わたかわ 鉄道&旅行ブログ (original) (raw)

※冒頭に茶番を含みます。あしからずご了承ください。

2024年11月17日(日)

本日は、東京都大田区にある**蒲田駅**へとやってきました。

蒲田駅はJR京浜東北線のほか、東急多摩川線・池上線の計3路線が乗り入れています。また東口より少々歩けば京急蒲田駅もあり、交通の便は極めて良好です。

本日は京浜東北線に乗車し、品川駅まで移動したいと思います。

北行の列車に乗車して大森、大井町、品川と3駅進むのみ。何ら難しい話ではありません。

しかしいざ蒲田駅改札内へ入ってみると…あれ、何だか様子がおかしいですねえ…。

私が乗車したい北行(大宮方面)の発車標には時刻や行先など何も表示されていません。

そのそばには、やけに目立つ大きなポスターがずらり。

見てみると、「蒲田~品川 運休」と書かれています。

何と本日、**京浜東北線は始発から16時30分頃まで蒲田~品川駅間で全ての列車が運休になる**とのことなのです。すなわちこの運休の時間帯、当駅から発車する京浜東北線は全て当駅にて折り返しとなります。

今回の運休は、京浜東北線大井町駅ホーム拡幅工事に伴うもの。京浜東北線は蒲田以南と品川以北でそれぞれ折り返し運転が行われており、また通常であれば日中に行われている快速運転も取りやめとなっています。

並行する東海道線は通常通りの運行となっており、JR東日本では他の路線による迂回を呼びかけています。運休区間内には**大井町駅大森駅**の2駅があり、大井町駅であればほかにりんかい線東急大井町線が通っているため蒲田駅からでも何本か列車を乗り継いで向かうことができます。大森駅京浜東北線単独の駅ですが、700mほど歩いた位置に京急本線の大森海岸駅があるため、JR東日本ではそちらを利用するよう案内されています。

さて、私が向かいたいのは品川駅です。蒲田~品川駅間の移動については、いったん京浜東北線南行で川崎駅へ戻り、そこから東海道線を利用するルートのほか、京急蒲田駅まで徒歩で移動し、京急本線を利用するルート等が案内されています。

しかし通常であれば、蒲田(京浜東北線)川崎(東海道線)品川、と利用する経路は蒲田~川崎駅間が重複となるため厳密には不正乗車となります。本日に限ってはこの方法での乗車も黙認とされているようでしたが、なるべくグレーな方法は取りたくないのが清き鉄道ファンたるものです。

そしてもし今回運休となっていなければ、私はこの蒲田駅4番線ホームから京浜東北線(**E233系**)に乗車するはずでした。私の今の気分は完全にE233系で、何としてもその他の形式の列車には乗車したくありません。

そして先ほどご覧に入れた通り、蒲田→品川(180円)のJR線きっぷは既に購入してしまいました…。

(茶番はここまで)

というわけで今回は、蒲田から品川まで、京浜東北線の運休区間を避けつつもE233系のみで移動していきたいと思います!

蒲田駅は2面3線の構造で、1・2番線が南行(大船方面)、3・4番線が北行(大宮方面)です。2番線と3番線は同じ1本の線路を共用しており、本日はこの2・3番線の1線のみを利用して折り返し運転が行われていました。3番線を降車専用ホームとし、全ての乗客の降車が完了したことを確認した後2番線から乗車開始となります。

蒲田以南は臨時ダイヤにて運行されており、運行間隔はわずか10分に1本。普段の京浜東北線と比べるとかなり少ないところですが、これはすなわち蒲田駅において折り返し設備をもつ線路が1線しかないことが理由でしょう。2・3番線にはホームドアが設置されていないため、何だか一昔前の京浜東北線を思わせます。

というわけで、乗車する1本目の列車は蒲田11時26分発の京浜東北線 各駅停車 大船行です。京浜東北線根岸線E233系は「1000番台」と呼ばれ、2007年にデビューしました。

列車は時刻通りに蒲田駅を発車。その後すぐに北行の蒲田行とすれ違いました。蒲田駅のホームは本当にギリギリの体制で運用されている様子であることが窺えます。

11時29分、列車は川崎駅に到着。ここで下車します。

本数の少なさゆえか、車内の混雑は比較的激しいように思われました。

北行の発車標で表示される行先は、ひたすらに「蒲田」のみ。「東京・大宮方面」等の文字が隠される様子は一切ありません。

東海道線へ乗り換えてしまえば品川まではあっという間…というところですが、グレーな利用方法は避けるべく、続いて乗り換えるのは**南武線**です。南武線は川崎駅を始発・終着としており、ある程度並べばほぼ確実に着席できます。

乗車するのは、川崎11時51分発の南武線 快速 立川行です。51分発の前には45分発・38分発の各駅停車もあったのですが、いずれも途中駅でこの快速が追い越すダイヤとなっているため、当駅では2本見送った上でこの快速に乗車することにします。

南武線E233系は「8000番台」という形式で、2014年にデビューしました。南武線では他に「8500番台」という形式も存在しており、こちらは2017年のデビューです。8500番台は中央線の「0番台」を転用したものですが、塗装は南武線仕様となっているためパッと見ただけではなかなか8000番台との区別がつきません。

南武線の快速は2011年にデビューしました。しかしこれは実は「復活」でもあり、かつて国鉄時代の1969~1978年にも川崎~登戸駅間に限定して快速が運行されていました。

11時51分、列車は時刻通り川崎駅を発車。渡り線を左へ進み、その後右へ大きくカーブを描いて多摩川と並走するように進んでいきます。

快速の停車駅は鹿島田、武蔵小杉、武蔵中原武蔵新城武蔵溝ノ口、登戸、稲田堤、稲城長沼、府中本町、分倍河原終点立川です。まだ運行を開始してから十数年ほどですが、何度か停車駅が変更されており、2011年当時は登戸~立川駅間が各駅停車でした。その後2014年に各停区間稲城長沼立川駅間へ短縮され、そのさらにわずか1年後の2015年には現在の通り全区間で快速運転が行われるようになっています。

見えてきた最初の駅は尻手駅です。隣のホームには南武支線(浜川崎方面)へ向かうE127系が停車しています。(元々新潟県内等で運用されていたため)「新がたの電車」として2023年9月に南武支線にてデビューしました。

左前方に高層タワーマンション群が見えてくると、まもなく列車は武蔵小杉となります。

武蔵小杉は横須賀線湘南新宿ライン埼京線/相鉄線直通・東急東横線東急目黒線と実に多彩な路線が乗り入れていますが、このうちE233系が使用されているのは湘南新宿ライン埼京線/相鉄線直通のそれぞれ一部列車のみ。どちらに乗車しても再び東京都心部へ戻ることはできますが、いずれも品川方面ではなく大崎方面に向かってしまいます。この時品川駅へは停車しませんが、「通過扱い」となるため降りることができず、その先E233系のみを乗り継いで品川駅へ戻ってきたところで不正乗車となってしまうためここで乗り換えるわけにはいきません。

武蔵小杉~武蔵溝ノ口駅間は「武蔵」のつく駅が4駅連続となり、しかも全て快速停車駅という面白い区間です。武蔵中原では乗務員の交代が行われ、また武蔵溝ノ口では川崎を6分早く発車した先行の各駅停車との緩急接続を行いました。

川崎を出る時点では座席にわずかな空席もあるほど余裕のあった車内ですが、武蔵小杉・武蔵溝ノ口・登戸…など他路線との接続をもつターミナル駅を通るごとに混雑はどんどん酷くなっていきます。南武線は全列車が6両編成のため首都圏の路線としてはやや編成が短く、それでいて「東京メガループ」の一翼を担う重要路線とあって平日休日を問わず混雑が日常の光景となっています。

私も学生時代に毎日のように南武線を利用していましたが、列車は短くホームは狭く、果たして需要に応えられるだけの供給ができているのか不思議に思ったことがあります。

稲城長沼ではさらに1本前を走る各駅停車との緩急接続を行います。この各駅停車は快速よりも川崎を13分早く出発した列車で、これで川崎~立川駅間で2本の各駅停車を追い越したことになります。

12時33分、終点の**立川駅**に到着。

蒲田から品川へ移動したいだけなのに、だいぶ都心部から離れた位置まで来てしまいました。

実は立川駅を通る普通・快速列車は、路線にかかわらずほとんどがE233系。ですからE233系縛りの移動をしたとてここ立川駅を抜けだすことはさほど難しくはありません。

3本目のE233系は、立川12時52分発の中央線 快速 東京行です。

中央線快速は言わずもがな、E233系の元祖ともいうべき路線です。2006年に初めてE233系がデビューした路線で、かれこれ20年近くにもなります。

その中でも今回乗車する52分発の快速は、「12両」の表示。何だか違和感のあるフォントですが、それはさておき何が目的かはお分かりですね…?

そう、12両編成の中央線には2024年10月より「**グリーン車**」が連結されているのです!

