKD001・MKT001
主電動機 かご形三相誘導電動機[注釈 1]
駆動方式 WN継手直角カルダン駆動方式
歯車比 7:44(6.29)
編成出力 100kW × 4
制御方式 IGBT素子VVVFインバータ制御
制御装置 東洋電機製造 RG691-A, B-M形
第46回(2006年 ローレル賞受賞車両
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2005年4月撮影
写真は側面が旧ロゴマークの時代のもの

広電5100形の運転席

広電5100形の車内

先頭車台車

中間車台車

製造銘板

車内銘板類

広島電鉄5100形電車(ひろしまでんてつ5100かたでんしゃ)は、2004年に登場した広島電鉄路面電車である。愛称 Green mover max(グリーンムーバーマックス)。

概要

近畿車輛[2]三菱重工業[3]東洋電機製造・広島電鉄の4社がU3プロジェクトの名で共同開発した、国産初の100%フルフラット超低床電車である。U3とは Ultimate (究極の)、Urban (都会的な)、User friendly (利用しやすい) を意味する。メーカではJTRAMという愛称で呼んでいる。構造は5000形(GREEN MOVER)に引き続き5連接車で、広島港方から A、C、E、D、B 車(荒手車庫所属である5101号は、宮島口方から B、D、E、C、A 車)となっている。

2004年12月19日江波車庫に搬入され、組み立てを行った後宮島線・市内線で試運転が行われた。2005年3月30日に営業運転開始された。現在は10編成を保有しており、主に1号線(宇品線)で集中的に使われ、朝夕ラッシュ時は5号線(比治山線)でも運転。また、5101・5108号は2号線(本線・宮島線)で運用される。なお、以前は千田車庫所属の車両も、厳島神社の初詣や宮島水中花火大会など多客時の臨時便として宮島線を走行することがあった。また、当初は全車千田車庫への配置予定であったが、デビュー時の宮島線期間限定運行に影響し、宮島線沿線利用者から「宮島線にも走らせてほしい」との要望が多くあったため、5101号は千田車庫配属から改めて荒手車庫所属となった(その代替として5000形の5012号が市内線の千田車庫所属へ変更となった)。

当初は「GREEN MOVER max」と「max」以外は大文字表記だったが、ロゴデザインの商標権利上の問題が発生し、第2編成登場時にロゴマークのデザインを変更した際、小文字主体の「_Green mover max_」と斜体表記になった。ただし、行先方向幕については全編成に大文字表記が残されている。

2007年4月19日から5101が広島観光インフォメーション電車(広島平和記念公園原爆ドーム縮景園広島城宮島の大鳥居と厳島神社などの写真が部分ラッピングされ、車内に観光地や文化施設の案内板が設置されている)となった。また、2008年7月19日から8月24日は、広島観光インフォメーション電車のまま、テレビ新広島が宮島の包ヶ浦自然公園に開設した海の家「TSS海の家 NATSUGOYA de アロハ」の宣伝電車として、車内放送をTSSのアナウンサー8人が担当する「NATSUGOYA電車」として運転された。

5000形同様に、車内に次の停車駅等の案内表示器が引き続き設置された。連結部上部に1行分のLEDパネルが設置されている。

2005年には日本産業デザイン振興会(現・日本デザイン振興会)よりグッドデザイン賞を受賞した。また、2006年には鉄道友の会よりローレル賞を受賞した。

コンビーノ(グリーンムーバー)との比較

製造メーカ各社の狙いは、以下の通りにあった。

  1. 座席が少ないなどコンビーノの欠点の克服
  2. 冷房装置の能力不足など日本の環境にそぐわない点の改善
  3. 低床通路の幅を更に広げ車椅子で移動できるようにする
  4. 外国特許の回避

最大の改善点は、中間の付随台車を動力台車と別に設計し、小さくしたことによりE車内の突起を少なくし、ロングシートにできたこと(E車のロングシートは付随台車上にあるため、他のシートよりも若干高く固い)。各車体の長さをコンビーノと同等にして、ロングシートが効率的に配置できるよう工夫されている。これにより着席定員は5000形の46名から56名まで増えた。クロスシートは5000形の1名掛けに比べ若干広がり、着席定員に変化はないが実質1.5名掛けとなり、親子であれば二人掛けも可能。逆にやや犠牲になっているのが床面高さの360mmで、コンビーノ標準の300mm、5000形の330mmに比べても高くなっている。また全長は軌道法限界一杯の30mに抑えられた。また、5000形よりも車両価格が約2000万円安く抑えられ3億2000万円になったほか、保守の容易化や部品調達コストの低減も期待されている。

