高齢者のうつ病に対する抗うつ薬の選択|川崎市の高津心音メンタルクリニック 高津区溝の口 心療内科 精神科 (original) (raw)

公開日 2022.11.29

はじめに

高齢者のうつ病の世界的な有病率は、2022年度において28.4%と非常に高いことが報告されています1)。

高齢者のうつ病治療では疾患の鑑別、心理・社会的背景の理解と評価をもとにした介入が重要とされています2)。

薬物治療においては、現時点での日本のガイドライン(2020年版)では、抗うつ薬の有効性は認められるものの、各抗うつ薬間での位置づけの記載はなく、慎重な選択と使用が求められる状況です2)。

英国のNICEガイドラインやモーズレイ処方ガイドライン等においても同様で薬剤選択は症状、合併症等の個別性を背景に選択されています。

現在のエビデンス

Tham Aらが2016年に報告した高齢者のうつ病に対する薬物治療の有効性と忍容性の比較の解析では、SSRIは反応と寛解いずれにおいてもプラセボと差がつかない結果でした。

寛解においてデュロキセチンが優れている結果でした4)。

その後、Krause Mらは2019年に高齢者のうつ病に対する薬物治療及び非薬物治療の有効性と忍容性の比較の解析を報告しています5)。

抑うつ症状の50%改善を反応率として有効性を評価したところ、プラセボと比較し、

が有効な結果でした(図1)。

図1 高齢者のうつ病に対する抗うつ薬の有効性(反応:50%改善)

寛解率ではクエチアピンミルタザピンデュロキセチンがプラセボと比較し有効でした(図2)。

図2 高齢者のうつ病に対する抗うつ薬の有効性(寛解)

忍容性は

の順にプラセボと比較し不良な結果でした(図3)。

図3 高齢者のうつ病に対する抗うつ薬の忍容性

デュロキセチンは高齢者のうつ病に効果があるものの、ノルアドレナリン活性による口渇、便秘、尿閉等の副作用が若年者より生じやすくなります6)。

また、デュロキセチンは高齢者のうつ病治療において転倒のリスクを増加させることが報告されています7)。

そのため、腰痛等の疼痛を合併する高齢者のうつ病に効果的な薬剤であるものの、フレイルやうつ病で運動機能が低下している状態においては慎重な使用を要します。

高齢者では身体的健康度の低下、慢性疾患、入眠困難がうつ病のリスクを増加させ、IADL(手段的日常生活動作)の低下、視力低下は特にリスクとなることがなることが報告されています8)。

作業療法で行われている園芸療法は身体的機能を高めるとともに、高齢者のうつ症状の改善に有効であることが報告されています9)、10)。

また、社会的孤立、孤独感も高齢者におけるうつ病のリスクであり11)、12)、ソーシャルキャピタルの醸成も大きな課題と言えます。

おひとりで悩んでいませんか?

うつ症状がある場合は、我慢せず早めの心療内科・精神科への受診をおすすめします。
まずはかかりつけ内科等で相談するもの1つの方法です。

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