現在はお試し期間としてグリーン料金は不要のため、普通車と同じ扱いです。本格的なサービス開始は2025年春からとなるため、それまでの約半年間は10両と12両が混在することになります。

中央線で活躍するE233系は「0番台」。東京~大月駅間のほか、青梅線五日市線富士急行線でも運用されています。

先行の49分発が中央特快のためそちらは激しい混雑でしたが、こちらは豊田始発ということもあってか立川駅の時点ではそれほど混雑はしていない様子でした。

眼前に迫る四つ葉のマークに胸が高鳴ります。この位置にグリーン車が停車すると知らず並んでいた人が思わず普通車の方へ移動する光景も見られましたが、現在はお試し期間ですからグリーン券を持っていなくともその必要はありません。

私は10月に続き、今回2回目の乗車。前回は2階席を利用したので、今回は1階席を利用してみることにします。

12時52分、列車は時刻通り立川駅を発車。本格的なグリーン車サービス開始前のため終着駅での車内整備は行われず、座席の向きはまちまちでした。

一応種別は「快速」ですが、吉祥寺までは全ての駅に停車します。車内のLCDのデザインは普通車と若干異なっており、遠くからでも必要な情報が見やすいよう文字の大きさやレイアウトが工夫されています。

1階席は通常の列車の車窓と比べ目線が低く、普通車ではなかなかない非日常を味わえます。

立川を出る時点では1階席にかなり余裕があり、窓側も多数空いている様子でした。座席の転換は途中駅からであっても適宜行い、概ね進行方向を向いて座る方が多いようでした。

国分寺では、後続の青梅特快との緩急接続を行います。現在はまだ12両編成の本数がそれほど多くなく、向かいのホームに停車する青梅特快の方は10両編成のため、「グリーン車の向かいに普通車が停車する」という不思議な光景も見られました。12両編成へ統一された後は基本的に全ての編成で同じ位置にグリーン車が組み込まれるはずですので、こうした光景はなかなか見られません。

お試し期間の現在であっても、座席の背面テーブル・読書灯・コンセントは利用できます。一方で座席ランプは点灯しておらず、ヘッドカバー・フリーWi-Fi・トイレ・ごみ箱は使用できません。車内では「マナー・モラルを守っての利用にご協力を」とのアナウンスもありました。

三鷹でもまた、国分寺と同様に後続の列車との緩急接続が行われました。こちらもまた10両編成(中央特快)で、乗り換え客もあってか車内の混雑はさらに増していきます。丁寧な車掌さんで、国分寺三鷹の両駅到着前には「ここで特快へ乗り換えると新宿・東京へ何分先着できるか」を細かく案内されていました。

通路側までびっしりと座席が埋まった状態で、列車はいよいよ新宿へ。

新宿を通る路線の中では他に埼京線湘南新宿ラインE233系で運行されていますが、先ほど武蔵小杉にて説明した通りいずれも品川駅には停車しません。仮にここで中央線を下車し、埼京線または湘南新宿ラインE233系で大崎まで移動できたとしても、その先大崎~品川駅間を走るE233系の列車が1本たりとも存在しないのです。

そんなわけで、終点東京へと向かいます。

新宿~東京駅間では神田川と並行しつつ、並走する中央・総武線各駅停車と比べるとかなり駅数は少なく、この区間では快速としての威力を遺憾なく発揮してくれます。

御茶ノ水で各駅停車と線路が分かれ、こちらは右に大きくカーブを描きます。

中央線では特急〔あずさ〕〔かいじ〕等が比較的高頻度で運行されていますが、特急はほとんどが新宿発着であることを考えると、クロスシートで直接東京駅まで乗り入れられるこの快速グリーン車の存在意義は十分にあると言えそうです。

13時45分、終点の東京駅に到着。列車は折り返し50分発の中央特快 高尾行となるようで、グリーン車はすぐに満席となりました。

東京まで来てしまえば、後は品川まで向かうのは何ら難しい話ではありません。

東京~品川駅間で運行されているE233系東海道線京浜東北線の2路線です。京浜東北線には冒頭、蒲田→川崎で乗車しているため東海道線の方にしようかとも思いましたが、通常では見ることのできない「品川行」が多数運行されている京浜東北線の方に乗車してみようと思います。

東京駅の6番線ホームへと向かう看板には「蒲田・関内方面」と記されています。こうした文字は運休の時間帯であっても隠されたりすることなく、あくまでも駅構内・ホーム上等での追加の張り紙やアナウンス等による案内に終始していました。

乗車するのは東京13時59分発の京浜東北線 各駅停車 品川行です。「京浜東北線の品川行」というものが珍しいのはもちろんのこと、日中に快速運転が行われていない光景もまた違和感があります。

運行本数は蒲田以南ほど少なくはないようで、こちらは概ね6~8分間隔といった様子。快速運転をしていないため田端~品川駅間での役割としては並行する山手線とほぼ同じで、かつ山手線の方が本数が多いため6番線側で待つ人はそれほど多くないように見えました。

さあ、ついにはっきりと見えた「品川」の文字!

この列車で品川まで移動することができれば、目的達成です。

東京~品川駅間における列車の運行本数の多さは別格で、東海道線上野東京ライン)・京浜東北線東海道新幹線がほぼ同じルートを並走します。さらに地下には横須賀線の線路も通っており、車窓を眺めてすれ違う列車や並走する列車を1本も見ない方が難しいというものです。

この区間では有楽町・新橋の2駅が快速通過駅。有楽町はともかく、新橋は東海道線も停車するほどの主要駅ですから、京浜東北線の快速が通過するのはやや意外かもしれません。一方で東京モノレールと接続する浜松町にはしっかりと快速も停車するため、羽田空港利用者にとってはかなり使いやすいダイヤとなっていることでしょう。

高輪ゲートウェイは相変わらずがらんとした様子でしたが、新橋さえも通過するほどの快速はここ高輪ゲートウェイに停車します。

14時12分、列車はようやく終点の品川駅に到着。

これにてようやく、蒲田→品川をE233系のみで移動することができました!

品川駅では当駅止まりの京浜東北線が5番線(南行ホーム)に入線します。到着後は回送列車となるため5番線は降車専用ホームとして扱われていますが、向かいの6番線が上野東京ライン北行)のホームなので、そちらは通常通りの営業です。

5番線の発車標には「大井町・大森・蒲田・川崎・横浜方面」と表示されているものの、その下に表示される文字は「回送」だらけ。最上段の部分は本日の運休に合わせ「降車専用」等と表示を切り替えられそうな気もしますが、やはり一度きりの運休のためにそのような対応を行うのは難しいのでしょうか。

5番線(南行)ホームに当駅止まりとして入線した列車は、いったん回送列車として大井町方に引き上げ、しばらくして隣の4番線(北行)ホームに当駅始発として入線します。乗車専用・降車専用が明確に分けられている点は蒲田駅と同じですが、1線ではなく2線で列車を捌くため蒲田以南よりも高頻度での運行が実現しているというわけです。

ただしそれはそれで慌ただしいようで、北行列車が1本発車するとすぐに引き上げ線から新たに1本列車がやってきます。この列車が4番線へ入線しないと回送列車が5番線から発車できない様子で、限られた設備を効率的に運用していることが分かります。

何はともあれ、無事にE233系のみを乗り継いで蒲田→品川を移動することができました。

同じ駅を2度通らない大回り乗車として行うことで、蒲田駅で買った180円のきっぷも無駄にならずに済みました。なお、経由に「東海道」と書かれていますが、大都市近郊区間内であれば券面表示通りの経路でなくとも大回り乗車のルールに則って移動ができます(大回り乗車のルールはここでは割愛します)。

本日の移動ルートはご覧の通りとなりました。

直線的に京浜東北線で進むよりも、実に76kmも長く移動したことになります。もちろん「E233系縛り」でなければもっと短い距離での大回り乗車も可能ですが、改めて京浜東北線の有難みを感じる一日となりました。

なお現在、大井町駅でのホーム拡幅工事は完了し、京浜東北線は全線で運転を再開しています。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

2024年8月10日(土)

今回は、**名鉄名古屋駅**へとやってきました。

お盆期間へ突入し、名古屋駅構内および周辺は帰省客や旅行客で混雑しています。

岐阜、豊橋知多半島、さらには空の玄関口である中部国際空港など多方面からの列車が集結する名鉄名古屋駅は、その複雑さから「名駅」ならぬ「迷駅」と揶揄されるほど。そんな「迷駅」から今回向かうのは、現在高架化工事真っ最中と噂の「**知立駅**」です。

3面2線の特殊な構造をした当駅では、上りも下りもひっきりなしに次々と各方面へ向かう列車が発着します。主に豊橋方面へと向かう上り列車は原則4番線からの発車ですが、河和や中部国際空港など知多半島方面へ向かう列車は知立よりも手前の神宮前で分岐するため、今回は乗れません。

私自身、名鉄線は数回利用したことがあるものの停車駅や行先にそれほど詳しいわけではないため、慎重に発車標やアナウンスを聞きながらホーム上で待機します。

10時43分発の急行 豊橋が入線。どうやらこれで知立へ行けそうなので、乗り込むことにします。

なお乗車後に気づいたことですが、この5分後にやってくる10時48分発の**快速特急**の方が知立へは先着するようで、さっそく余所者ムーブをかましてしまいました。まあ全くの別方向へ連れていかれるわけではありませんので、急行でこのまま向かいたいと思います。

その快速特急には、鳴海で抜かされました。鳴海駅には快速特急は停車しないようで、緩急接続ではないのであちらへ乗り換えることはできません。

さらにしばらく進んでいき、次がいよいよ目的の知立駅

ここまで上下線とも地上を走行してきましたが、ここで上り線のみ高架線へと差し掛かります。ただ、どうやら地上の線路というのも引き続き残っているようです。

高架線へと進むと、さらにその先で分岐し線路を敷くことができそうな構造になっているのが分かります。現在は上り線の線路1本のみですが、将来的にはこのさらに1つ上のフロアへも線路が敷かれる予定なのでしょう。

真新しいコンクリートの要塞の中へと進むと、この線路のすぐ右側にももう1本線路が敷けそうです。

11時11分、知立駅の高架ホーム8番線へ到着。2023年3月に使用が開始されたホームで、現在高架化され使用されている乗り場はこの1線のみです。

この8番線ホームは駅の2階部分にあたり、7番線が設置される予定の箇所は現在まだ壁で覆われています。その壁の向こう側には、多数の工事用車両や現行の地上駅を見下ろすことができます。

壁で覆われた7番線のさらに向こう側では5・6番線の建設も進められています。将来的にはこの5~8番線が名古屋本線のホームとなる予定で、5・6番線が下り(名古屋・岐阜方面)、7・8番線が上り(豊橋方面)となるようです。

8番線ホームの一つ上のフロアにあたる3階は乗り換え階となっており、既に通行は可能となっています。当駅からは名古屋本線以外に猿投方面・碧南方面へそれぞれのびる「三河線」という支線も存在し、その三河線のホームはさらに1つ上の4階部分で建設が進められています。

ここまでご覧いただくとお分かりの通り、現在は高架ホームと地上ホームが混在する移行期間の真っただ中。しかも高架化されているのは8番線の1線のみで、まだまだ駅の機能の大部分は地上に残っています。

豊橋方面を連絡通路から見下ろしてみると、駅のすぐそばには名古屋本線三河線の両方を跨ぐように踏切があります。知立駅およびその周辺の連続立体交差事業は、まさにこうした踏切の除去が大きな目的の一つであり、「開かずの踏切」問題の解消およびそれに伴う慢性的な渋滞の解消等が期待されています。

さて、かたやこちらは地上ホーム。2~5番線が使用されており、このうち5番線のみが名古屋本線(名古屋・岐阜方面)です。すなわち名古屋本線でも全旅客列車が停車する知立駅でありながら、現在は一時的に上下線1線ずつで捌いているという状況です。