5100形の冷房能力は5000形コンビーノより小さくなっているが、送風ダクトの改良により空調効率を上げてコンビーノの欠点を解消した[4]

、5100形では運転席から向って左下の部分に安全窓(セーフティウィンドウ)を設け、反対側は外板を同じ形に黒く塗ることで見た目を左右対称にしている。結果的に、行先表示板と併せて前面は側面と全く独立した造形となっている。

行き先表示は従来の電動方向幕式からLEDタイプに変更され夜間の視認性が向上した。ただしLEDは運行系統にかかわらず橙色であるため、遠方からの色分けによる識別はできなくなった。

制動機にも改良が加えられている。5000形ではマスコンを中立位にすると走行時にはまったくのニュートラル状態であるが、停車時は自動的にパーキングブレーキが作動するシステムになっている。しかし、このシステムは微速走行時にもパーキングブレーキが作動してしまうため停止位置の微調整が非常に難しく、運転士は停車寸前にマスコンをやや力行位にもっていかないとスムーズな停止が出来ない。これに対し5100形はマスコンをどの常用制動位にしていても停止寸前にブレーキが自動的にゆるめられスムーズな停止が可能となった。その反面、従来車輌と操縦が異なり、相互運用性に問題がある。

内装は5000形ではグレーとブルー基調の配色で、窓にスモークガラスを採用し、車内照明にカバーを設置し、車内を落ち着いた雰囲気にした反面、若干、薄暗くなっていたが、5100形ではホワイトとライトグリーン及びイエローを基調とし、窓もクリアガラスに変更し、照明も暖かみのあるダウンライトにし、清潔感溢れる明るい印象となった。

また事故対策の一環として、車内随所に握り棒が設置されている。特徴的な例としては車内通路中程に天井から床面にかけて握り棒が設置され事故防止に役立っている反面、設置場所である乗車扉正面に乗客が停滞して車内に流れにくく、スムーズな乗降を阻害している感がある。

国産化できなかったものは弾性タイヤとブレーキ(油圧)である。また鋼製であるため1.4tほど重い。

主要諸元(テンプレート外)

各車状況

特記がある場合を除き、2025年2月19日現在の状態を示す。

車号 竣工 所属 塗装 ICカード全扉乗降サービス対応日 備考
5101 2004年 荒手車庫 全面ラッピング電車「ラッピングコラボトレイン」(JR西日本227系0番台塗装)[5] 2022年7月16日
5102 2005年 千田車庫 部分ラッピングelama ワンマン化工事施行済み
5103 標準色 運用停止中ワンマン化工事施行済み?
5104 全面ラッピング電車「カープ電車」 ワンマン化工事施行済み
5105 2007年 部分ラッピング 元気じゃ健診 ワンマン化工事施行済み
5106 部分ラッピングフジグループラッピング ワンマン化工事施行済み
5107 部分ラッピング電車「サンフレッチェレジーナ電車」 2022年度から運用開始ワンマン化工事施行済み
5108 荒手車庫 全面ラッピング電車「サンフレッチェ電車」 2012年度から連続ワンマン化工事施行済み
5109 2008年 千田車庫 標準色 ワンマン化工事施行済み
5110 全面ラッピング電車「広響電車」 2012年度から連続ワンマン化工事施行済み

参考文献

脚注

  1. ^ 東洋電機製造 TDK6490-A
    出力100kW
    電圧440V
    電流180A
    周波数60Hz
    回転数1775rpm

  2. ^ a b c d e f g h 東洋電機技報 第128号 2013-9 35頁

  3. ^ 近畿車輛 広島電鉄殿向け国内初のフルフラット超低床車

  4. ^ 三菱重工業株式会社 ニュースレター 2004年11月22日 - 国産初の100%超低床LRV(Light Rail Vehicle)車両を開発 第1号車両を広島電鉄に納入

  5. ^ 5000形コンビーノは冷房装置の能力こそ不足していたわけではないものの、空気が送風と吸気の間で車内に行き渡らず、空気が澱むという欠点があった。

  6. ^ 広島電鉄・JR西日本によるラッピングコラボトレインを運行!