2・3・4番線は三河線ホームで、このうち猿投方面へは主に2番線、碧南方面へは主に4番線が使用されています。三河線は当駅を境に運行系統が分かれており、実質的には別々の支線のような形態です。

改札口は北改札と南改札の2か所があり、このうち街の中心地へと出るのは北改札です。北改札は2019年12月にこの場所へと移転されました。

手前にある背の低い建物が仮駅舎で、その背後にそびえる高い壁は先ほど降り立った8番線を含む高架ホームとなっています。北口にはバスロータリーや飲食店、ホテル等が立ち並び、知立市中心市街地を形成しています。

名古屋本線三河線は、かつて別の鉄道会社が建設した路線でした。このため三河鉄道の(初代)知立駅名古屋鉄道の新知立駅は若干離れており、別の駅として扱われていました。

1941年、三河鉄道が名古屋鉄道へ合併されたことで両駅の間には連絡橋が整備され、新知立駅は「知立駅」へと改称。その後1959年に現在の位置で3代目「知立駅」が開業したことで、三河線知立駅を境にV字型の配線となって運行されることになりました。名古屋本線の2代目知立駅は「東知立駅」へ改称するも1968年に廃止となり、また三河線の2代目知立駅は「三河知立駅」へと改称されました。

三河知立駅は1959年以降長らく、三河線における知立駅の隣の駅として営業してきましたが、今回の高架化事業に伴い、2024年3月に猿投方面へ約900m移転しました

知立駅前にある地図には、三河知立駅知立駅から非常に近い位置で示されています。しかしこれはあくまでも2024年3月までの位置で、現在この場所に駅はありません。現在は知立駅からさらに遠ざけられ、知立市立竜北中学校付近に「(2代目)三河知立駅」として存在しています。

というわけで、続いてはその「(初代)三河知立駅」跡地と、その先にある現在の「(2代目)三河知立駅」を歩いて見に行こうと思います。

知立駅北口を出て南東方向、名古屋本線の線路に沿って進みます。数分ほど歩いたところで、名古屋本線上りの高架橋とぶつかります。

そのすぐ隣にはもう1本、造りかけの高架橋があることが分かります。これこそがまさに三河線(猿投方面)の高架橋です。

三河知立駅が移転となる理由は、かつての三河知立駅知立駅から600mほどしか離れておらず、知立駅の高架化にあたって同時にこの三河知立駅もかつての場所のままでは高架化する必要性があったためです。かつての三河知立駅知立駅との近さゆえ、1日の利用者数は800人ほどしかおらず、巨額の費用を投じてまで同じ場所で高架化させることはデメリットが大きいと判断されたのです。

そしてこちらが、2014年3月15日まで三河知立駅のあった場所です。訪問時で移転から5か月ほどしかたっていませんが、既に駅舎やホームは跡形もなく、遺構等はほぼ残っていないようでした。

強いて言うなら、この月極駐車場の看板に「三河知立駅前」と書かれていることがほぼ唯一といっていいほどの名残でしょうか。新旧三河知立駅は900mほど離れているため、旧三河知立駅の場所にて「三河知立駅前」を名乗り続けるのは少し無理がある気がします。

線路付近から知立駅方面を望んでみても、旧三河知立駅ホーム等の遺構は一切見られません。ほんの5か月ほど前までここに1面2線の島式ホームがあり、月極駐車場のすぐ隣に小さな駅舎があったようです。

三河線は単線で、現在はまだずっと地上のみを走行しています。知立駅三河線ホーム高架化は2027年度の予定で、この付近の高架化もその頃であると考えられます。

線路に並行する道路がないため、実際の三河線の線路よりもやや遠回りする形で現在の三河知立駅へと歩いていきます。真夏の日差しが照りつける中の徒歩はなかなか過酷なものです。

国道1号を越えて、ガリバー1号知立店とFUJI本社の間の道を抜けていった先に、ようやく現在の三河知立駅が見えてきます。ただし「三河知立駅 この先車で行けません」とあるように、線路の南側からは自動車で駅へ乗りつけることはできません。

狭い道を通り、何とかして現在の三河知立駅に到着!

今年開業したばかりの新駅舎&新ホーム、ピカピカでとても綺麗です。

新しくなった三河知立駅は2面2線の相対式ホームで、改札口はそれぞれ設けられています。知立駅からの距離は1.5kmで、周辺の方々の利便性は格段に向上したことでしょう。

最後に**三河知立12時37分発の知立行**に乗り込み、来た道を列車で戻ることにします。三河線は日中15分間隔での運行です。

地上区間三河線車内から高架の名古屋本線(上り)を望むことができるのも、今の期間ならではの光景です。高架化後の知立三河知立駅間は複線となる予定で、この辺りの景色も大きく変わりそうです。

3分ほどの乗車にて、知立駅地上ホームに入線しました。

なお連続立体交差事業の完成は2028年度の予定となっており、もうあと数年ほどかかる見通しです。段階的に知立駅のホームは高架化されていきますので、地上ホームの見納めはお早めに…!

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

▼前回の記事

watakawa.hatenablog.com

2024年8月12日(月)

予土線を走る観光列車「しまんトロッコ2号」にて、12時11分に高知県の**窪川駅**へと到着。ここからは高知方面へ向かいます。

窪川駅は高知県四万十の中心駅。多度津から続くJR土讃線の終点であると同時に線路がそのまま土佐くろしお鉄道中村・宿毛線に続いており、中村線の始発駅でもあります。また一つ先の若井駅から分岐する予土線も当駅まで乗り入れており、実質的に3路線が集まるターミナル駅です。

余談ですが、高知県には「四万十」と「四万十」という2種類の異なる自治体があり、しかもややこしいことに両者は隣接しています。ちなみに四万十の中心駅は土佐くろしお鉄道中村駅です。

しまんトロッコ2号は12時11分に当駅へ到着していますので、そのまま最速の乗り継ぎであれば窪川12時32分発の普通 土佐山田行があります。これに乗ると高知駅到着は14時41分、所要時間は2時間9分です。

また窪川駅は全ての特急列車が停車する駅となっており、土佐くろしお鉄道から直通する窪川13時56分発の特急〔あしずり10号〕まで待てば終点高知駅には15時05分に到着することができます。所要時間は1時間9分、鈍行列車と比べると大幅な時間短縮です。

しかし…今回乗るのはそのどちらでもありません。

窪川13時10分発の特急〔志国土佐 時代(トキ)の夜明けのものがたり(開花の抄)〕高知行に乗車します。

この列車は主に高知~窪川駅間を走る観光列車で、2020年7月に運行を開始しました。2両編成で、高知寄りの車両(2号車)が白を基調とした外装の「ソラフネ」、窪川寄り(1号車)が黒を基調とした外装の「**クロフネ**」となっています。

午前中は高知→窪川で下り便「立志の抄」が運行され、12時32分に窪川駅へ到着。約40分後に上り便「開花の抄」として当駅を発車し高知駅を目指します。車両は国鉄末期に開発・製造されたキハ185系特急気動車を改造したもので、側面のデザインは列車名になぞらえ星空から日が昇る日本の夜明けをモチーフとしています。

座席の配列も大変特徴的で、2号車は全て窓を向いた座席となっています。また1号車は本来であれば車両中央部で向かい合う長いテーブルが続いており、複数名での利用を想定した座席となっていますが、新型コロナウイルス感染拡大防止のため約半分の座席が2号車と同じく窓向きのレイアウトへと変更されています。

今回私は1号車の窓側座席を予約しました。なおこの列車は全車グリーン車指定席として発売されており、他の定期特急列車とは異なり**えきねっと・e5489等のインターネット予約サービスでは予約することができません**。

テーブルにはご覧の通り、沿線マップやお箸・おしぼり等が既にセッティングされています。この列車では特急券・グリーン券とは別に事前予約制の食事が用意されており、予めお箸等が置かれているのはそのためでしょう。食事については後ほど詳しくご紹介させていただきます。

なお、食事のサービスがあることに伴い、本列車内への飲食物の持ち込みは原則禁止となっています(水・お茶を除く)。乗車前に駅弁等を調達しても車内で食べることはできませんので、くれぐれもご注意ください。

また事前予約制の食事とは別に、車内ではアルコール類・ソフトドリンク等をはじめとした各種車内販売も準備されています。2号車にカウンターがあり、そちらで購入できるようです。

13時18分頃、列車は定刻より8分遅れ窪川駅を発車。この日は朝方に土讃線内で倒木があり、その影響でダイヤ乱れが発生していました。高知方面からの下り特急列車(窪川12時58分発あしずり3号中村行)が遅延しており、その到着を待っての発車となったようです。

時刻表上では、この列車の途中停車駅はこの先の土佐久礼駅のみとなっています。しかし沿線マップを開いてみると、どうやらそれ以外にも多数の駅に停車する様子。各所で様々なおもてなしが用意されています。

窪川駅を出るとまずしばらくは内陸部を走行します。土讃線は全線単線で、かつ大部分(琴平以南)が非電化となっており、特急街道でありながらもローカルな雰囲気を同時に味わうことができます。

窪川駅を出て約22分、13時40分頃に**土佐久礼駅**へと到着。定刻では13時34分着ですので、依然として6分ほど遅れているようです。

ここが先ほどご紹介した通り、唯一の途中停車駅です。定刻では16分ほどの停車時間が設けられており、発車は13時50分となっています。

土佐久礼駅がある中土佐町久礼は、カツオの一本釣りで有名な漁師町として知られています。駅舎内にはかわいいカツオがデザインされたオリジナルスタンプがありますので、停車時間中に乗車記念カードの裏面へ押印しておきましょう!

当駅ではこの停車時間中に下り普通列車との行き違いも行います。しかしながらやはりそちらも遅延しており、本列車は約2分遅れて13時52分頃の発車となりました。

土佐久礼駅を発車すると、いよいよお待ちかねのお食事が運ばれてきました!

今回のお食事は「高知家満喫”土佐流のおもてなしコース”」。沿線の食材をふんだんに使用したメニューとなっており、手前から順に壱の重・弐の重に分かれています。

【壱の重】

【弐の重】※お米は四万十町産仁井田米を使用

彩り豊かで品数も多く、特に鰹・鱧・鰤など海鮮を使ったメニューの多さが高知らしさを感じます。もちろん例外なく全て美味しかったですが、特にかつおのたたきと鰤の西京焼きは本当に美味しく、大満足の内容でした。

なお、食事については特急券・グリーン券と同様にみどりの窓口等でも予約できるほか、今回私は「tabiwa by WESTER」から予約しました。予約・購入は乗車日の4日前までとなっており、クレジットカードにて決済しておきます。当日はデジタルチケットを乗車時に提示することで食事を座席まで運んできてもらえます。

ちなみにお食事のお値段は…というと、5,500円です。まあこの金額だけ見るとお世辞にも「安い!」とは言えませんが、せっかくの旅ですので、安さばかりでなくしっかりとお金を払ってサービスを受けるという意味ではこの食事も予約されることをオススメします。

土佐久礼駅の次の安和駅では、数分間ほど運転停車。ここは駅の目の前が太平洋となっており、雄大な海の景色を楽しむためのサービスとしての停車のようです。

14時12分、列車は須崎駅に到着。ここでようやく遅れを回復し、定刻での到着となりました。

須崎駅には14時31分まで、19分間停車するダイヤになっています。

須崎駅では現地の観光案内パンフレット類に加え、なぜかキャベツ太郎かっぱえびせん等をいただきました。また停車時間にちなみ「須崎19分劇場」と題して、ホーム上では地元のおばさま方によるパフォーマンスが次々繰り広げられておりました。そのパフォーマンスの傍らでは現地の土産物品等も販売されており、直接下車して観光せずとも街の熱気を存分に味わうことができます。

しかし…せっかく遅れを回復したにもかかわらず、14時31分を過ぎても列車は動き出す様子がありません。どうやら今度ここ須崎駅では、冒頭にてご紹介した後続の上り特急〔あしずり10号〕高知行を待避するダイヤとなっているようで、そちらが遅れているので本列車も発車できなくなっているようです。「19分劇場」と銘打っておきながら実際には停車時間がどんどん延びていきましたが、おばさま方の熱気は留まることを知らず、車内で発車を待つ乗客に向けて窓越しに踊りのアンコール等が繰り広げられておりました(笑)。

その後無事にあしずり10号(所定須崎14時22分発)へ追い越され、本列車は18分遅れで14時49分頃に須崎駅を発車。特急が特急を追い越すというのも、何とも不思議な光景です。

無事に食事も食べ終わり、続いては気になっていた車内販売を利用。メニューが豊富で悩みましたが、「ゆずスカッシュ」(700円)を注文しました。夏らしいひんやりとさわやかなドリンクで、見た目のグラデーションの美しさも相まってとても美味しいです。

吾桑駅を通過し、トンネルへ入る直前に車窓左手へ見えてくる大きな工場は「白石工業土佐工場」です。まるでSF映画に出てきそうな要塞のような見た目をしていますが、沿線マップによれば「炭酸カルシウムを製造している」とのこと。海や山の景色のみならず、こうした思いがけない見どころもあるものです。

続いて15時12分頃、列車は佐川駅に到着。定刻では14時50分到着ですので、遅れは22分にまで拡大しています。

ここでは10分間の停車時間が設けられており、発車は15時00分。しかしもう到着の時点で既に発車時刻を過ぎてしまっております。

事前予約制の食事には食後のコーヒーがセットとなっており、コーヒーチケットをもって駅舎内に向かうと停車時間中に引き換えることができます。コーヒーが苦手という方のために「さかわ茶」も用意されており、いずれか1つを選択できるようになっています。今回私はコーヒーではなく、さかわ茶の方をチョイスしました。

さらに、車内へ戻るとテーブルの上には鮮やかな青色をしたゼリーが置かれています。こちらも事前予約制の食事とセットになっている「仁淀ブルーゼリー」です。この先にある「仁淀川」の青さを表現したスイーツとなっており、真夏でも涼やかな気分にさせてくれます。

佐川駅を定刻よりも18分ほど遅れて15時18分頃に発車し、その後西佐川駅・伊野駅でも少し運転停車を行います。この辺は観光サービスとしての停車というよりはダイヤの都合上のようでしたので、遅延しているがゆえの運転停車だったのかもしれません。

伊野駅の手前では、先ほどのゼリーのモチーフとなった仁淀川を渡ります。高知の市街地が次第に近づいてきました。

朝倉駅でも運転停車を行い、下りの普通列車および特急〔あしずり7号〕との行き違いを行います。この辺りまで来ると完全に高知の市街地で、土讃線に並走するように「とさでん交通」も走っています。夕方の時間帯に差し掛かりホーム上で列車を待つ地元の方も多く、目が合うとお互いにやや気まずくもなるものです(笑)。

徐々に建物が密集してきて、列車はまもなく終点の高知駅へと入ります。

到着間際にはアテンダントの方が各席を回り、乗客へのご挨拶をしてくださいました。

16時08分頃、列車は終点の**高知駅**に到着。

定刻では16時07分着予定でしたので、最終的にほぼ定時での到着となりました。佐川駅を出てから運転停車の駅が4駅ほどあり、停車時間をうまく削るなどできたのかもしれません。

何はともあれ、贅沢な約3時間の旅となりました。

人気のあまり特急券の購入もなかなか至難の業ではありますが、高知を訪れる際には是非とも乗っていただきたい列車です。運行日によっては土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線に直通し高知~奈半利駅間で運行されることもあるようなので、今度はそちらにも乗ってみたいものです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

2024年10月24日、JRグループは2024年度冬の「青春18きっぷ」の発売を発表しました。

利用時のルールについて、これまでと大きく異なる変更が加えられたため、今回は主な変更点およびその背景について考察したいと思います。

これまでの「青春18きっぷ

まずは、これまでに発売されていた「青春18きっぷ」の基本的なルールをおさらいしておこうと思います。一言でまとめると、

「旅客鉄道会社線(JR線)全線の普通列車の普通車自由席がのべ5日間乗り放題になる」

というものでした。

ここに示される「旅客鉄道会社線(JR線)」とはJR北海道JR東日本JR東海JR西日本JR四国JR九州の6社のことを指しており、すなわち北海道から九州までの全てのJR線が乗り放題になるというきっぷです。

また「**普通列車の普通車自由席**」と書きましたが、ここでいう普通列車には各駅停車のほか各種快速列車(「特別快速」「新快速」「快速エアポート」「快速マリンライナー」等)も含まれます。そしてそれらの「普通車自由席」ですから、基本的には座席の指定を受けることなく乗車できる車両であればどれでも乗り放題です。何回途中下車をしてもよいですし、一度来た道を戻っても問題ありません。

そして「のべ5日間」、これが今回の話題のカギでもあります(詳細は後述)。これまでの青春18きっぷは、1枚で5日分の利用が可能となっており、券面には5回分の入鋏印(旅行中であることを証明する日付入りのスタンプ)を押すスペースが取られていました。複数人での使用が可能だったため、1人で日帰り旅行を5回する、1人で1泊2日の旅行をした後残り3回分は3人で日帰り旅行をする、5人で日帰り旅行を1回する…等、自由な使い方ができたことがその大きな特徴です。

また、それ以外のルールについてもおさらいしておきます。

他にもこまごまとしたルールはありますが、大枠としてはご覧の通りとなります。

直近の不穏な動き

2024年に入ってから、青春18きっぷについては様々な憶測が飛び交っていました。というのも、それまでは毎年春・夏・冬の期間の発売が一度にまとめて発表されていたものが、2024年については1月23日時点で春のみの発表に留められていたためです。

これを受けて鉄道ファンの間では、「2024年夏以降は発売されないのか?」といった噂も広まる事態に。しかし一方で、2024年春といえば北陸新幹線の金沢~敦賀駅間延伸開業を控えており、これに合わせて同区間並行在来線もJRから経営分離されることになりました。それら第三セクター鉄道への通過利用特例が整理された上での発表であったことから、当面は発売が継続されるものと捉える人も多かったようです。

2024年夏についても、追って6月18日に発表されました。通常よりも大幅に遅いタイミングでの発表であったこともあってか、発売・利用期間がそれぞれ10日ほど短くなったものの、ルールについて大きな改変はなく、これまで通り比較的自由な使い方にて利用することができていました。

2024年冬「大幅リニューアル」へ

しかし2024年10月24日、ついにその歴史が大きく動く事態となります。

発表された「2024年冬」の青春18きっぷについて、使用方法に関するルールが大きく変更されることになりました。ポイントは主に以下の通りです。

基本的な効力の面においては変更はなく、券の様式の変更がメインとなります。

しかし、この変更は一見些細なようで実はとても大きな旅行様式の変化が生じうる改変なのです。

①自動改札機について

これまでは自動改札機を通すことができない120mm券、通称「長いきっぷ」であったため、利用開始の際には有人改札にて利用人数分の入鋏印を直接押してもらう必要がありました。また途中下車時にも必ず有人改札を通り、係員の方の目視をもって有効な乗車券類であることを確認してもらう必要がありました。青春18きっぷの利用期間は通年ではなく限られていることもあり、春・夏・冬の各利用期間になると主要駅の有人改札にには青春18きっぷユーザーで長蛇の列ができ、改札口の入場・出場には時に大幅な時間を要することが利用者目線でのデメリットとしてもしばしば挙げられていました。

都市圏の駅であれば自動改札機が整備されている昨今、これを利用可能とすることで有人改札の混雑緩和が期待され、利用者としては改札通過に時間を要することがなくなります。また事業者の目線に立って考えてみると、これまでは手作業で入鋏および改札通過を行っていたため把握しにくかった「青春18きっぷ利用者の実数」について自動改札機の記録を元に情報を得ることができるようになります。

②連続する3日間・5日間のみの発売について

これまでは単一の利用期間内であれば離れた日程でも1枚の券片を利用することができ、まとまった休みが取れずとも気軽に利用することができていました。しかし今後は利用日数が連続している必要が生じるため、例えば「週末に2回分使ったので続きは次の週末に」等といった利用の方法はできなくなります。また同様の理由から、今後は1枚の券片を複数人で利用することもできません。これに伴ってか、これまでの5日間用のみならず新たに「3日間用」が設定されることになりましたが、5日券の金額が据え置き(12,050円)であるのに対し3日券は10,000円となっており、割高感は否めません。

5日券:12,050円÷5日=2,410円/日
3日券:10,000円÷3日=約3,333円/日

(参考)秋の乗り放題パス
2024年:7,850円÷3日=約2,618円/日

また上記の通り、青春18きっぷの代替商品として秋に発売されている「秋の乗り放題パス」については青春18きっぷの3日券と同様に期間内の「連続する3日間利用可能」で乗車可能な列車の効力は青春18きっぷと同じですが、何と1枚7,850円。実質的に約27%の値上げとなっており、2025年以降は秋の乗り放題パスも同様に1枚10,000円での発売となる可能性があります。