  7. ^広電、カープ電車運行始める”. 中国新聞 (2013年4月5日). 2013年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月14日閲覧。

  8. ^祝V「サンフレッチェ電車」運行”. 読売新聞 (2012年12月18日). 2013年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年9月14日閲覧。

  9. ^“「カープ電車」運行開始 広電”. 中国新聞 (2014年3月18日). 2014年3月18日閲覧。[_リンク切れ_]

外部リンク

鉄道友の会 ローレル賞選定車両
1960年代 第1回(1961年阪急2000系2300系電車(いずれも初代) 第2回(1962年国鉄401系・421系電車 第3回(1963年京王3000系電車 第4回(1964年京王5000系電車(初代) 第5回(1965年山陽電気鉄道3000系電車 第6回(1966年札幌市交通局A830形電車 第7回(1967年長野電鉄0系電車 第8回(1968年) 該当車なし 第9回(1969年東京都交通局6000形電車
1970年代 第10回(1970年大阪市交通局60系電車 第11回(1971年名鉄モ600形電車(2代) 第12回(1972年営団6000系電車 第13回(1973年小田急9000形電車 第14回(1974年西鉄2000形電車 第15回1975年国鉄24系25形客車黒部峡谷鉄道EH形電気機関車 第16回1976年国鉄キハ66系気動車東急8500系電車富士急行5000形電車 第17回1977年上信電鉄1000形電車札幌市交通局6000形電車 第18回1978年東京都交通局新7000形電車神戸市交通局1000形電車 第19回1979年京急800形電車国鉄50系客車
1980年代 第20回1980年名鉄100系電車北総開発鉄道7000形電車富山地方鉄道14760形電車 第21回1981年国鉄117系電車長崎電気軌道2000形電車 第22回1982年福岡市交通局1000系電車 第23回1983年国鉄200系新幹線電車熊本市交通局8200形電車 第24回1984年京阪6000系電車 第25回1985年営団01系電車樽見鉄道ハイモ180形気動車 第26回1986年南海10000系電車国鉄100系新幹線電車 第27回1987年北大阪急行電鉄8000形電車近鉄7000系電車JR四国キハ185系気動車 第28回1988年仙台市交通局1000系電車 第29回1989年JR九州783系電車
1990年代 第30回1990年JR西日本221系電車JR四国2000系気動車(試作車) 第31回1991年JR東日本251系電車大阪市交通局70系電車 第32回1992年JR東日本253系電車JR九州キハ200系気動車 第33回1993年JR東海300系新幹線電車JR貨物EF200形電気機関車 第34回1994年JR貨物DF200形ディーゼル機関車 第35回1995年JR北海道キハ281系気動車 第36回1996年JR東海383系電車JR貨物コキ71形貨車 第37回1997年JR北海道731系電車 第38回1998年熊本市交通局9700形電車叡山電鉄900系電車近鉄5800系電車 第39回1999年スカイレール200形
2000年代 第40回2000年広島電鉄5000形電車新幹線700系電車JR東日本209系950番台(E231系900番台)電車 第41回2001年名鉄モ800形電車(2代)近鉄3220系5820系9020系電車シリーズ21第42回2002年JR西日本キハ187系気動車 第43回2003年岡山電気軌道9200形電車鹿児島市交通局1000形電車 第44回2004年) 該当車なし 第45回2005年JR九州800系新幹線電車長崎電気軌道3000形電車 第46回2006年名鉄2000系電車愛知高速交通100形電車・広島電鉄5100形電車・福岡市交通局3000系電車 第47回2007年JR東日本E233系電車西鉄3000形電車 第48回2008年JR東日本E721系電車・仙台空港鉄道SAT721系電車JR東日本キハE200形気動車 第49回2009年豊橋鉄道T1000形電車京阪3000系電車(2代)
2010年代 第50回2010年近鉄22600系電車 第51回2011年東京メトロ16000系電車 第52回2012年JR貨物HD300形ハイブリッド機関車 第53回2013年) 該当車なし 第54回2014年福井鉄道F1000形電車JR東日本E6系新幹線電車 第55回2015年JR東日本EV-E301系電車箱根登山鉄道3000形電車 第56回2016年JR東日本HB-E210系気動車四日市あすなろう鉄道新260系電車 第57回2017年JR東日本E235系電車えちごトキめき鉄道ET122形1000番台気動車静岡鉄道A3000形電車 第58回2018年JR東日本E353系電車東武500系電車鹿児島市交通局7500形電車 第59回2019年相鉄20000系電車叡山電鉄デオ730形電車「ひえい」
2020年代 第60回2020年JR四国2700系気動車 第61回2021年JR東日本E261系電車JR東海N700S系新幹線電車 第62回2022年東京メトロ17000系18000系電車京阪3850形電車 第63回2023年京都市交通局20系電車 第64回(2024年宇都宮ライトレールHU300形電車Osaka Metro400系電車
ブルーリボン賞 島秀雄記念優秀著作賞 鉄道趣味顕賞エバーグリーン賞 グローリア賞 シルバー賞