北海道新幹線オプション券リニューアルについて

青森県と北海道を結ぶ青函トンネルでは、現在在来線の定期列車が運行されていません。これに対する救済措置として2016年の北海道新幹線新青森新函館北斗駅間延伸開業時から発売されているのが「**青春18きっぷ北海道新幹線オプション券**」です。

これまでのオプション券の効力は、当日有効な青春18きっぷを所持している場合に「北海道新幹線奥津軽いまべつ木古内駅間」および「道南いさりび鉄道木古内五稜郭駅間を片道1回ずつ限りにおいて利用可能」というもの。奥津軽いまべつ駅は新幹線単独駅ですが、JR津軽線津軽二股駅と近接しており、徒歩での乗り換えが可能なため、これにより青春18きっぷとそのオプション券を併用することで青森県と北海道の間を移動することができていました。

なお道南いさりび鉄道では青春18きっぷ単体での通過利用の特例等は設けられておらず、オプション券を組み合わせた場合であっても道南いさりび鉄道線内での途中下車はできません

しかし今回発表された新たな「オプション券」においては、新幹線の利用区間新青森駅まで拡大されています。これにより奥津軽いまべつ駅津軽二股駅での徒歩乗り換えの必要はなくなり、津軽線を経由することなく青函間を移動できるようになります。また、同時にこの「オプション券」についても自動改札機の利用が可能になるため、新青森駅木古内駅では青春18きっぷと「オプション券」を2枚重ねて自動改札機へ投入すればよいということのようです(道南いさりび鉄道の駅には自動改札機がなく、木古内五稜郭駅間の移動に際しては引き続き係員の手作業での入鋏が必要となります)。

この改定の背景にあるのは、**津軽線蟹田三厩駅間が2022年8月に発生した豪雨災害により長期に渡り不通となっている**ことが大きな要因といえます。津軽線は青森~三厩駅間を結ぶ路線ですが、元々蟹田駅を境に普通列車の運行系統が分離されており、蟹田以北は極めて列車本数が少なくなっていました。豪雨災害を機に路線の存続について議論がなされた結果、同区間は事実上の廃止がほぼ確定しており(時期は未定)、こうなると津軽二股駅での新幹線への徒歩乗り換えは今後不可能となるため、先んじてオプション券の改定に踏み切ったとみられています。なお同区間では列車代行バスが運行されており、鉄道路線として正式に廃止されるまでは一応JR線としての扱いのため青春18きっぷで乗車することも可能です。

また、北海道新幹線奥津軽いまべつ駅は新幹線駅でありながら1日平均乗車人員が30名ほどしかなく、停車する新幹線も非常に少ないため、当駅徒歩乗り換えでの新幹線と津軽線の接続はほぼ考慮されておらず、場合によっては周囲を山に囲まれた中で数時間待つという難易度の高い乗り換えでした。

今後は新青森駅より新幹線の利用が可能となることで、この利便性は大きく改善されるといえます。新青森駅は全列車が停車する駅であり、同駅にて接続する奥羽本線普通列車津軽線の末端区間に比べれば格段に本数が多いためです。木古内駅は依然として新幹線と道南いさりび鉄道の接続があまり良くない時間帯もありますが、その酷さは奥津軽いまべつ駅ほどではないため、接続の良い時間帯を選んで移動することは十分可能です。

新幹線の利用区間が拡大されたことで、金額は2,490円から4,500円へと値上げされました。これは従来の約1.8倍です。青森~函館間では「青函フェリー」および「津軽海峡フェリー」が運航されており、時期にもよりますが青函フェリーなら2,200円から利用可能です。こうなるとやはりこれまで以上に青春18きっぷ利用者の多くがフェリー利用へ流れる可能性は考えられるものの、オプション券についても新青森駅乗り換え可能および自動改札機対応の面で利便性が拡大される部分もあり、シェアの変化については現時点で何とも断言し難い部分ではあります。そもそもこの「オプション券」自体、これまで鉄道ファン以外の利用はほぼ想定されていなかったものですので、これをもって大きな収益源にするというよりは一応の救済措置として設けられているにすぎない商品であるともいえます。

大幅リニューアルの背景

今回の一連の発表を受けて、鉄道ファンからは様々な声が上がっています。

先に申し上げておくと、先述した主な変更点の3つのうち「オプション券」については利便性の低下を招くマイナス要素がほとんどなく、そもそも「オプション」であるため、ここでは触れません。

本券の変更点のうち、やはり最も大きな衝撃が走っているのは「連続する日程でのみ利用可能」という点です。先ほどの話とも重複しますが、青春18きっぷはその有効期間内において1枚の券片を複数名で利用できたり、バラバラの日程で利用できたりする自由度の高さが大きな人気となっていました。もちろん鉄道旅行の中~上級者であれば連続5日間で利用する場合もありましたが、一方で普段それほど鉄道旅行をしないライトな層であっても気軽な日帰り旅行ができるツールとして、その知名度は比較的高かったように思われます。

青春18きっぷ」という呼称およびその設定の意図に即し、10~20代の若者の利用も多かった一方で、大人や中高年であっても積極的な利用が見られたのも「バラバラの日程で利用できた」からこそ。社会人になるとなかなか連続5日間も会社を休める機会というのはそうそうなく、これまで利用期間内の土日に限定して利用していたという社会人の人も今後はほぼ必然的に平日を利用期間に含める必要があるとなれば、購入者の減少は避けられません。高校や大学が休みとなる期間において連続3日あるいは5日の旅行ができる若者はいるでしょうが、層としては「ヘビーな乗り鉄」に限定されることとなり、若者の中においてもやはり購入者は減少することでしょう。

なぜこんなにも利用者へのデメリットが大きな形で変更されたのか、それは先に示した「自動改札機への対応」に伴うものであると考えられます。自動改札機は1枚の券片で複数人が一度に通過することはできず、「自動改札機へ対応」はすなわち「複数人での利用不可」とほぼ同義であることを意味します。

都市部・郊外を問わず、近年では駅の無人化や改札口の無人化が進められています。改札係員の数が減らされていく中で「青春18きっぷ」の入鋏および確認作業は有人改札の業務の大きな負担となっていることは間違いなく、自動改札機への対応はこの負担を大きく減らす目的があると思われます。

ではなぜ、「5回分を全て1枚ずつの券片に分ける(回数券タイプ)」とならなかったのでしょうか。5回分が1枚ずつに分かれていれば、自動改札機へ対応させつつもこれまで通りバラバラの日程や複数人での利用も理論上は可能なはずです。

実は元々、1996年頃まで青春18きっぷはこの「回数券タイプ」での発売でした。しかしJRの旅客営業規則においては、使用開始後の乗車券類を他人に譲渡することは不正乗車にあたると定められており、直近28年間ほどの「5回分を1枚の券片にまとめる」スタイルはこれをより厳密に運用する可能性であるとも捉えられます。

また、1996年以前・以後を問わず、余った分を金券ショップやインターネットオークション等で転売し、少ない回数を購入することが可能となっていました。JRにしてみれば、本来12,050円を納めてくれるかもしれなかった顧客が金券ショップ等に流れることでこの分の収益を得られなくなり、大きな損失となっていたことは事実です。これを防ぐ最大の方法は「連続利用限定」であり、これに伴い必然的に「複数人での利用は不可」とせざるを得なくなりました。

今後の予想

今回の大幅リニューアルが利用者からの批判を浴び、同時に発売枚数の大幅減となることはもちろんJRも織り込み済みでしょう。今後JRが取る可能性のある展開について、個人的にいくつか予想をしてみたいと思います。

①ルールの修正を行いながら発売継続

今回の変更はあくまでも試験的なものであり、今回の発売状況・利用状況を鑑みて2025年春以降はルールを修正しながら発売を継続していく、とする予想です。

具体的な修正内容としては、もちろん回数券タイプでの発売となれば利用者目線では大変有難い話です。しかし先に示した転売対策を考慮すれば、回数券タイプとなる可能性は極めて低い(→「連続日程のみ利用可能」が揺らぐことはない)と考えられます。

考えられるルールの修正は、例えば次の通りです。

いずれも、券自体の1回分あたりの金額は上がることが予想されます。しかし元々あまりにも安すぎるきっぷですから、利便性が向上するとなればある程度の値上げは許容されるようにも思われます。

②利用者減少→廃止へ

発売枚数が減少すれば、民間企業であるJRにとっては本券を廃止する口実となります。今回の大幅リニューアルによって実際に発売枚数が減少したという結果を得ることができれば、廃止に向けた大きな足掛かりとなるはずです。

そもそも「JRは青春18きっぷを廃止したい」とはよく言われるものの、これはなぜなのかを考えてみます。当然ながら紙のきっぷの印刷には大きなコストがかかり、これを削減すべくJR各社はインターネット予約を徐々に拡大させています。既に多くの新幹線・特急がチケットレスで乗車できるようになっており、その傍らで利用実態の乏しい・コストに見合わない企画乗車券は順次廃止へ追い込まれています。

個人的には…

①②どちらの可能性も考えられる、というのが現段階での正直なところです。しかしもしどちらかの可能性にどうしても絞り込むのであれば、個人的には①なのではないかと考えています。その根拠は、第三セクター鉄道への通過利用の特例や「オプション券」の設定自体が維持されたという点です。

仮にこのきっぷをJRが廃止したいとなれば、そのサービス自体はどんどん縮小していくはずです。フリーエリアを狭めたり、細かなルールはこれを機に一掃してしまえば、より分かりやすく利便性の低下を発生させることができ、効率的に廃止へ追い込めるはずです。

しかし現実には、フリーエリアや利用可能な列車・路線については概ね2024年夏から維持されています。それどころか、利用実態が乏しいはずの「オプション券」はむしろ分かりやすく利便性が向上しているのです。そもそも津軽線の末端区間廃止を見込んでの新幹線利用区間拡大と捉えれば、今後も当面発売を継続する心意気である可能性は十分に考えられます。JR各社にとって大きな収益源とはならずとも、逆に廃止するほどのものでもないといったところでしょうか。

最後に

長々と偉そうにいろいろ書いておりますが、公式に発表されている情報以外は全て私の憶測や予想にすぎません。2025年春以降の発売については、今後詳細な発表があることを期待しつつ、新たな情報を待ちたいと思います。

【公式発表(JR東日本プレスリリース)】
「青春18きっぷ」「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」の発売について (jreast.co.jp)

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

▼前回の記事

watakawa.hatenablog.com

2024年8月12日(月)

本日は、宿泊先の「宇和島第一ホテル」にて優雅な朝食バイキングからスタート。

品数はそれほど多くなかったものの、名物の「じゃこ天」をいただくことができ、また旅行中に不足しがちな生野菜をしっかり摂ることができたので満足です。さらに私はカレーが好きなので、朝から好きなだけカレーを食べることができたのも満足度高めでした!

チェックアウトし、650mほど歩いて**宇和島駅**へ。

本日はこれから予土線土讃線経由で高知方面へ向かい、そのまま最終的には夜までに高松へと向かいます。

今回乗車するのは、**宇和島9時33分発の予土線〔しまんトロッコ2号〕窪川行**です。

予土線窪川宇和島駅間約80kmを結ぶ路線(正確には若井~北宇和島駅間)で、特急列車の運行はありません。また普通列車の本数も極めて少なく、全線を通して走る列車は1日わずか4往復のみです(このほか宇和島~近永・江川崎駅間の区間列車が1日計6.5往復)。

しかしそんな少ない本数の中でも予土線では観光列車が充実しており、今回乗車する「しまんトロッコ」もその一つ。元々は1960年代に製造された貨車を国鉄末期の1984年にトロッコ車両として改造し、現在は普通列車の後ろに連結して運行しています。

宇和島9時33分発の普通列車窪川行、これ自体は毎日運行されています。そしてしまんトロッコ運行日はこの定期列車の後ろにトロッコ列車を連結して走行するようになっています。しまんトロッコは全車指定席ですが、トロッコ運行区間江川崎~土佐大正駅間のみのためそれ以外ではトロッコ車両に立ち入ることはできません。

普通列車の方もトロッコ車両に合わせた黄色の塗装がされており、こちらは乗車券のみで乗車可能です。キハ54形と呼ばれる2ドアの気動車です。

宇和島~江川崎駅間、および土佐大正窪川駅間においてはトロッコ車両は「回送列車」扱いのため、指定席券も江川崎~土佐大正駅間のみで発行されます。宇和島駅を出るまでに指定席券はあらかじめ購入・発券をしておきましょう。

松山方面からやってきた特急〔宇和海5号〕(定刻宇和島9時30分着)が若干遅延していたようで、こちら予土線は接続を取ってから発車。乗り換え客が一斉に1両の気動車へ乗り込むと、座席はほぼ埋まり、立ち客も出るほどの混雑となりました。お盆という時期もあり、ほとんどが観光客といった様子です。

予土線は定刻よりも2分ほど遅れ、9時35分頃に宇和島駅を発車。次の北宇和島駅までは予讃線を走り、北宇和島駅を出ると右に分岐します。その先次の務田駅までは実に6.3km離れており、30.0‰もの急勾配が待ち構えています。

務田より先は鬼北町、松野町といった山あいの小さな町の中心地を通り、さらに内陸へ進みます。松丸駅では親子連れの乗客が一気に降り、車内に少し余裕が生まれました。

車窓に見える広見川には「沈下橋」が架けられています。これは欄干のない橋で、台風等で河川の水位が上がっても土砂をせき止めにくく、流木等も引っ掛かりにくいため壊れにくい造りとなっています。

その後愛媛県から高知県へと入り、10時43分頃に江川崎駅へ到着。当駅を始発・終着とする普通列車も設定されている主要駅で、1日平均乗降人員は50人ほどです。

さて江川崎駅からは車内を通り抜けてトロッコ車両に移動し、いよいよ「しまんトロッコ」の旅がスタートです!

トロッコ車両は4名1区画のボックスシートになっていますが、相席を覚悟であれば1名からでも購入できます。各区画には木のテーブルがありますが、椅子はというと背もたれもなく、座面には申し訳程度のクッションが取り付けられているのみ。もちろん「トロッコ」なので窓はなく、テーブルに物を置いているとたぶん風で飛ばされます。

江川崎駅を定刻よりも5分ほど遅れて、10時50分頃に出発。

この江川崎駅がある高知県四万十市江川崎は、ちょうど11年前の2013年8月12日に当時の観測史上最高気温である41.0℃を記録したことでも知られています。この記録は5年後の埼玉県熊谷市が41.1℃を観測したため1位の記録は塗り替えられてしまいましたが、今なお四国において屈指の「暑い町」として知られています。

なお気象庁によると、今回の訪問時の江川崎の気温は34.6℃(午前11時)であったとされており、史上最高気温と比べるとだいぶ涼しく感じます(バグ)。

ここから先、予土線四万十川に沿って進んでいきます。予土線には「しまんとグリーンライン」の愛称が付与されており、その名の通り木々の色が水面に映る緑色の鮮やかな景色が楽しめます。

江川崎駅の一つ隣は「半家(はげ)駅」。その読み方のユニークさもあり珍駅名として知られています。余談ですがかつてJR北海道留萌本線に「増毛(ましけ)」という駅があり、「半家→増毛」と移動する旅が薄毛の方を中心に人気となっていたようです。

上流へと向かう四万十川の流れはくねくねとしており、線路は何度も四万十川を橋で越えることになります。もちろんトロッコ車両なので冷房設備はありませんが、常に四万十川が近くを流れていることもあってか涼しい風が車内へ入り込んでくるため、それほど過酷な暑さではありませんでした。

車内では検札が行われ、記念乗車証と缶バッジが配布されます。ガタゴトと揺れの激しいトロッコ車両で、しかも何かの拍子にきっぷが外へ飛んでいってしまいそうになりながらも行われる検札はスリル満点です(笑)。

トロッコ車両に乗車できる江川崎~土佐大正駅間の距離は25.1kmで、ここを約50分かけて走ります。普段乗り慣れた首都圏の通勤電車と比べると実にゆっくりとしたスピードで、見える景色から車両の設備まで全てが都会とは真逆で、私にとっては非日常感にどっぷりと浸かることができる体験です。日本の夏ここにあり、まるで絵に絵に描いたような原風景をたっぷりと味わい尽くします。

また、先ほどの記念乗車証・缶バッジとは別に、7・8月の期間限定で乗客全員にオリジナルの不織布ショルダーバッグもプレゼントされました。たった530円の指定席料金のみで、歴史ある貨車に乗れるだけでも十分貴重なのに、こんなにいろいろもらえてしまって本当によいのでしょうか…!!

また、私は今回利用しませんでしたが、「しまんトロッコ2号」に限り乗車日3日前までに電話予約を行うことで江川崎駅にてお弁当を受け取ることができ、そのままトロッコ乗車中にいただくことができます。「四万十牛カルビ丼」「四万十牛肉みそしぐれ丼」の2種類(いずれも700円)で、実際にこの時も何名かの方が召し上がっていらっしゃいました。とても美味しそうではあるものの、常に風が吹き込む車両でのお弁当はややレベル高めかもしれません。

11時38分頃、定刻よりも1分ほど遅れて列車は**土佐大正駅**に到着。トロッコ車両の営業はここまでとなりますので、再び先ほどまで乗車していた普通列車の方に移動します。

土佐大正駅もまた、予土線の運行においては主要な役割を果たす駅の一つ。当駅では宇和島行の普通列車との行き違いを行います。この宇和島行の方には0系新幹線をイメージした「鉄道ホビートレイン」が充当されています。

11時42分、列車は土佐大正駅を発車。ここでようやく遅れを回復させることができました。引き続き四万十川に沿って走っていきます。

家地川駅を出てしばらく進むと、宿毛・中村方面からやってくる土佐くろしお鉄道の線路が左側から合流します。この合流地点は「川奥信号場」となっており、まもなくすると列車は若井駅に到着します。

最後の一区間である若井~窪川駅間は土佐くろしお鉄道となっており、予土線普通列車青春18きっぷ等で乗り通そうとするとこの区間だけ別途精算が必要となります。ただ、私が今回使用している「若者限定四国フリーきっぷ」については同区間もフリーエリア内に含まれるため心配はいりません。

宇和島を出てから約2時間30分、12時11分に列車は終点の**窪川駅**に到着!

窪川駅からは高知・阿波池田多度津・高松・岡山方面に繋がる土讃線がのびており、当駅には特急列車もやってきます。

折り返し宇和島行の〔しまんトロッコ1号〕は窪川13時21分発となります。トロッコ車両への乗車区間は同じく土佐大正~江川崎駅間のみですが、2号と異なりお弁当の取り扱いは行っていません。

また、窪川駅の出札窓口はしまんトロッコ組成作業に伴い一時的に閉鎖されます。少ない人員で何とかやりくりをしている苦労が窺えます。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

2024年10月13日(日)

本日は、JR青梅線青梅駅へとやってきました。

お台場の「青海(あおみ)」ではなく西多摩の「青梅(おうめ)」です。確かに漢字は似ていますが、どうやら本当に間違える人もいるそうで…。

そんな話はさておき、本日は中央線・青梅線にとって記念すべき新たな歴史の始まりを告げる一大ニュースが待ち構えていました。

「中央線・青梅線 グリーン車運行開始」です!!!

オレンジ色の帯で運行されているE233系中央快速線について、JR東日本は2025年春より2階建てグリーン車の営業運転を開始すると発表しました。これに先駆け、「お試し期間」として本日10月13日(日)より一部の編成にグリーン車が連結されています。

グリーン車を連結して運行するのは、中央線の東京~大月駅間および青梅線の立川~青梅駅間です。これまで10両編成だった中央快速線系統の列車は、普通車の両数を減らすことなくグリーン車を間に組み込むため本日から「12両編成」と案内されることになります。

ホーム上ではグリーン車の乗車位置を示すステッカーも準備され、準備は万全。ただしあくまでも「お試し期間」なので2025年春まではグリーン車も普通車としての扱いになり、グリーン券を購入する必要はありません

4番線ホームで待っていると、東京方面から当駅止まりの列車として10時49分に入線。折り返し青梅11時02分発の青梅特快 東京行となります。

まず車体側面をご覧いただくとお分かりの通り、これまでの他の路線の普通列車グリーン車との最大の違いは「ドアが両開き」である点です。

中央快速線は東京駅を始発・終着として運行していますが、その東京駅では中央線ホームが1・2番線の2つしかなく、一日を通じて極めて短い時間で折り返し作業を行わなければなりません。特に朝夕ラッシュ時等は大変な混雑が見込まれる中で、東京駅のみならず途中駅も含め短い時間で全ての乗客の乗降を完了させるべく、他の路線の普通列車グリーン車よりも幅の広いドアが設置されているのです。

グリーン車は4・5号車の2両で、ドア横の四つ葉のマークも隠されることなく堂々と掲げられています。中央快速線ではこれまで10両の固定編成と6+4両の分割編成が存在しており、分割編成については6両側に組み込まれるため8+4両となります。

デッキ部分もドアと同様に広いものの、車端部が平屋席となっている構造は他の路線の普通列車グリーン車と同じです。デッキの広さ故、平屋席の席数が他の路線の普通列車グリーン車よりも少なくなっています。

デッキ部分にはグリーン料金表も貼り付けられているものの、ドア部分では「ただいまこの車両は『普通車』としてご利用いただけます。」という案内もまたなされています。一番左のステッカーが見られるのは約半年間限定ということになりそうです。

なお、2025年春以降の中央快速線グリーン料金体系については現行の他の路線と同じものが適用されますが、東京駅や新宿駅で**中央快速線以外の路線と乗り継いで料金を通算することはできません**。また中央線(立川以西)と青梅線立川駅で乗り継ぐ場合も通算はできないため注意が必要です。

青梅駅では入線の数分前から並んでいたところ、何とか窓側の座席を確保することができました。モケットの色は横須賀線総武快速線E235系グリーン車と同じと思われますが、本格的なグリーン車サービスの開始前のためかヘッドカバーは取り付けられていません。

普通車扱いのため座席頭上のランプは稼働しておらず、グリーンアテンダントの方も乗務されていません。車内販売はなく、またこのお試し期間中はグリーン車内のトイレ・ごみ箱・Wi-Fiも利用できなくなっています。

各座席には背面テーブル・ポケット・フックが備わっており、こちらは利用することができます。また各席ひじ掛けにコンセントがあり、こちらはお試し期間の本日より利用することができました。

なお現在は終着駅での車内清掃は行われないため、座席の向きを乗客が自主的に転換する様子が見られました。本日は初日とあって私を含め鉄道ファンの利用も多いためこの辺はスムーズで、転換手順こそ異なるものの東海や関西の転換クロスシートを彷彿とさせる光景でした。

11時02分、時刻通りに列車は青梅駅を発車。この先立川までの各駅と、国分寺三鷹、中野、新宿、四ツ谷御茶ノ水、神田、終点東京に停車します。

気になる2階席の混雑ですが、青梅駅を発車する時点で既に窓側は全て埋まっていた様子です。通路側であれば比較的余裕があり、着席も可能なようでした。

客室内前方のモニターはフルカラーディスプレイで、普通車のデザインとも異なっています。客室後方からでもしっかりと文字を視認できるよう、レイアウトに工夫がなされているように見えました。

青梅線内の途中駅からもどんどん乗車があり、次第に車内の混雑が激しくなっていきます。

グリーン車と普通車ではドア数・ドア位置が異なるため、各駅ホームのグリーン車の前で待っていた人が列車の到着と同時に普通車の方まで移動している様子も見られました。もしかするとグリーン車の「お試し期間」の周知が少し不足しているのかもしれません。

グリーン車が連結されている列車については、JR東日本アプリから確認することができます。「中央線快速電車」の列車走行位置ページを開くと、列車ごとに両数が記載されているため、特急以外で「12両」の記載のあるものがグリーン車を組み込んだ編成です。なお拝島駅到着直前にアプリで混雑状況を確認したところ、グリーン車についてはしっかり「満席です」と表示されていました。

運行初日の本日は、グリーン車を組み込んだ編成が3編成運用されているようでした。

定刻よりも1分ほど遅れて、11時20分頃に**拝島駅**へ到着。当駅の発車時刻は11時25分のため、ここで遅延は回復できそうです。

他の路線との乗り換えについては、グリーン車客室内のディスプレイでもしっかりと案内されます。

2階席は目線が高いため、各駅ホーム上において時計や発車標、駅名標等との距離が近くなります。中央線の新宿~小淵沢駅間では2020年11月までオール2階建て車両「215系」を使用した臨時列車「ホリデー快速ビューやまなし号」が運行されていましたが、青梅線内で2階建て車両が運行されることはおそらくこれまでほぼなかったのではないかと思います。

拝島駅を発車すると座席は通路側を含めほぼ満席となりましたが、通路はしっかり通れるような状態です。おそらくデッキは混雑していることでしょう。

立川駅の一つ手前、青梅線西立川駅まではドアが半自動(ボタン式)で扱われ、立川駅からは自動で開くようになります。

さて、まもなく列車は”運命の”立川駅へと到着します。立川からはそのまま中央線へ直通し、新宿・東京へ向かうことになります。

本日はグリーン車の運行開始初日。東京~立川駅間では特に多くの利用が見込まれるため、その混雑に巻き込まれることなく始発駅の時点で座席を確保しておきたかったがために私はわざわざ青梅へ向かったのです。

立川駅へは、定刻よりも3~4分ほどの遅れをもって到着。もちろん当駅での下車もあるものの、それ以上に多くの乗車がありいよいよ乗客の波が2階の通路にまで押し寄せてきました。

このグリーン車の混雑は、当然ながら「運行初日」という理由がその最たるものでしょう。しかしアプリで確認すると、どうもこの青梅特快は普通車の方も同様に激しく混雑していたようで、もはやどの号車に乗っても地獄という状況だったみたいです。

立川駅を発車し、中央線に入ると直線的な高架となります。いよいよ「青梅特快」としての速達運転を行う区間に入り、まずは国立・西国分寺を通過します。とはいえ中央線が全体的に遅延ぎみの本日、どうも前が詰まっているようでこの列車もなかなか本領発揮とはいきません。

国分寺駅の手前では、西武国分寺線と並走します。これまでなかなか見ることのできなかった視界を、2階席から楽しむことができます。

国分寺駅ではつっかえていた先行の快速列車との緩急接続を行います。

ホーム上はとにかく人、人、人だらけ…!

グリーン車の物珍しさが元々の休日の混雑に拍車をかけ、さらに遅延が増大していきます。

車内では、グリーン車に追加料金なしで乗れるという直接的な文言こそなかったものの、「全ての車両が普通車です」「ごみはお持ち帰りいただき、車内美化にご協力をお願いします」というアナウンスが繰り返しなされていました。グリーン車の通路にまで人が押し寄せるほどの混雑ですから、いずれにせよもうこれ以上4・5号車に人が乗り切れなくなる、その寸前のところまできていたのだろうと思います。

続いて列車は三鷹、中野に停車。グリーン車内は鉄道ファンのみならず、そうでない一般の方も多くてんやわんやです。短区間だけお試しで乗ってみたはいいもののまともにくつろげる状況でなく、かといって降りようにも通路まで人が押し寄せていてなかなか降りられない…という光景が客室の前後で巻き起こっていました。

新宿駅のように乗り換え路線が多い駅であっても、路線名は複数ページに分けて表示することで文字一つ一つが普通車よりも大きく表示できているように思います。新宿駅での乗り換え路線数は3ページにも渡りました。

歌舞伎町を横目に、列車はまもなく新宿へ。この景色もまた、2階建てゆえにいつもと少し違って見えます。

定刻よりも6分ほど遅れて、新宿駅に到着。ここでの降車はやはり多かったですが、それでもやはり乗車の波もあったため結果的に車内の混雑具合はそれほど大きく変化することなく発車となりました。

中央線の特急は多くが新宿止まりですから、新宿より先もリクライニングシートで向かうことができるのがこの普通列車グリーン車の強みといえます。神田川に沿って走る区間では中央・総武線各駅停車と並走しつつも、やはり快速線の方が停車駅が少ないためあっという間に差をつけていきます。

やがて山の手の東側へと移動し、神田駅に到着。横の線路には2015年に開業した上野東京ライングリーン車が日夜行き交いますが、神田駅に「停車する」グリーン車となるとこの中央快速線が初めてのことです。

各路線のホームを見下ろす形で、列車は終点の東京駅へ入線します。ただでさえ他の路線よりも高い位置にホームがある中央線ですが、さらに2階部分ともなると相当な高さです。

所定では12時17分到着予定のところ、7分ほど遅れて12時24分頃に到着。折り返しは12時21分発の中央特快 高尾行ですが、既に出発時刻を過ぎています。

東京駅のグリーン車乗車位置付近に並ぶおびただしい数の人は青梅駅のそれとは段違いで、まるでお盆の新幹線のUターンラッシュのようでした。おそらく列の後方の人は着席できていないと思いますが、それでも何とか乗り込めるだけ乗り込んで、普通車もグリーン車も満員の状態で定刻6分遅れの12時27分頃に東京駅を発車していきました。

2025年春以降のグリーン車サービス開始において、東京駅での折り返しの車内清掃を完了させられるのかというところに一抹の不安は覚えるものの、やはり本格的なサービス開始も楽しみです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

2024年8月8日(木)

本日は東海道新幹線の**新横浜駅**へとやってきました。これから、飛行機を利用して島根県の出雲へ向かいたいと思います。

首都圏に住んでいると、空港として真っ先に思いつくのは羽田空港・成田空港です。いずれの空港にも国内線・国際線両方が就航していますが、特に国内線の空路が充実しているのは羽田空港の方でしょう。

横浜駅から羽田空港はリムジンバスで30~40分ほどあれば移動することができます。しかし本日はお盆へと差し掛かる日でもあり、羽田~出雲を結ぶ便は絶賛価格高騰中。

ということで、今回は羽田空港でも成田空港でもない、個人的に穴場だと思う空港から飛び立ちたいと思います。その穴場の空港へ向かうべく、新横浜11時21分の〔ひかり509号〕岡山行に乗車。

車内では少し早めのお昼ご飯に、炭火焼牛カルビ弁当(1,100円)をいただきます。甘いたれのしみ込んだお肉がご飯によく合います!

乗車すること約40分、12時02分に静岡駅へと到着。ここで新幹線を降り、改札口へと向かいます。

静岡駅のコンコースには、東海道新幹線開業60周年を記念したモニュメントが展示されておりました。

…とまぁそんなことはさておき、果たしてここから一体どうやって出雲へ向かうというのか…。

静岡は本日雲一つない絶好のおでかけ日和。せっかくなら名物のさわやかでハンバーグでも食べていきたいところなのですが、あいにくそんな時間はありません。

ここからどのようにして出雲へ向かうのか…というと、そう。**静岡空港を利用する**のです。

静岡駅の北口14番乗り場からは、静岡空港へと向かうバスが発車します。乗車するのは静岡駅前12時25分発で、行先は「富士山静岡空港」と表示されています。

しばらくすると、新静岡駅にて若干名の乗客をのせたバスがこちらへやってきました。静岡駅北口の乗り場ではそこそこ長い乗車列ができています。

列の後ろの方でしたが無事に乗り込むことができ、バスは静岡駅前を出発。これより途中数ヵ所の停留所を経由しながら、静岡空港へと向かいます。なお交通系ICカードも利用でき、静岡駅~静岡空港間の運賃は1,100円でした(2024年10月1日より1,200円へ改定されたようです)。

静岡駅~静岡空港は約35km離れており、アクセスは決して容易ではありません。この距離、鹿児島中央駅鹿児島空港とだいたい同じくらいなので、市街地~空港の距離としてはかなり離れた部類になるかと思います。そもそも静岡空港の所在地は静岡市ではなく牧之原市島田市の境目辺りにあり、焼津市藤枝市をも飛び越えた先になっています。

途中東名高速道路も使い、吉田ICで降りてからはのどかな田園風景の広がる一般道を進みます。こんなところに本当に空港があるのか…と不安になります。

静岡駅から約50分ほどで、ようやく**静岡空港**に到着!

横浜駅を出てから既に約2時間が経過しております。

静岡空港は2009年に開港し、今年で15周年を迎えました。「富士山静岡空港」の愛称が付けられていますが、肝心の富士山はここから80kmほど離れています。

ターミナルビルへ入り、2階へ上がるとフードコートや土産物店があります。お昼ご飯はここで食べてもよかったかもしれません。

2024年夏現在、静岡空港に就航する国内線の行先は札幌(丘珠/新千歳)、出雲、福岡、熊本(8/9-18のみ)、鹿児島、那覇。また国際線はソウル(仁川)、上海(浦東)、杭州台北(桃園)への便があります。国際線で毎日就航しているのはソウル便のみで、静岡17時55分発となっています。

この時間帯、国際線の出発はなかったものの国内線で新千歳便と私の乗る出雲便の2便の出発時刻が近かったため、保安検査場はやや混雑。1レーンのみの開設で、お盆につき手荷物検査に不慣れな乗客も多いため、流れはやや悪かったように見えました。

無事に保安検査を済ませ、搭乗開始まで搭乗口付近で待機します。普段羽田空港ばかり利用する私としては、保安検査をくぐった後は左右を見渡して目的の搭乗口を歩きながら探すという印象がありますが、ここ静岡空港の搭乗口は5番・6番の2つしかないようでした。

今回私が利用するのは**静岡空港14時15分発のFDA185便 出雲空港です。静岡→出雲を結ぶ便は1日1往復のみで、約2か月前に予約したところ13,840円**でした。JRで静岡~出雲市駅間を移動すると乗車券のみで11,000円、そこにさらに特急券等が上乗せされることを考えると、鉄道より安いことは間違いありません。

静岡空港を発着する国内線については、新千歳便の一部と那覇便を除き全てFDA(富士ドリームエアラインズ)による運航で、かつその全てがJALとの共同運航便になっています。

FDAは2008年に設立された新しい航空会社で、静岡・名古屋(小牧)・神戸の3空港を拠点に就航しています。東京(羽田・成田)や大阪(伊丹・関西)には一切就航しておらず、首都圏育ちの私としてもあまり馴染みがないというのが正直なところです。

使用される機材は小型ジェット機で、1機ごとにカラフルな塗装がなされています。これらは「エンブラエルE170/175シリーズ」と呼ばれ、中でも今回出雲便に使用されるのはイエローの機材でした。

いざ搭乗が始まり、機内へ進みます。座席は2+2列の配置で、左から順にA,C,H,Kという不思議なアルファベットの振り方になっていました。私は右の窓側席なのでK席です。

各座席背面のポケットには各種案内が入っており、その中には「小型機材につき座席を勝手に移動すると重心が変わり影響があるかもしれないので指定された座席に座るように」という旨のお願いも入っていました。もちろんどんな航空会社でも指定された座席に座るのは当然ですが、このような案内は小型機材を保有する航空会社ならではという感じがします。

乗車率はパッと見たところ9割程度でしょうか。定員80名ほどの機材ですので、乗客全員の搭乗にはそれほど時間を要しません。出発時刻の約8分後、14時23分頃にいよいよ機体がターミナルビルを離れ、動き出しました。

そして…いざ離陸!

機体が地面を離れると、まず眼下に広がるのは牧之原の田園風景と茶畑です。空港周辺にそれほど建物が密集しておらず、市街地から遠く離れた場所に造られたことがよく分かります。

その後は御前崎付近の上空を旋回しつつ、太平洋へと出ながら少しずつ西へ進路を取ります。

羽田空港を離陸するとまず見えるものといえば横浜みなとみらいや東京湾の工業地帯の景色がおなじみですが、それとは全く違った景色がとても新鮮です。

機内のドリンクサービスでは温かい静岡茶がいただけるということで、せっかくなので静岡茶をチョイス。またシャトレーゼの「梨恵夢」という焼き菓子もついてくるので、なかなか得をした気分です。

美味しいお茶と焼き菓子に舌鼓を打っているうち、飛行機は名古屋を過ぎて木曽三川の上空を進んでいます。濃尾平野の地理を語る上では欠かせない存在で、左から順に揖斐川長良川木曽川となっています。

その数分後には、早くも滋賀県に入り琵琶湖上空へ。琵琶湖は北部上空を飛行するようで、進行方向右側からはわずかな時間しか見ることができませんでしたが、それでも素晴らしい眺めです。

やがて関西へと差し掛かり、進行方向右手には若狭湾の複雑に入り組んだリアス海岸が見えます。ちょうどこの辺りは福井県おおい町付近で、画像右側に見切れている市街地が小浜市です。

さらにその先では、京都府宮津市にある日本三景の一つ「天橋立」もはっきりと確認できました。実際にその土地を訪れるのとはまた違った形で、上空から景色を楽しむことができるのは飛行機の特権です。

いよいよフライトは佳境へ差し掛かり、右手に見えてくるのは鳥取の市街地です。日本海に面した部分が鳥取砂丘でしょう、調べずとも一瞬で分かりました。

着陸間際になると宍道湖の真上で湖面すれすれの超低空飛行をします。それもそのはず、出雲空港があるのはこの宍道湖の西岸なので次に見える陸地が即滑走路というわけです。

15時25分頃、無事に出雲空港へ着陸。実は出雲の市街地と日本海は山々で隔てられており、遠くに見える山はその景色でしょう。

静岡が「富士山静岡空港」ならこちら出雲は「出雲縁結び空港」。愛称はここ10数年ほどのものですが、空港自体は1966年開港と非常に歴史が古いのも面白いところです。

出雲空港はその名の通り島根県出雲市にありますが、実際には松江市の市街地と出雲市の市街地のだいたい中間地点にあります。空港からの連絡バスは松江・出雲のほか玉造温泉方面へ運行されており、レンタカーを利用せずとも山陰各地へ移動可能です。

本日は松江市内の宿を予約しておりますので、**出雲空港15時40分発の松江一畑交通 松江しんじ湖温泉駅行**に乗車します。乗車券は乗車前にターミナルビル内の自動券売機にて購入することができ、運賃は松江駅まで1,050円、松江しんじ湖温泉駅まで1,150円となります。

地方空港あるある、到着便に接続する形で連絡バスが発車するため、少しでも混雑や飛行機の遅延等があるとバスも遅れて空港を出発します。今回このバスも約5分ほど遅れて、出雲空港を出発しました。

大型のバスですが、乗客は私を含めて3名ほどのようでした。何とも贅沢な設備です。

出雲空港松江市街地までは距離にして25kmほどで、この区間については山陰自動車道が完成しているためそちらを利用します。鳥取県山口県日本海側にかけて続く山陰自動車道は現在建設真っただ中で、開通している区間も多い一方で特に島根県内・山口県内はぶつ切りになっている部分も多く、完全には完成していません。

出雲空港を出てから30分ほどで、JR松江駅に到着。私以外の2名の方はここで降りていかれました。

そこからさらに数分で、一畑電車の**松江しんじ湖温泉駅**に到着。JR松江駅からは約2km離れています。

JR松江駅で降りずに松江しんじ湖温泉駅までバスを利用したのは、こちらの方が観光に便利な駅のため。松江しんじ湖温泉駅から北に少し歩くと**松江城**があります。松江城は日本国内に現存する12天守のうちの1つで、かつ国宝5城の一つに数えられています。

入場料は680円で、中に入り急な階段を上った先では松江市街地を一望することができます。

余談ですが、ちょうどこの頃宮崎県日向灘震源とするM7.1、最大震度6弱を観測する強い地震がありました。お城の敷地内を歩いていたため揺れには気づきませんでしたが、松江市でも震度2の揺れを観測したそうです。

まだ外は明るいですが、松江でどうしても立ち寄りたいお店があったので早めの夕食。松江城のすぐ近くにあるレストラン「西洋軒」さんです。

こちらでは松江名物のB級グルメカツライス」(サラダ付/950円)をいただくことができます。薄い衣をまとったチキンカツをご飯の上にのせ、たっぷりとデミグラスソースをかけた一皿で、シンプルな組み合わせですが全てが絶妙にマッチしています。

カツライスは松江市内の複数の飲食店でいただくことができますが、やはり老舗のこちらのお店であれば間違いありません。他のメニューも目移りしそうなほど美味しそうなものばかりでしたので、また機会があれば訪れたいと思います。

お腹も満たされたところで、やはり「松江しんじ湖温泉」に来たのなら温泉へ入浴したいところ。

市街地の中に温泉宿もたくさんありますが、そんな中でリーズナブルに温泉を楽しめる銭湯「ちどり湯」さんへ向かいました。

入浴料は400円で、タオル・石鹸類等は一切ついていないため注意が必要です。浴室内は広々としており、気軽にひとっ風呂浴びた後は休憩スペースで「木次パスチャライズ牛乳」をいただきます。

のんびりしつつ、ちどり湯を後にして宿まで歩きます。宿はJR松江駅方面ですが、路線バスがそれほど充実していないのに加えて宍道湖に沈む夕陽を見たかったこともあり、歩いていくことにしました。

そんなわけで、「松江アーバンホテル2号館」にチェックイン。カプセルタイプの宿で、ゆっくり休みたいと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。